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    マルクス・エンゲルス

あくまでお勉強では済まされない、無知である自分を再確認
「マルクス・エンゲルス」
諦める、やり過ごすで根本的なことを考えずにいた。

        マルクス・エンゲルス

関連テーマ  偉人伝  史劇的コスプレ

 今のところ内田樹氏のTwitterが私めにとってニュースの代わりになっている。よって本作の情報もソコから得た。とは言ってもインテリではありませんので、カール・マルクスという人が何者かサッパリ。しかし柄谷行人氏の「世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて 」、「政治と思想 1960-2011 」でたびたび目にしてきたし、何やら歴史上の重要人物らしいので、ちょいと覗いてみるか、という程度の動機で観賞。

 
   「残像」以来ですけれど、新百合ケ丘は川崎市アートセンター・アルテリオ映像館まで足を運ぶ。アチラばかりでは、さすがに街の景色に飽きてくるのです。静かな劇場は相変わらずでホッとしますが、客層は中年男性がほとんどで、皆さん難しそうな顔をしていらっしゃる。お話の中身も確かに知らないことばかりで、なんとか手持ちの情報と照合させつつ摂取していかないと、かなり退屈する代物。

 時は1840年代のヨーロッパで、産業革命が起こった後なのだそう。冒頭に“盗みと所有とどう違うのか?”というナレーションがあって、資本主義とやらを昨今は疑っておりますので、しっくりくる。カール・マルクス氏は新聞に書いていて、パクられたってヘコたれない批判精神の塊みたいな男。フリードリヒ・エンゲル氏は紡績工場の跡取りなんだけど、労働者の酒場までわざわざ話を聞きに行って殴られたりする骨のある男。

 互いに影響し合って論文を書くだけでなく、人々の前でちゃんと演説もする。その集会の様は、ただ主張を一方的に伝達している現在とはずいぶん違って、聞いている側も参加している。“19世紀だから出来たんで、今じゃ無理だよ”はやはり誤りで、民衆が参加しない状態はやがて滅びを招くことになる。放っときゃ為政者は搾取し放題で、銀英伝で語られるけど、“民衆が楽をしたがる”と独裁者が誕生する。

 本作の最後に2月革命が起こると出てきて、「レッズ」がピンときた。マルクスにしろエンゲルスにしろヨーロッパのアチコチで活動していたのに、革命が起こるのはロシア。本作は「幻影師アイゼンハイム」っぽいインディ系史劇的コスプレだから、「1911」みたいなスケールにはならなくて、観ている私めは背景を観賞後に補正することになった。無知ゆえですけれど、いろいろ考えさせられる。

                    すべての政府は嘘をつく

 この2人が実践しているのは現在調査報道と称されていることと同じで、「すべての政府は嘘をつく」が参考になった。所有に関して思い当たるのは「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「ペイルライダー」。悪知恵と暴力で天然資源をモノにして、搾った財でやりたい放題。財を使って国を味方につければ、いくらでも押さえつけられるとは「未来を花束にして」でも描かれる。

 また西側諸国の宣伝効果は抜群だったと身に染みて、“共産国は貧乏臭い”とずっと思ってきたのは事実。「グッバイ!レーニン」のすったもんだ、「オーケストラ!」に出てくるフランス共産党は爆笑、といった具合。でもさ、「日本と原発 4年後」で「中世の生活水準に戻るなんて」というムカムカするおばさん出てくるじゃない、貧乏臭さを回避しようとすると、途端につけ込まれちゃうわけ。

 見直されるわけだよね、資本主義とやらは行き詰まっちゃうんだから。貧乏臭いんじゃなくて、ホントの貧困が眼前にあったら、宣伝でごまかせるわけがない。それと、19世紀とは違って“老いている”先進国の現状は、いっそう深刻。反知性主義だっけ?なーんにも考えなくなっちゃうよな。だからこそ「おだやかな革命」が活路ではなかろうか。ニュースより格段に糧になり、観賞後にいろいろ考えさせられたし、再確認もできた。娯楽としてイマイチでも、立ち止まって考える契機をくれる得難い1本。
現在(7/25/2018)公開中ですけれど、7/27までです
オススメ★★★✩☆
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  おだやかな革命





 
 
        

その他の関連作

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関連作

                    未来を花束にして  


ドリーム

 
 現在では当たり前と考えられている権利も、元からあったわけではないことを知る数ある中の1本。1910年代の英国で、婦人参政権を求めて闘った女性たちが描かれている。獲得のためには主張しているだけではダメで、実行が伴わないと社会は変えられない。女性蔑視は21世紀の今でも続いていて、内田樹氏のTwitter経由ですけれど、日本政府を動かしているセンセイたちは、セクシャルハラスメントを理解していない。

 私めも性別は罪人のものだから、偉そうなことは差し引かますが、上野千鶴子の「女遊び」を読んでますからね、漠然と輪郭は掴んでいるし、立場を利用した嫌がらせはなんにせよ我慢できない。だから単純に「リリィ、はちみつ色の秘密」とか「ドリーム」は人種差別だけを描いていない作品だと思う。本作もしかりで、洗濯工場で働く人々の年齢を耳にしただけでゾッとする。

 「マルクス・エンゲルス」でも紡績工場は指をなくしたりする危険な仕事場でしたけれど、言わなきゃそのまんまだし、黙殺されたら実行に移すしかない。早い話がテロ行為に訴えるわけで、「パトリオット・デイ」のような憂さ晴らしとは別。しかし雑なマスメディアが悪と報じて、人々を封じ込めるのは現在でも使われている手口。TVドラマでも繰り返し“耐える人の感動ポルノ”を垂れ流しているのは、洗脳の片棒を担いでいる証拠。      

 もし彼女たちがいなかったら、盲のまんま人類は恥知らずの歴史を生きる羽目になった。感謝なんて必要なくて、この事実を肝に銘じて忘れないこと。ほとんど巻き込まれる形で運動に参加するモード役のキャリー・マリガンは堂々たる主演で、「17歳の肖像」から10年近く経っているのに24歳とはさすがの女優根性。子供と引き裂かれる母親役なのに、幼い顔をしている。
 
                          

 リーダー的な位置にいるイーディス役のヘレナ・ボナム・カーターは、直後に「英国王のスピーチ」を見直したくなるほど執念の塊みたい。大御所的な位置でメリル・ストリープもチラッと出てくるけど、ジャケットの感じは「めぐりあう時間たち」を思い出した。この人の過去作品を振り返っても、消耗品
に過ぎない男どもが女性に対してしてきた罪を振り返ることができます(「ソフィーの選択」「シルクウッド」)。

 登場するほとんどの男性は悪役だから気合が入っている。「007/スペクター」のQとは別人、モードの夫役に扮したベン・ウィショーとて旧態依然とした考えからは脱していない。権力の尖兵たる警部役でブレンダン・グリーソンが出てくるけど、「ヒトラーへの285枚の葉書」と真逆の位置で、似たようなシーンがあった。驚くべきはこの時点で、英国は盗撮も摘発に取り入れていたとはさすが元祖スパイの国。そう言えばベンとブレンダンは「白鯨との闘い」のサシの芝居が良かったな。

      

 体制維持が男のお仕事だと思い込んでいたわけだから仕方ないけど、何年も後でバラされて、悪役にされるとはお気の毒様(「声をかくす人」「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」などなど品数豊富)。時代が明らかに違うと感じたのは、モードが公聴会で話すシーン。話を聞く議員は全員男なんだけど、それが異様に映る。同時にモードが自分に選挙権なんてないと思ってたし、想像もできないと話すけど、当時の人々全員に共有されていた感覚でしょう。リンカーン大統領とて当時は奴隷を解放したらどうなるか判らなかった。

 
 ただし、英国のしたたかに進む姿勢は再確認。植民地支配奴隷売買も先に手を着けておいて、ダメと分かったらさっさと廃止。またその事実をちゃんと映画にして残しておくんだよね。もっともこの件に関してロシア、ドイツの後になっちゃったけど。そうそうそのエンディングで我が国は出てこないのが気がかり。先進国と認められないからか、忘れられちゃったか。まぁセンセイたちがあれじゃあ。
オススメ★★★★☆
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