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テーマ映画館と私

     ここにテキスト

 


  長いお別れ
 
まるで、ここ1,2年で経験したことが
映像化されているようだ
「長いお別れ」
老いと向き合うとはこういうこと
本年度No.1最有力。

長いお別れ

関連テーマ  家族の絆  非主流なれどオイシイ邦画  アスミック・エース


 
 日本支配階級の愚かさが、笑えない段階に達していることを先週の「主戦場」では思い知らされた。彼らのご主人様=合衆国とてご同様なのは「バイス」「記者たち/衝撃と畏怖の真実」で見せつけられてうんざり。しかし日常で体験しているのは、自分を含めた家族の老化現象。老いと向き合っていかなければならない現実は、「ジャッジ 裁かれる判事」にも反映されていて、作品に説得力を増す効果がある。もちろん日本映画の「光」にだって、キチンと描き込まれている。

主戦場  バイス 記者たち/衝撃と畏怖の真実 光   

 
 
 本作は監督が「チチを撮りに」「湯を沸かすほどの熱い愛」を作ってきた中野量太なんだから、この後予定している「ゴジラ/キング・オブ・モンスターズ」より、よほど期待が持てる。そして本年度No.1最有力が確定。今年は新趣向で唸った作品「ANON アノン」「THE GUILTY/ギルティ」もあったけど、その年の1本となると去年が「フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法」、一昨年が「はじまりへの旅」といった感じで、ヒューマンドラマに落ち着くことが多い(もちろんトシのせいです)。

         THE GUILTY/ギルティ


 関連作にと山崎努が出ているし、「天国と地獄」を再見しましたけれど、やはりまともな日本映画は凄い。TVドラマとはまるで違うし、映像資料としても有効だった。肝心の本作も常軌を逸したお芝居からはほど遠く、我々の日常を眺めている気にさせてくれる。是枝裕和荻上直子「永い言い訳」の西川美和っぽくないと、お金払って観る気にはなれないですよ。その中心を担っているのが次女芙美役の蒼井優。昨今話題になっているらしいですね。   

 確か「蟲師」で淡幽を演じていて、「ヴァンパイア」も印象に残っている程度ながら、もはや大人の女性。彼女が生きる世界は現実的で、生々しい。料理には自信があって店を出そうとしているけど、男運がなかったり。それにしてもこの人が「叔母さん」と呼ばれていることに、初老男はドッキリしてしまいます。長女真理役の竹内結子に関しては「チーム・バチスタの栄光」「ジェネラル・ルージュの凱旋」くらいなんだけど、いまだに可愛く見えちゃうんだよね。

   


 長女がアメリカ在住も後々効いてくる配置で、ご亭主が研究員だから「トイレット」を思い出した。お母さん役の松原智恵子には恐ろしいほどの出演履歴があるけど、劇場では初のハズだ。家族の女性たちは美人の遺伝子を持っているけど、ごく日常的に抑えている。そして認知症を演じるんだから山崎努は信じられない。「運び屋」クリント・イーストウッド「海辺のリア」の仲代達矢などフリをしているように見えない本物。


   物語は父の認知症が判明してからの7年間を追う形式で進行。途中に2011年の東日本大震災が入ることも重要で、現在の日本人は震災以後を生きている。「生きる街」「カタストロフ・マニア」などに、今とか今後を読み解く方が健全。本作も無関係で済めば幸いながら、誰の身にも近いことが起こる確率は高い未来。私のケースは本サイトで何度か触れてまいりましたが、母のくも膜下出血での入院以来続く介護生活で、現在は施設に預かって貰っている父を見舞いに行くのが日課。


 病院の窓から見える景色とか、“デイサービス”、“ショートステイ”など耳なじみになった用語、施設の様子など劇映画を観賞しているのに、デジャヴのようだ。そう言えば、この監督のアレには私の家が映っていたし、今回は小田急線小田原駅がチラッと出てくる。観賞劇場TOHOシネマズ小田原のご当地ムービーってやつですか。新百合ヶ丘駅の辺りも「マルクス・エンゲルス」を観に行った川崎市アートセンター・アルテリオ映像館で馴染みがあったりして。この監督とは何かご縁があるみたいだ。


  もちろん既視感ばかりで本作が素晴らしいなどとは申しません。今の日本を日常として描き、辛いこともあるけど、投げやりになることなどない。介護関係に関しては、ケアマネージャーさんとのやり取りなどの描写を入れると、より現実的になるけどヘヴィな「万引き家族」に近づいてしまいます。次女が正社員を断るところなどが入っていればよくて、せっかく美人女優を3人も取り揃えているんですから、現在の状況を刻みつつ、美談にせず(だって、泣かなかったもん)、後々忘れられないドラマとして昇華すれば合格。   


 認知症の父からすれば、孫にあたる少年のことも漏らさず描く。子供のころは可愛いくて、2人を繋ぐのが漢字。コアラは知らなかったけど、美人局って今の人は読めるのかな?意味判るのかな?学校の校長先生だったことが、自然に観客に伝わる。IT機器に支配されないで、書かなきゃダメよをサラッと訴えているのかもしれない。ま、孫も成長すれば気難しくなるけど、祖父の形見を後生大事に持っているから、それほど心配することないでしょう。森田芳光だったらギャグがもっと濃くなったけど、この監督は次回作も期待できる。

現在(6/4/2019)公開中
オススメ★★★★★
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天国と地獄
 
                 
   初見はずいぶん前で、その時は刑事がデパートのトラックで乗りつけるシーンに驚いた。なにせTVの刑事ものしか見ていなかったから、逆探知のシーンには熱が入るけど、その外側は無きに等しかったからね。「七人の侍」にしろ、自分が作ったもの以外を無効にしてしまう凝縮が、黒澤明の映画にはある。“後はなにやっても二番煎じ”というわけで、本作の誘拐事件は要素の一つに過ぎない。21世紀も延々と続く会社首脳部の権力闘争、“すぐ壊れた方が売り上げになる”とはIT機器にだって通用する。つまりは会社なる組織体が、永久に脱することができない本性なのかも?と冒頭に唸る。

   横浜の描写は昨今訪れましたから(「RBG 最強の85才」の時)、面影すら残っていないことに驚く。幸いにして麻薬中毒者の巣窟の黄金町は「サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ」からご無沙汰しているジャック&ベティがありますけど、現在あんな暗く恐ろしくはありません。半世紀も経てば様変わりは当然ながら、「秋刀魚の味」にしろ当時の日本が、TV宣伝の輝かしい高度経済成長中だったとはとても思えない。

  誘拐事件に関して、こういう手口が成立していたことを、現在の若い人は理解できないでしょう。テクノロジーの発達が、卑怯な犯行を未然に防いでいることは明白。もちろんアダになっているのは、機械が便利になったことで、人間の方が明らかに劣化しているということ。現代人にあの捜査官のセリフは無理だし、被害者=権藤金吾に寄せる人々の同情の声にも説得力はある。全体を貫いているのは、運転手の子供を助けるために、権力闘争を放棄してしまう主人公の人情。

 もちろん刑事たちとて、犯人を軽い罪じゃあ被害者に申し訳ないとばかりに、わざと泳がす。これって違法行為なんだけど、観客はやって当然と心を動かされる。テンポにしろ客の心をつかむ手法にしろ、「ゴジラ/キング・オブ・モンスターズ」より長い上映時間なのに、まるで退屈せずグイグイと引き込まれる。また、犯人像を移植したのは「機動警察パトレイバー THE MOVIE」の帆場暎一だ。場所は違うけど、水辺から上を見上げて犯行を考えるなんてモロです。

 

  もう1作ビックリしたのが「三度目の殺人」で、本作のラストを流用。あの面会場で対峙するシーンは見事だったけど、原形は既にあったのだ。またちゃんと教誨師って触れられているし、抜かりのないディティールに脱帽。みなとみらいが舞台の「いのちのコール ~ミセス インガを知っていますか~」だってさ、電車の音で相手の居場所を特定するのにもろに使っている。今回は「長いお別れ」に合わせて見ましたけれど、映像資料だけでなく、現代人と自分の生まれる前の人々を眺めるための物差しになった。
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