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午前十時の映画祭

   

失われつつある映画の体験ができる

 

 未だ2本しか観に行ってないけれど、初回の割には平日でも映画ファンが詰めかけているTOHOシネマズの心憎い試み。観たのは「友だちのうちはどこ?」「ディーバ」で、シネコンなんだけどミニシアターで鑑賞している感覚になる。デジタルのはずだけど、“雨が降ってる”画面に目が釘づけになり、一気に作品世界に引き込まれてしまう。3Dも観客を導く“目くらまし”なれど、フィルム上映に見える映画はそこから発生する空気、スクリーンと座席までの間に“何か”が存在しているかのような錯覚には、どうしても抗いがたい魅力があります。技術革新が現在進行中 で、デジタル上映を歓迎しているのに勝手なもので“映画っていいなぁ”などとしみじみしてしまう。でもさ、TV画面に極めてよく似ているピカピカのスクリーンを眺めていると、物足りなくなるのです。

 

 レンタル屋なれど、上映されている作品は見当がつく。不思議なもので動かなかったタイトルが貸し出されたりして。でも一人の映画好きとしては、劇場に行かないのは勿体無いと思う。もはや名画座どころか、作品選択のセンスが良いミニシアターまで存続するのは難しい時代に突入している。映画館に行くという行為が“珍しいこと”になってもらっては困る。どんなに小さい映画館だって、家のテレビよりは確実にデカイし、暗闇は映画に必要不可欠な要素。店の常連さんにしつこく最近何か観ました?と聞くだけでなく、「今やってるから、行った方がいいですよ」などと言ったりするのも自分のため。願望を述べるならこのまま継続してもらって、できれば店にない濃いタイトルを上映してもらいたい。その意味でアッバス・キアロスタミ監督作品「友だちのうちはどこ?」はありがたかった。
(1/6/2013)

 

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午前十時の映画祭で観賞できた逸品

  友だちのうちはどこ?

 

 「ライク・サムワン・イン・ラブ」でイラン映画の巨匠アッバス・キアロスタミを好きになったけど、とにかくDVDレンタルがない。話題になっている時に見ておけば良かったけれど、時すでに遅し。“午前十時の映画祭”のおかげで、拝ませてもらいましたサイコーです。過情報映画に飽きたら間違いなくコチラ。絶賛されるのも実に納得の“余計なものがない”自然に見える1本。仕事で嫌いな作品でも見なければならない関係者なら狂喜するに違いない。だってさ、いつも見ている映画がどれだけ人工的で、“あざとい”かありありと露呈してしまう。是枝裕和荻上直子も好きだけど、この涼しい顔で日常を切り取ってしまう才能はちょっとやそっとでは身につかない。

 

 お話は“友達のノートを間違って持って帰った主人公が、それを返しに行く”だけ。たったこれだけなのに、全然飽きない。学校のシーンから始まるけれど、80年代のイランは我が国の60年代みたい。少年アハマッドの家もポンプの井戸があったりで古臭いんだけど、ごく自然。北野武「アキレスと亀」で“懐かしい時代”を描きますけれど、古臭いだけで心温まるわけじゃない。そしてやはりイラン映画だけに煩わしいシーンが展開。「友達のうちに行きたい」と言ってもお母さんは洗濯で忙しく、赤ん坊をあやせとか聞く耳を持たない。しょうがないから抜け出して、隣の村まで歩いていくことに。ところが訓練された子役ではないから、機転なんかきかないし、あっちウロウロこっちウロウロ。「ちいさな哲学者たち」に出ていた子供と変わらない。

 

 笑いが堪えられなかったのは、アハマッドと大人のシーン。隣町から戻ってきてパン買いに行かなきゃなんないのに、ジイさんにタバコ頼まれたり。ロバに乗ってるオッサンに必死で話すんだけど、全然聞いてもらえなかったり。また大人たちが話している内容がアホな繰り言なんだけど、これこそですよ。通常の映画は“計算され尽くした頭の良い会話でガチガチのセリフ”で出来ていることに気づかされる。ただ本作は初期のものなので、キチンとしています。まさか最新作みたいにさっさと店じまいしないかと心配になりましたが、ホッとします。ぜひご覧になってご確認を、といきたいですけれどレンタルないですからねぇ。

 

 「トスカーナの贋作」の特典映像で観客の質問に答えていた巨匠ですけれど、「本作のこのシーンは何を意図しているんですか?」などと尋ねたら、「意図もクソもあるもんか、見たまんまだよ」と言われてしまいそう。映画は人それぞれ解釈は違って当然だし、ワシの場合はこの人の映画はコメディだと思っている。しかしもちろん人間観察眼はずば抜けていて、子供を描く一点だけを見ても「それでも生きる子供たちへ」さえ及ばないし、動物の描き方も「四つのいのち」の監督ミケランジェロ・フランマルティーノは“ああ、あれで良いんだ”と勇気づけられたかもしれない。
オススメ★★★★★

 

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  ディーバ

 

 この作品のおかげで映画好きになってしまった。初めて観たのは高校生の時で、リバイバイルも行って、“午前十時の映画祭”でも観て、青春が蘇ったから家に帰ってDVDでもう一回・・・。好きなものに理由もクソもないけれど、たぶん音楽映画だったことが大きいかも。物語は2つのテープを巡って展開する。ひとつは主人公ジュールが憧れのディーバ=シンシア・ホーキンスの歌を盗んだオープンリールで、もう一つが犯罪組織の秘密が吹き込まれたカセット。

 

 映像はフィリップ・ルースロの手腕で、魅惑的な雰囲気が醸し出されて脳裏に焼き付く。後に北野武の作品を好むようになったのも、ブルーを基調とした画面が好きだったことによるかも。ジャン=ジャック・ベネックスはリュック・ベッソン、レオス・カラックスと共に注目された監督。現在(2013)も活躍しているのはベッソンだけど、復活を切に望む。そうすれば「ロザリンとライオン」もDVDでリリースされるかもしれない。認知度が高いのは「ベティ・ブルー」なんだけど、どうも女性向けでダメなのだ。

 

 基本的にサスペンスなんだけど、謎の男ゴロディッシュが実にあっさりと解決してしまう。主人公のジュールは憧れの歌姫との恋と、自ら犯した罪=“レコードにしない彼女の声を録音”の板挟みになる。レコードを万引きする少女のアルバも欠かせないキャラクターで、文句ばっかり言ってるパンク風の殺し屋はエッジが効いている。地下鉄を疾走するバイクの場面はCFで流用したものがあった。CDが普及して音楽がより広範囲の人々に届くようになる前の世界には、オーディオ・ファンがすなわち音楽マニア。ジュールの住んでいるロフトが物語る。“憧れの歌声を自分のものにしたい”という純粋だが罪作りな想いから始まる詩的な映画。また見たくなってきちゃった。
オススメ★★★★☆

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