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世界の映画から

 あの日の声を探して             

 

 いつも観ているのはアメリカ映画。たまにフランス産とか韓国産が混じりますけれど、数では圧倒的。「ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜」まで取り揃えているかの国の作品群は、観客を飽きさせない、離さない。昨今は“洋画離れしている”と嘆く声も聞こえますし、数字にもそれが出ている(レンタル屋業界紙を覗くと確かに)。でもTVニュースでは掘り下げられないところまで描けるのも映画の特権で(「遺体 明日への十日間」)、知ろうとする人には良い材料。「明日の空の向こうに」を見るとポーランドのことが少し分かった気になって、派生していろいろ漁ると(「ククーシュカ」)、北欧のことについて知った風な口が利けるようになります。これはオマケですけれど、うかうかとTV宣伝に煽られて、自分を見失わないための備えとしても有効。

 

 まとめてみようと思いついたのは、デンマーク映画「シージャック」に驚かされたからで、次いで「ザ・ウォーター・ウォー」「ブランデッド」と続いて「カリーナの林檎 〜チェルノブイリの森〜」に至る。映画を産業化しているのは合衆国だけでなく、韓国が凄くて止まるところを知らない。これに反発しているから主流の日本映画が好調なんじゃない?と勝手に思っている。ただ中身で対抗可能なのは非主流の方。お気に入り監督の是枝裕和荻上直子、園子温の「恋の罪」とか堤幸彦の「MY HOUSE」など日本の現在をキチンと描いたもの。で、これらは日本アニメーションみたいにパッケージ商品としてなかなか成立しにくい。日本映画とは外国人から見たら、“世界の映画の一つ”として認識されるのかもしれない。だって今関あきよしの「カリーナの林檎 〜チェルノブイリの森〜」は日本映画だけど、洋画の棚に並んでいたりするしね。
(6/24/2013)

 

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  シージャック

 

 TVのニュースで“海賊が貨物船を襲い”と報じられても、全くイメージの沸かない私にとっては、貴重な映像資料にもなるデンマーク恐るべしの1本。映画は緊張する2つの場面で展開して、一方は海賊に乗り込まれた貨物船で、もう一方は本社内部。奥さんと子供が待ちわびているコックはもちろん、乗り込んできた海賊を成敗なんてできない。本社にも人質交渉のプロがやって来るけれど、現場に乗り込んでいって悪党をやっつけたりしない。生々しく映画が進行する中で、海賊の出身がソマリアらしいことや、英語を話せる通訳まで連れている用意周到さとかを伺い知ることができる。さらに日本企業がこの会社の取引先で、津波被害が語られる。2011年以後にTVニュースにならないからといって、海賊がいなくなったわけではない。交渉の専門家であるアメリカ人は、直接海賊と話す役もプロに任せろとアドバイスするが、社長は自身で難役に挑む。誇張がされないだけに、どちらの場面もストレスフルですけれど、この題材には適した描き方。恐らく実態はこれに近いだろうし、世界を知る手掛かりそのもの。
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  ザ・ウォーター・ウォー

 

 「ライク・サムワン・イン・ラブ」(DVD)の予告で、「シージャック」は凄そうだと思い、そういや“ニュースがダメなら映画だよな”を思い出し、何気なく棚を見ていたら目に飛び込んできた。邦題もさることながら、原題は“EVEN THE RAIN(雨でさえ)”。ボリビアの水資源をグローバル企業が食い物にした事実は、ドキュメンタリーでも007でも描かれたプレゼント・イシュー。主演はガエル・ガルシア・ベルナルで、「アモーレス・ペロス」の少年もいつの間にか大人になって、映画監督になっている。もっとも本作の監督こそワシにとってはビックリで、「エル・スール」の成長した方のエストレリャを演じたイシアル・ボリャン。この人の戦略は21世紀的で、直接ボリビアで起こった騒動を描かない。撮影でやってきたスペイン人が遭遇するという形式を用いることで、多層構造を持ち込むことに成功している。

 

 コロンブスが新大陸を発見したのは大勢が知っているけれど、彼がスペイン人で到着した後何していたのかはあまり知られていない。で、TVの偉人伝ではカットされるコロンブスの偉業と、現代の映画事情がリンクする。貧しい国だけにエキストラを募集すれば、人が集まりすぎて収拾がつかない。プロデューサーの仕事は経費を浮かせることだから、安価な労働力の宝庫でしめしめ。でも主演は本気モードの人だけに、汚い部分も勉強済みで次から次へと過去のスペインが顕になってくる。コロンブス役の人だけじゃなく、宣教師役の人も軽いノリで演じているんだけど、セリフには感情がこもって「真実には敵が多い、嘘には味方が多い」は核心を突いた名台詞です。

 

 最初は知名度高いガエル・ガルシア・ベルナルだし、理想を追求する監督が善人になるかと思いきや、そうはいかないのがミソ。金のことしか頭にない人が“転じて命懸けの善行を成す”部分はぜひご覧になってご確認を(「ソハの地下水道」しかり「シンドラーのリスト」しかり)。ただボリビアの現象のみを描いても、それは人事として片付ける習性を人類は持っている。“秒進分歩”の上書き情報を、無意識に歓迎しているのが我々だ。コロンブスが“新大陸発見”した後は侵略して征服したわけだし、騙したことも描きつつ現代も交差させる。パッケージも邦題も仕方ないけどね、でもホントに見ておいて損なしです。
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  カリーナの林檎~チェルノブイリの森~

 

 是枝裕和「誰も知らない」は観賞後に鉛を呑んだ気分にさせてくれましたけれど、これは事態の凄さを思い知らされる映画。過激な描写はほとんどなくて、アレさえなければ、冒頭はぼんやり眺めていて楽しいファンタジー。「ククーシュカ」みたいにベラルーシは美しい自然の風景が残る土地だし、実は“人々をこき使っているIT機器”がない方が幸せかもねと思えてくる(「明日の空の向こうに」)。でも事情を知らずに本作を見る人はいないので、いつその時が来るのかと構えて見ている。パッケージに記されている「決して泣かないでください。泣いても何の解決にもなりませんから。」は劇中口にされるセリフでもあって、カリーナのおばあちゃんは女医さんからそう告げられる。アレさえなければ「友だちのうちはどこ?」と変わらない子供を描いた秀作になるのに・・・。

 

 放射能を描こうにも、透明で無臭、人間の五感では感知できない(「100,000年後の安全」)。では浴びるとどうなるかを「チェルノブイリ・ハート」が映し出しますが、直視できない実態。強く訴えても、人間の心理は“悪い誰かを探し出して押し付ける”方に傾斜する。撮った人たちは命懸けながら、感じて欲しいというメッセージに止めているのではと勝手に解釈。作品ホームページではさらに真実に近づけますからね。たいして電気使わない人たちが放射能にさらされて・・・。たまたま見つけといてなんですけれど、私めにとっては“人を踏み台にした偽りの日常を生きてきたのだ”を思い出させてくれました。
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