史劇的コスプレ
ファンタジーでは女性大活躍、男性は過酷な自然に放り込まれ尻を叩かれてる?
TOHOシネマズの宣伝で「ベン・ハー」が待機中であることを、しつこくお知らせされている昨今。この2年で観てきたコスプレは大ざっぱにファンタジーとサバイバルに別れる。そんな中で「マクベス」は異色に映るから目立つ。で、ファンタジーは「美女と野獣」や「スノーホワイト/氷の王国」など女性が大活躍、“おしとやかで守ってもらう”などという風習は前世紀の彼方。
その傾向はファンタジーだけでなく、軍隊モノ(「レディ・ソルジャー」、「アイアン・ソルジャー」)でも刑事モノ(「ボーダーライン」)でも当たり前になってきた。翻って男の方は生き残るために、必死の状況下に置かれる。「白鯨との闘い」、「レヴェナント:蘇えりし者」なんてまさにそうだし、それはSF映画の「オデッセイ」や戦争映画の「不屈の男/アンブロークン」まで。
「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」で結論づけられていますが、なあなあになる男中心のデタラメさから脱しないと、末期症状。風格のある顔をした役者がいないから、この手の作品がイマイチになっているのかもしれない。「ヘイル、シーザー!」のジョージ・クルーニーがワザと見せてるけど、あのダンディ男でさえ・・・。だからRPG原作の「ウォークラフト」という選択になるのか?
(7/5/2016)
現代人にストレートに訴えられる手法かも?
昨年はファンタジー仕立ての忠臣蔵「47RONIN」がありましたが、今年はダーレン・アロノフスキーが聖書に挑戦した「ノア/約束の舟」が登場。ケヴィン・マクドナルドの「第九軍団のワシ」みたいなテイストになるのか?超大作風にチャレンジか?興味津々。ローランド・エメリッヒがシェイクスピアに挑んだのは、インパクトありましたけれど、人々に警鐘を鳴らすにはエピック(歴史劇の正確な呼び名)が効果的。
悪くないんだけど、昨今のアメコミ映画は上映時間が長く感じます。それはSF超大作もしかりで、大人がどっしり腰を落ち着けて、長々と観賞するにはエピックが向いている。「リンカーン」がまさにさうで、歴史を振り返り、今を見つめるのに向いている。「エリジウム」はその真逆です、時制が未来なだけで、汚れた今の世界が浮き彫りになっている。ま、そうでもしなくちゃ撮らせてもらえないのが現実。
(6/13/2014)
女性が活躍する時代劇が華ざかり?
2012年もコンスタントに作品が排出されている好物カテゴリー。「第九軍団のワシ」などのチャンバラもあれば、「ジェーン・エア」のような文学作品もありバラエティに富んでいる。量が過剰になると仕掛けが重なり、過情報な作品になりやすいスパイ映画とは違って材料は嫌というほどある。グリム童話も2本出来たし(「スノーホワイト」 「白雪姫と鏡の女王」)、シェイクスピアも健在。また勝手にいじっても良いし(「推理作家ポー 最期の5日間」)、忠実に描けば(「声をかくす人」)、21世紀の人々に歴史の判断材料を提供することもできる。残すはヴィクトル・ユゴー不朽の名作と大胆な改変モノ。
(12/24/2012)
童話とチャンバラを合体させたものが出たかと思うと(「スノーホワイト」)、古典的名作を忠実に描くものもある(「ジェーン・エア」)。ただし、いずれも女の子が活躍して、男が添え物。4月に「ヴァルハラ・ライジング」、「第九軍団のワシ」と続けて男の見せ場があるのはコレだと思った途端に・・・、たちまち女の子に持っていかれちゃった。実話を元にするにしても女の子(「ソウル・サーファー」)で、情けない姿が板につくのが男(「ファミリー・ツリー」)。ぜひ今年中に男の活躍するコスプレを拝みたいものだ。
(6/16/2012)
コスプレも21世紀に適応
2005年の「アレキサンダー」くらいまでは、オーソドックスな手法で描かれていた史劇。ところがアメコミとの合体技「300(スリー・ハンドレッド)」が出現して以降、少しずつ21世紀に適応したやり方のものが出始めた。 「ロビン・フッド」のリドリー・スコットは手法こそオーソドックスだけど、現代の感覚を取り入れている。3Dも方便のひとつで「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」、「インモータルズ−神々の戦い-」などは新しいテクノロジー抜きには成立しない。
もちろんチャンバラだけでなく、「アレクサンドリア」などはドキュメント・タッチを取り入れたことで、古臭いジャンルなのにもかかわらず新鮮に映った。VFXの自由度が増したSFは、小品でも見応えのある「テイク・シェルター」、「アナザー・プラネット」などが出てきたけれど、デンマーク発のインディ系コスプレ「ヴァルハラ・ライジング」は風景を巧く利用していて、監督のニコラス・ウィンディング・レフンが合衆国で1本撮ってしまうのも納得。ドキュメント・タッチを取り入れつつ、中身良し、バランス良しなのがケヴィン・マクドナルドの「第九軍団のワシ」。
(4/18/2012)
偉人伝的側面もあり
日本人が“コスプレ”と聞くと、むむっアレか?となります(でも日本文化の重要な一つだと思う)。実はれっきとした映画の1ジャンルで、連綿と作品が作られてきた。正確にはエピックとかピリオド・ピクチャーというだそうです。ま、内容はNHKの大河ドラマとさほど変わりませんけれど、“おまけ”として歴史のお勉強にもなります。偉人伝と違うのはお勉強が“おまけ”ってところで、見ごたえある合戦シーンとかが本来の売り。
特徴として英雄が主人公ですから、その時々のセクシー・男優さんが主演。「ブレイブハート」(メル・ギブソン)、「グラディエーター」(ラッセル・クロウ)、「アレキサンダー」(コリン・ファレル)、「キングダム・オブ・ヘブン」(オーランド・ブルーム)。最近はそのままやっても受けないから、CGをふんだんに盛り込み、ホラ吹き放題の時代にまでさかのぼって、「タイタンの戦い」、「300(スリー・ハンドレッド)」 などがあります。
宮廷劇ではケイト・ブランシェットがかっこいい「エリザベス・ゴールデン・エイジ」、ジョニー・デップがコレ以下はないってくらいの堕落男を演じた「リバティーン」は見ごたえ十分。番外としてコスプレ時代から物語が始まる「ハイランダー 悪魔の戦士」、「オルランド」 などもいかがでしょう?
(9/27/2010)
英雄もの
エクソダス:神と王 ノア/約束の舟 第九軍団のワシ
ヴァルハラ・ライジング
三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船
三銃士 仮面の男 マイティ・ソー マイティ・ソー/ダークワールド
アレクサンドリア ロビン・フッド(ラッセル・クロウ版)
ロビン・フッド(ケヴィン・コスナー版) タイタンの戦い
300(スリー・ハンドレッド) 300(スリーハンドレッド)
帝国の進撃
アレキサンダー キングダム・オブ・ヘブン グラディエーター
キングアーサー ラストサムライ ブレイブハート
エクスカリバー デュエリスト/決闘者 ジャンヌ・ダルク
プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂 バーフバリ 伝説誕生
宮廷劇
宮廷画家ゴヤは見た エリザベス
エリザベス・ゴールデン・エイジ リバティーン
シェイクスピア方面
マクベス もうひとりのシェイクスピア 英雄の証明
テンペスト 恋に落ちたシェイクスピア
アル・パチーノ リチャードを探して から騒ぎ タイタス
ハムレット ヴェニスの商人 シェイクスピアの庭
ファンタジー方面
グレートウォール 47RONIN ヘンゼル&グレーテル
白雪姫と鏡の女王 スノーホワイト/氷の王国
スノーホワイト(2012) スノーホワイト(1997)
アリス・イン・ワンダーランド ベオウルフ/呪われし勇者
ロード・オブ・クエスト〜ドラゴンとユニコーンの剣〜
インモータルズ−神々の戦い− デビルクエスト
赤ずきん ブラザーズ・グリム ジェヴォーダンの獣
スリーピー・ホロウ エバー・アフター
プリンセス・ブライド・ストーリー フック
300(スリー・ハンドレッド) 300(スリーハンドレッド)
帝国の進撃
美女と野獣(2014) 美女と野獣 ウィロー
魔界探偵ゴーゴリ/暗黒の騎士と生け贄の美女たち アウトランダー
ロード・オブ・ザ・リング ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 ノースマン
導かれし復讐者
その他
沈黙 -サイレンス- リンカーン レ・ミゼラブル(ミュージカル)
ニューワールド シルク ラスト・オブ・モヒカン
ハイランダー 悪魔の戦士 オルランド
幻影師アイゼンハイム フロムヘル レ・ミゼラブル
メル・ブルックス/珍説世界史PART1 プライドと偏見
アメイジング・グレイス ジェーン・エア
ジェイン・エア 推理作家ポー 最期の5日間
声をかくす人 テルマエ・ロマエ ヴィドック
約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語 クリムト
アデルの恋の物語 白鯨 白鯨/MOBY
DICK
それでも夜は明ける パッション 白鯨との闘い
レヴェナント:蘇えりし者 ターザン:REBORN
グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説
マルクス・エンゲルス 未来を花束にして
メアリーの総て ピータールー/マンチェスターの悲劇
燃ゆる女の肖像 マグダラのマリア 博士と狂人 ウィッチ
社会から虐げられた女たち 野生の少年
史劇的コスプレ映画
現在(7/21/2013)「白雪姫と鏡の女王」の貸し出し状況を見ていると、これも劇場公開しても良かったのでは?と思えるグリム童話改編もの。男性にも受けるポイントはあって、ヴァンパイア・ハンターの要素を合体。よって全米ではヒットしているし、冒頭で気がつきますが、3D での上映。ま、吸血鬼狩りはいやというほどあるし、狼ハンターは「赤ずきん」でやっちゃったからのWITCH HUNTER= 魔女狩り。でも昨今のマスメディアに煽られた人々による“誤った吊し上げに良く似た冤罪”をヘンゼルが一蹴しちゃう部分はスッキリする。扇動するのがピーター・ストーメア扮する保安官で、「赤ずきん」のときのゲイリー・オールドマンとそっくり。「ロックアウト」など非公開でもこの人が出ていると当たりだったり(「ジャスト・ア・ヒーロー」とかね)。
“若者向け2本立て”でも触れましたが、若い人が同世代と感じる俳優は映画にとって重要。ジェレミー・レナー、ジェマ・アータートンをもっとアピールしていかないと(誰に訴えてるんだ?)。ジェレミーは以前の売り込み方とは違ったキャリアを築いている。イーサン・ハント・シリーズ最新作で共演のトム・クルーズと比較すると鮮明で、美男ではないし、肉体美を誇示したりもしない。インディ系には入魂で、超大作ではむしろ控えめに見える。ライアン・ゴズリング、トム・ハーディなど、前世紀のタイプではない。弱点がお菓子を食べたグレーテルだけに、「モール★コップ」と同じとは笑えます。彼は21世紀の史劇的コスプレだけに、脇に徹している。なんとジェマ・アータートンを引き立てるための役回り(に見えました)。
ジェマは「007/慰めの報酬」が物足りなかった監督が多々いたようで、「タイタンの戦い」、「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」と確実に目立つようになってきた。色白美人ながら、ジェシカ・チャスティン(「ゼロ・ダーク・サーティ」)、ブライス・ダラス・ハワード(「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」)より格段にワシ好みのナイス・バディ(「ヴァン・ヘルシング」の時のケイト・ベッキンセイルみたい)。敵役がなにせファムケ・ヤンセンで、美女は魔女が似合います。「96時間リベンジ」が物足りなかったし、ジーン・グレイなんだから。物語は〜時代、〜国を明確にしないからやりたい放題。連続発射可能のクロスボーで、派手なアクションを展開するヘンゼルが勇ましいのなんの。若い登場人物の中でオッサンが感情移入できるキャラクターが、トロールというのも変ですけれど、なかなかの見せ場があってニヤリとしてしまう。
魔女といってもキキとは違って森に棲みつく妖術使い。魔法のホウキを使って空飛ぶ姿はモロに「ハリー・ポッター」ながら、退治されるシーンには毒があったような。シンデレラも白雪姫も赤ずきんも作者自身も映画になりましたけれど、グリム童話はネタの宝庫。もちろんヒットしたから続編もOKだし、2、3と続きそうだけど、レンタル屋の棚で「ドラキュリア」みたいな運命をたどるのか?どういうわけか「ロード・オブ・クエスト〜ドラゴンとユニコーンの剣〜」もレンタル屋ストレートになっちまって、ウィル・フェレル(「俺たちサボテン・アミーゴ」が見たい)がプロデューサーというのは、合衆国では絶大な知名度獲得ポイントなんだけどなぁ。「ヴァンパイア 最期の聖戦」みたいなテイストを復活させてくれているし、88分という上映時間なれど抜群に面白い。売れっ子の音楽家ハンス・ジマーまで一枚かんでいるのに、もったいない。
オススメ★★★★☆
アル・パチーノ という人は映画俳優より舞台俳優の方が、“本来の顔”であることを理解できるドキュメント・タッチのシェイクスピア劇。出演作品はいっつもデカイ声張り上げるから、なんでかなぁと思っていたけれどコレを観て納得。なるほど演劇青年だったわけですね。街の人にシェイクスピアのことを聞いて回るところもいいんだけれど、とことん追求していましたね。もちろんシェイクスピア全作品映画化の野望を持つケネス・ブラナーも当然のように出てくるんだけど、「恋に落ちたシェイクスピア」と合わせて英文科の学生必見、授業に退屈しなくなります。ミニシアター系の気楽な1本で、主演のアル・パチーノ自身の監督作。
オススメ★★★★☆
公開当時「存在の耐えられない軽さ」で人気の実力派美男の代名詞=ダニエル・デイ・ルイスと美女マデリン・ストー主演だけで目の保養になる史劇的コスプレ。監督がマイケル・マンだけにモヒカン族最後の生き残りの3人は、特殊部隊バリの戦闘テクニックを披露で、実にカッコいい。原作はアメリカ文学の古典で、ネイティヴ・アメリカンを知る教科書。ただそれだけに留まらない大河ドラマ+恋愛劇でスケールがでかく、見応え十分。大自然を残すことはエコロジーの観点から重要だけど、時代劇のロケ地としても貴重なのですね。
オススメ★★★★☆