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テーマ映画館と私

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  ファースト・マン 今後はこれが宇宙飛行士モノのスタンダードになる。
もはやこれがSF 映画ではなく、
偉人伝だと気づくまで時間がかかった。
「ファースト・マン」
抑えた演出、見たことのない角度からの映像、
本筋で人間ドラマとは贅沢。
 

ファースト・マン

関連テーマ  SF映画  家族の絆  アカデミー賞  偉人伝  原作とは?part2

  
 ここ最近、果たして映画は娯楽なのか?と疑問に思うことが多くなった。何気ないありきたりな会話として、「~を観た」と言えば「面白かった?」となる。ところがこれがなかなか難しい。だって、「万引き家族」はどう?と聞かれて面白かったなどとは返せない。苦渋の表情を浮かべ、「監督の是枝裕和は、現実から目を背けている我々に、鋭いメッセージを突きつけている」などと返されて、「じゃあ、行ってみようか」とはならない。先週の「フロントランナー」などもまさにその典型。   万引き家族 フロントランナー
     そりゃあ「マスカレード・ホテル」とか「七つの会議」になるわな。洋画にしたって同じマンでも「アクアマン」に興行成績で軍配が上がるに決まってる。じゃあ、素直にアメコミ映画にすりゃあいいものの、けっきょく戦々恐々ながらコチラに臨むことになる。客席も連休中だというのに物足りない入りだ。確か「ラ・ラ・ランド」も直前にTVで放映されていたんじゃないかな?

 ミュージカルが上手くいったライアン・ゴズリング&デイミアン・チャゼルのコンビ。挑戦するのは畑違いのSF映画です、果たしてどうなったか?なんと文句なしでした、×5が決定。新鮮味を感じられたのが何よりで、今回は月に降り立ったニール・アームストロングを中心に、家族の絆に焦点を絞ったのが功を奏している。宇宙飛行士ものだと、チーム全員を描いたり、難しい科学考証を組み込んだり、派手な特撮を強調したりしてきたけど、それらを逆手に取っている。

               
 たいがいの宇宙飛行士ものならレンタルまたは配信で予習できるし、敢えてそこに突っ込まなかった監督の戦略は正解。冒頭に「ライトスタッフ」のラストに近い、空気のない所まですっ飛んで行く飛行機が出てくる。YouTubeにある“「空」と「宇宙」の境界線”で地上から100km以上が宇宙と知っていたので、切迫感が伝わってくるしビビります。空気のない所では飛行機のテクニックが通用しない。

 続いて進行するのは宇宙空間でドッキングのジェミニ計画。これが見たことがなかったのでなかなか勉強になった。人類は似たようなもので、先に宇宙まで出て行ったソビエトの進行が拍車をかけ、アポロ計画へと突き進む合衆国。「かごの中の瞳」とは見分けがつかないジェイソン・クラーク扮するエド・ホワイトが、どうなるかは「アポロ13」を観ているので悲しくなってしまう。

             かごの中の瞳
 本作は米ソの開発競争やら世の中の移り変わりなどには目もくれず、ひたすらニール・アームストロングの素顔に迫っているから素晴らしい。幼い娘を亡くしたことなどは、TVメディアが軽々に触れて良いことではない。ライアンは無表情に徹して、我々に想像させるから巧い。描かれるニールの家庭だけど、年代的に「ツリー・オブ・ライフ」ブラッド・ピットの出てくるパートに近いかな。

 
 奥さん役のクレア・フォイ、先月の「蜘蛛の巣を払う女」とはまるで違って、アップが多いけど大画面に映える。“夫を支えるしっかりした妻”などというマスメディア的な態度とは程遠い本物っぽさ。で、「帰って来られるか分からないんだから、ちゃんと子供たちに話してよ」とは今の時代ならではの描写でしょう。ライアンの芝居もヒーロー然としたものではないし、もしエマ・ストーンだったらココまで生々しくはならなかった。   蜘蛛の巣を払う女
   昔を描くのに精緻な画像では目が疲れて困るので、夜もキッチリ暗い。大雑把ですけれど「死にゆく者への祈り」「レヴェナント:蘇りし者」の中間って感じですか。ロケット発射のシーンはこの手のものでなくてはならないから、キチンと用意されているけど、ほとんど見たことのない角度からばかりで新鮮。製作のスティーヴン・スピルバーグもアドバイスしたんじゃない?「これはもう見たから、別のヤツ試そうよ」などと言って。
 「セッション」前作も音楽が鳴り響いたのに、今回はじっくり見せるドラマになっていて社会背景、政治宣伝は可能な限り省かれている。既にドキュメンタリーの「ザ・ムーン」があるし、年配の方に当時を確認するのも悪くない。そして、これは半世紀前の出来事だった。つまり、私はSF映画のつもりで観ているのに、偉人伝なんですな。若い人と接していないと気がつかない。    






 “夢を叶える”とはマスメディアによって腐食された表現ですが、抑えきれない好奇心、衝動を具現化する努力を、昨今は簡単に放棄してしまう傾向にある。駆動する欲望が退化したからかもしれないし、満たされた世界で生きていると信じているからかもしれない。可能性があるなら、諦めない。「アストロノーツ・ファーマー/庭から昇ったロケット雲」が、フィクションとしてちゃんと描いてくれてました。

現在(2/10/2019)公開中
オススメ★★★★★
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アストロノーツ・ファーマー/庭から昇ったロケット雲

 いつも覗いているTSUTAYAではなく、ゲオでたまたま見つけた。大量入荷する店だと、さっさと片づけられてしまうけど、商品入れ替えの激しくない店には掘り出し物がある。実録の「ファースト・マン」のようにシリアスではないものの、家族の絆を中心にして、宇宙への執念を感動と共に描いております。ブルース・ウィリスJ・K・シモンズなど脇役も豪華に、あくなき農夫の挑戦は魅せる。

 主演はビリー・ボブ・ソーントンで、奥さん役がヴァージニア・マドセン。ビリーに関しては「選挙の勝ち方教えます」「アメリカン・レポーター」などを見ておりますがアクの強い役が多い。ところが本作では純粋な夢を抱きつつ、骨のある男にしてよき父親。ヴァージニアは「今宵、フィッツジェラルド劇場で」の後でしょ、本作公開が2008年で、旧品漁るクセがなかったら一生お目にかかれなかった。

         
 「サイレント・ランニング」のブルース・ダーンが出ているだけに、「インターステラー」は参考にしたんじゃないか?と思える。なにせアチラには「2010年」のジョン・リスゴーが爺さん役だったし、学校教育に関してのセリフにもチラホラ見受けられるものがある。長男がしっかりしていて、父親が頼りにしているだけに、「はじまりへの旅」がそっくりなんだよね。家長の元で粛々とロケット発射に向けて一致団結が、清々しく映るから自然の中って大切。

 

 田舎町の描き方も「スリービルボード」のように恐ろしいものではなく、ご近所って感じでうるさくない。また移動遊園地の遊具を借りてきたりと日本ではまず考えられない。そして、エラそうな連中があれこれ言おうと、メゲない、諦めないアメリカ人のタフさには感服。公開時のタイトルは“庭から昇ったロケット雲”、“遠い空の向こうに”を意識していたのかな?私は「アストロノーツ・ファーマー」だから食いついたけど。
オススメ★★★★★
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