ジャーナリスト映画
やはり見ておいて損はしない
新聞(家では朝日新聞を定期購読)の紙面上で、宣伝と報道の違いはもはや明確ではない(「ムーンライト」の時に痛感)。TVはもちろん常時CMを流している。果たしてあの映像の中に、自分に関係するものは幾つあるのか?と疑問を抱くことなく、視聴し続けている人は多いと思う。見なくなって久しいけれど、未だTV局が潰れたとは聞かないから、多数派の支持があるのだ。
面倒くさいから、“報道は死んだ、あんなモノ相手にするのはアホだけだ”とそっぽ向いて日々を生きるのは、いいトシしてみっともない。ま、常に考えているわけではありませんが、「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」などナチに関する映画、「スノーデン 日本への警告」、「すべての政府はうそをつく」と連続すると素材は揃う。信頼できるニュースがないんだから、これらを用いて足場を組み立てる。
どーせダメさ、ではなく素朴な疑問の具として、距離を置いて昨今報道されてる事とリンクさせる。本音を言えば、今の日本のニュースは“金もなく、年取ってる”だけなんだけど、その末期的症状を隠蔽するため、バラまかれている情報はいちいち癇に障る。ま、そのありさまを非難するため、観賞したドキュメンタリー、読んだ本を使っても意味がない。
「スノーデン 日本への警告」で、政府のアナウンスをただ流しているのは速記者の仕事で、ジャーナリストのソレではないとあった。「すべての政府はうそをつく」で見え透いた嘘をつくのは政府で、そのミエミエの嘘を調査報道は見抜いて、人々に知らせてくれる。また一般紙がダメかどうかは意見が分かれるでしょう、「スポットライト 世紀のスクープ」には裏を取って、事実に基づくため奮闘する記者たちが描かれている。
紛争地域の取材は命がけと「おやすみなさいを言いたくて」は描き、「アメリカン・レポーター」が参考になるのは、もはやアフガニスタンの事とて世間様は忘れちゃってる。ではスノーデン氏の暴露は2013年で、もう手遅れ・・・と思うのは早計で、“間に合った”と捉えることにしている。権力者のやり過ぎを知る機会を得たわけだし、薄々感じていたことの動かぬ証拠なんだから。
全く関係ないですけれど、時代の変化は急速です。昨今痛感しましたが、タブレットと思って買ったのはノートPCにもなるけど、ROMドライブがなくて、SDカードを記憶メディアとして使っている。3年前だったら\100,000くらいする代物が\20,000。メモを書いていると瞬く間にGoogleドライブに保存されていて、もはやそこに驚きなんてない。
いつの間にか「この世界の片隅に」も配信で観賞可能、パッケージリリースの告知は未だだ。“いずれ配信が主流になる”ことは20年前から知っておりましたが(このサイトを始める動機)、変化はそれだけではない。でも時間が掛かるからといって、調査報道は無視できない。朗報はWIREDの記事“ウィキペディア創設者が立ち上げる「フェイクニュース打倒プロジェクト」の根拠”で、フェイクニュースすらよく分からないですから、助かりそう。
(5/12/2017)
ニュースを見ていなかった
熊本の地震があるまで、ニュースを見ていなかったことに愕然とする。しかし慌ててTVを点けても、やはりがっかりしてしまう。既に稼働してしまっている原子力発電所に関してほとんど言及がない。映し出される映像は痛々しい被害の状況や、避難所の人々。どーしても、もし自分が逆の立場だったら?と考えてしまうので、見るに耐えず目を背けてしまう。
よってTwitterで拾うんだけど、“報道ヘリの騒音で、町内放送が聞こえない”というのは深刻だと思う。マスコミ被害はもっと酷いものもあって、そこでふと気がつく。TVをただ見ていても、なーんにも現地の人の役に立たないどころか、はた迷惑。それでも見続けている人々は“他人の不幸を消費している”。これが恐らくTV視聴の本質で、だから新しい情報摂取のツールである、インターネットに対応できる人たちはシフトしたのだ。
さらに双方向という特質は東日本大震災より格段に進化している。進化の加速は場合によって、多くを置き去りにしてしまい“使い物にならなくなる”危険性を孕んでいるけど、“他人の不幸を消費している”TV視聴者よりよほどマシだ。「スポットライト 世紀のスクープ」の背景には9.11があって、人々は“神父による性的虐待”というニュースに当時は震撼しなかったかもしれない。
しかし何年か経って、整理した形で人々に提示できる。映画の持つ力がここに発揮されて、“伝え、残す”機能は、映像を媒介にしているといってもTV番組とは違う。その瞬間に慌てて乗っかってしまうのが最も危険なのだろう、と最近は思うようになった。だから今は、募金するしかない私めは、それが有効に使われることを祈るのみ。次から次へと繰り出される情報の洪水に身を任せたら、肝心なことが見えなくなってしまう。
進行中の熊本の地震と東日本大震災の復興、未解決の原子力発電所事故処理、現政権が進めている安全保障政策、これ以上は私めのキャパシティを超える。TVは単純に“他人の不幸を消費している”だけ、だってさ深刻な顔をして迷惑なレポートをしているTV局の人は、ホテルに帰ってシャワーを浴びて、クルーと「お疲れさん」と言ってお休みになるんでしょ。お仕事なんだから当然で、悪いことじゃない。ただしその種の人々が送ってくる素材で、今を判断する気にはなれない。
(4/19/2016)
マスコミを個々人が注視、監視する時代
日本人のジャーナリストがテロリスト:イスラム国によって殺害された。助かって欲しいから、その種の報道には全て目を背けた。なぜか?連中の思惑通りになるからだ。もし誘拐されたのが、権力の側にいる誰かだったら?人によってはバラエティ番組を見る感覚で楽しんだに違いない。ここがテロリストの狡猾さで、9.11も我々の隣人を狙ったものだった。
「キャプテン・フィリップス」でもソマリアの海賊は、自国に物資を運んで来るタンカーを襲っている。現地のことを伝えるジャーナリストを殺害するとは狂気の沙汰だけど、連中にとっては計算通りなのだ。マスコミを通じて見ている人々を焚きつけられれば、その目的は達成される。大衆を扇動して、権力者を追い詰め、取り返しのつかない事態(=空爆とか)が起きれば、世界はより殺伐とした泥沼に足を取られていく。
「マイティハート/愛と絆」が2007年で、もう忘却の洪水の中で人々は生きている。「マスコミが報道しないから悪いんだ」などと、のどかなことは言ってられない。現在我が国ではマスコミが権力の管理下に置かれているので、煽られている人々に警戒しなくてはならない。個々人で対処しなくてはならない時に、映画はやはり役に立つ。たとえ時差があっても、“嘘くさい煽り文句”にやすやすと乗せられずに済む。
「フィフス・エステート/世界から狙われた男」にも出てくるけど、現在を知るにはwiredというサイトが適しています。既に進行している現在は確認できる。しかしそれらはあくまで素材で、けっきょく地に足のついた感覚を失わないためには、外に出るしかないんだよね。いろんな劇場で映画を観ていると、副次的に街の様子を感じられる。“衰えつつある”自分の身の回りが身に染みる。
(3/10/2015)
贅肉が落ちて、いよいよ本物のジャーナリストに注目が集まるのか?
「ボーダータウン/報道されない殺人者」では「報道はとっくに買われてて、人々が求めるのは娯楽だ」というセリフに肯き、「ダークウォーター 奪われた水の真実」で「世間は真実など求めない、ウケるのはゴシップだ、報道は娯楽に堕した」という部分に深く納得するので、TV宣伝(ニュース、ドラマ)から目を背けている昨今。確かに秒進分歩の21世紀だから、どんどん置いていかれているよなオレ、という焦燥感はある。よってたまに新聞の見出しを読んだり、ニュースを眺めたりするけれど、扇動の色合いが濃くて、宣伝ばかりが目に付き、健康食品のCMばかりだからかえって身体が悪くなりそう。ま、映画のセリフに便乗して、その手の消費行動をサボっているわけだ。マスコミだって仕方ない、だってスポンサーのために大声あげているんだから。
TVに背を向けて生きられるか?というと全然問題ない21世紀。だってインターネットがあるんだし。でも膨大な量の情報を濾過するには、自分の中にフィルターを持たなくちゃ無理。よって貧困大国アメリカを読んだり、21世紀のEVcafeなどを読んでお勉強。もちろん漫画は読まないけれど、「ヨルムンガンド」は大変役立った。でもジャーナリストの保有している情報は、“本当は並じゃないよな”ということも薄々感づいている。「ランナウェイ/逃亡者」でシャイア・ラブーフが演じたベンのような記者の記事なら信じられる。つまり信用のおけるジャーナリストが重要になってくるので、その辺も内田樹氏のブログ、憂国呆談などでお勉強とTVはどーしても避けちゃうね。
(10/10/2013)
テレビ、新聞滅亡の危機にある昨今ですが、出来事がなくなるわけはないし、ニュースは発生する。しかし新聞は日を追う毎に薄くなっていくし、TVのニュースはとてもじゃないけれど・・・。情報を得るのが高くつくのは仕方ないとしても、自らお勉強しないと、膨大な量に見える中から身近なものをピック・アップするのは結構しんどい。 で、映画に登場するジャーナリストたちを描いた作品を観ると、事象から時間は経ちますけれど、重要な出来事に触れることが出来る。これは副次的効用ですけれど、宣伝スレスレのニュースよりは役に立つ。
今回集めたのは命がけのジャーナリストを描いたものが多いですけれど(「キリング・フィールド」 、「サルバドール」)、それだけでなく彼らが遭遇した紛争なども同時に見ることができるものが多いです。加えてマスコミ全般を描いたもの。新聞社のてんやわんやを描いた 「ザ・ペーパー」は楽しいんだけど、「誰も守ってくれない」、「クィーン」はまさに被害そのものを描いています。番外として物語の1パートを担うかたちでジャーナリストが登場する作品も載せました。ま、数は少ないですけれど。アメコミ・ヒーローの2人(クラーク・ケントとピーター・パーカー )も新聞社勤務なんですよね。
(2/3/2011)
ジャーナリストを描いている作品(50音順)
i-新聞記者ドキュメント- アイ・ラブ・トラブル いのちの子ども
ウェルカム・トゥ・サラエボ ヴェロニカ・ゲリン
おやすみなさいを言いたくて
カプリコン・1 キリング・フィールド グッドナイト&グッドラック
記者たち/衝撃と畏怖の真実 消されたヘッドライン コレクティブ/国家の嘘
GONZO ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて
サラの鍵 サルバドール SHE
SAID シー・セッド その名を暴け
シチズンフォー スノーデンの暴露 シティ・オブ・ゴッド
新聞記者 スノーデン r^すべての政府は嘘をつく@wk
スポットライト 世紀のスクープ
戦場カメラマン 真実の証明
ゾディアック
大統領の陰謀 タクシー運転手/約束は海を越えて TSUNAMI 津波
トゥルー・クライム 遠い夜明け
ニュースの天才
パンケーキを毒見する ハンティング・パーティー
バンバン・クラブー真実の戦場− 5デイズ
フォース・エンジェル プライベート・ウォー
フラッグ・デイ/父を想う日 ブローン・アパート
フロスト×ニクソン ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜
ボーダータウン 報道されない殺人者
メイド・イン・フランス -パリ爆破テロ計画-
MINAMATA―ミナマタ― ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
闇の子供たち 妖怪の孫
ラム・ダイアリー ランナウェイ/逃亡者 レッズ/REDS
路上のソリスト ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋
マスコミが描かれている作品(50音順)
ウィキリークスの秘密 ジュリアン・アサンジ完全密着
エドtv
クィーン グリーン・ホーネット ゴーストライター
ゴーン・ガール
ザ・ペーパー ザ・ホークス/ハワード・ヒューズを売った男
ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命 スキャンダル
タイアナ 誰も守ってくれない
天使が消えた街 チョムスキーとメディア
ニュースの真相 ノー・マンズ・ランド
フィフス・エステート/世界から狙われた男
フェア・ゲーム ブレイキング・ニュース
ブロードキャスト・ニュース フロントランナー
マイティ・ハート愛と絆 モハメド・アリ かけがえのない日々
LIFE! リチャード・ジュエル レッド・ライト
番外
アイヒマン・ショー
歴史を映した男たち
あの頃ペニー・レインと アニー・リーボヴィッツ・レンズの向こうの人生
インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア 大いなる陰謀
カセットテープ・ダイアリーズ カポーティ クレイジー・ハート
セント・アンナの奇跡 潜水服は蝶の夢を見る
ブラッド・ダイヤモンド
フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
ブルーノ
ボラット栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間
ヤギと男と男と壁と Uボート
ジャーナリスト映画
データ的に無視できないどころか、レンタル屋ストレートなのが信じられない。と以前だったら憤慨しておりましたが、村上龍氏のエッセイ「星に願いを、いつでも夢を」を最近読んでいるので、この種の現象を落ち着いて眺める余裕が出来た。人々が好む大手既成メディアが“皆さまのNHK”という姿勢である以上、急激な変化を人々が知ることはないし、実は知らんぷりしている側面もあるというわけ。
それと加速する映画製作の環境もあると思う。とにかくね、次から次へと新作は公開されていて、観に行こうと思っていると、レンタル屋に並んでいる。本作の監督は昨年公開された「フォーカス」の2人グレン・フィカーラ、ジョン・レクアで、マーゴット・ロビーも出演している。自分のページを確認すると、前作には“ ウィル・スミスが主演なので、なんとか公開された”と書いている。
「スーサイド・スクワッド」は観られたが、ウィルの「コンカッション」は残念ながら見逃した。allcinamaで確認すると、現時点(11/27/2016)でDVDのリリースは1月になっている。“ついて行かなきゃ”という焦燥感は、宣伝に“そそのかされやすい”体質を作ってしまい、世の中悪くなる一方。アフガニスタンに米軍が侵攻した大義は一体なんなのか?も今となっては誰も気にしない、イラクと区別がつかない。
ドキュメンタリーでジュリアン・アサンジはアフガニスタンの戦争を「彼らの戦争」と位置づけていて、劇映画になったのは「ローン・サバイバー」(2014)。「大いなる陰謀」にも犠牲になる兵士が描かれていたけど、次から次へと戦線を拡大する合衆国が疲弊するのも無理はない。くたびれ果ててフィデル・カストロ氏を批判するような男を大統領にしちゃうんだから。
年末の帝国に反旗を翻す「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」はヒットするだろうし、「スノーデン」が公開されるオリヴァー・ストーンも俄然やる気満々なのでは?といった昨今に、村上龍氏のエッセイと並んで、ジャーナルとしても機能する本作は素晴らしいです。主演のティナ・フェイは「デート&ナイト」が大好きでしたが、コメディに見えてキチンとしたジャーナリスト映画だと思う。
共演者が旬の人々で、前記したマーゴット・ロビーだけでなく、マーティン・フリーマンとビリー・ボブ・ソーントンとは豪華です。マーティンは相棒の“頭のいい役を世界が求める”ベネディクト・カンバーバッチとは別次元にいるよう。「アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」を繰り返し見ているせいか。それとビリーは「選挙の勝ち方教えます」と合わせてオススメ。
「シークレット・アイズ」に続いて出番はちょっとのアルフレッド・モリナも、「人生は小説より奇なり」を時間に余裕があるときに見たい。映画好きには申し分ない布陣だし、「エクス・マキナ」が入るシネマカリテだったら、上映しても集客が見込めるかもしれない。ぜーんぜん作品に触れず長々となりましたが、劇場未公開作品がダメじゃありません、と言っときたかったもので。
で、本作に関連づけられるのは先に挙げた「ローン・サバイバー」、ジャーナリスト映画と「それぞれの空に」などでしょうか。TVの裏側も垣間見せるし、民族の違いも描かれる。井戸に関してのモロモロ、字幕にはなっていないけどIED(「ヨルムンガンド/PERFECT ORDER」、「ハートロッカー」が参考になります)の恐ろしさとか、込められた情報量は半端じゃない。
「おやすみなさいを言いたくて」、「ドローン・オブ・ウォー」など並行して観賞できる作品は多々ありますが、負傷した兵士と主人公が対面するシーンには、本作が込めた強いメッセージがある。ぜひご覧になってご確認を、両足を失って“前に進むしかない”とレポーターを元気づけられる人こそ勇者。お時間ありましたらメイキングもオススメです。現地に行くことなく描けるんです、そこが映画の凄さ。
オススメ★★★★★
フードムービーとインターネットの合体技が「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」だとすると、コチラはインターネットとジャーナリスト映画のソレになる。「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2」のではなく、「愛についてのキンゼイ・レポート」の監督ビル・コンドンによる21世紀のニュース・レポート。もちろん時代はとっくに進んでいて、本作で描かれている現時点は2010年(書いている今は2015年)。
ウィキリークスが世間一般に知られる事件“イラク戦争の民間人殺傷動画公開”が、冒頭でありラスト。主要人物のジュリアン・アサンジに関しては彼のドキュメンタリーがあるので、並行観賞して掘り下げることもできます。あくまで本作で描かれているジュリアンは、大雑把ですけれどスティーブ・ジョブズに近い印象がある。ベネティクト・カンバーバッチも見事に化けた(「イミテーションゲーム」が楽しみ)。
ジュリアンの人物像、ウィキリークス成立に至る経緯を知ることができる本作の、もう一方の主人公がダニエル・ブリュール扮するダニエル・バーグ。コッホ先生も演じますが、「誰よりも狙われた男」ではチラリ出演、ニキ・ラウダになったり世界を飛び回って変身しているみたい。ウィキリークスの代名詞であるジュリアンの名前は、世界に知れ渡りましたけど、天才ハッカーといえど一人で事は成せない。
また脇でモーリッツ・ブライブトロイも出てきますが、「ソウルキッチン」が楽しいこの人も「ミュンヘン」、「360」、「ワールド・ウォー Z」など国をまたいで描かれる作品で見かける。「プリデスティネーション」のノア・テイラーに近いな。さらに私めの観賞の決め手はローラ・リニー、スタンリートゥッチ、アンソニー・マッキー(「ランナーランナー」)で、“世間が注目しない部分”になくてはならない布陣。
マスコミの現在が浮き彫りになる部分で、ガーディアン紙の記者に扮したのがデヴィッド・シューリス(「The Lady アウンサンスーチー
ひき裂かれた愛」)。時代を嗅ぎ分ける直感は、ジャーナリストに不可欠だというキャラクターに説得力がある。ウィキリークスと大手新聞社が接近していく過程で語られるのがタイトルの“第五の権力”。既に進行していた流れを、5年後に知るわけですけれど“言い争ってる間”にとっくに世界は動いていた。
オススメ★★★★☆
70年代のカンボジアを知る手掛かりになる重要な1本。現在のTV・ニュースで“クメール・ルージュ”を取り上げることがある場合、予備知識として「プラトーン」ともどもご覧になることもオススメできます。あの地域であの当時、何があったのか。冒頭“記者魂”に貫かれた主人公シドニー・シャンバーグは通訳のブランに対して傲慢で、現場に頭から突っ込んでいく。その後のジャーナリスト映画で何度となく繰り返される描写、街で突然爆発、大使館に逃げ込む人々、政情が不安定になると逃げ出す要人、統制の取れない軍隊による無差別殺人。アフリカ(「ホテル・ルワンダ」)でも中米(「サルバドール 」)でもヨーロッパ(「ウェルカム・トゥ・サラエボ」) でも人類が学習しないことを証明するかのよう。しかし後の作品に比べると、根性の入りまくった描写に見えるのは気のせいでしょうか。撮影がクリス・メンゲスで、後に「ワールド・アパート」を監督する人なので、クレジットを見てなるほどと感心。
ただこの作品が優れているのは、ジャーナリスト映画だけで成立していないところ。アカデミー賞もうなずける濃い内容に仕上がっているのは、通訳ブランと主人公シドニーとの友情があるから。ガキの頃見てカンボジアが怖くなったけれど、大人になって観てみたら案の定、ジョン・レノンの“イマジン”が流れるラストでジンワリきてしまった。後の変態悪役が信じられないくらい、ジョン・マルコヴィッチが活発で正義感にあふれている演技は必見。この作品の印象が強かったので、彼が悪役やるたびにちょっと違うと思っていたのです。ジュリアン・サンズもその場違いなほどの美貌は印象的。けっこう年いったお客さんに聞かれることがあるこの作品、レンタルを見つけるのが難しいんですよねぇ、置いてある店少ないから。
オススメ★★★★☆