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    スリー・ビルボード

ストンと落ちないのに重くない、感動のクライム・サスペンス
「スリー・ビルボード」
伝えるべきは伝え、観客を翻弄、スペクタクルまで
豪華なキャストはスターぞろいなのよ。


      スリー・ビルボード


関連テーマ  フォックス・サーチライト  インディペンデント・スピリット賞

 アカデミー賞  シャンテ・シネ

 寒さはまだ続いておりますが、劇場の予告にアカデミー賞が嫌というほど連呼される時期のようです。金もヒマもなく、ウェブサイトですら目が疲れるから敬遠しつつある昨今、日々を四苦八苦しながら生きております。で、もう1本観たいところをグッとこらえて、火曜日のTOHOシネマズ小田原に参上。寒いし人影もまばらだし、日本は人口減に歯止めは効かないのかなぁ、作品はどーも滅入りそうな中身っぽいし・・・。

 監督のマーティン・マクドナーは「ヒットマンズ・レクイエム」「セブン・サイコパス」を見ていて、クライム・サスペンスが得意な人というイメージを持っていた。加えて本作にクレジットされている2名、主演のフランシス・マクドーマンドと音楽担当のカーター・バーウェルは「ブラッドシンプル ザ・スリラー」コーエン兄弟を思い出させる。

  ギフテッド  ところが始まってフォックス・サーチライトのジングルが鳴ったので意外だった。だって、直近で「gifted/ギフテッド」を観ているけど、感動作がお得意の映画会社じゃない、違う路線を狙ったのかな?というのは誤りで、監督が路線をやや修正したのだ。娘をレイプされ殺害された母親が、タイトルの3枚看板を町外れに出したことから始まる物語、日常に隠された闇が浮き彫りになる、とはその通りなんだけど一筋縄じゃなかった。

 べらぼうに単純化すると、主演のフランシス・マクドーマンドを軸に、前半をウディ・ハレルソン、後半をサム・ロックウェルに伴奏させつつ、観客を翻弄しながら進行する。よって宣伝コピーは“予想できない”になったりする。ただし、観客の期待に応えるべく、セリフにしてズケズケ警察の実態とか、合衆国の暴力の実状とか、南部の街の隠された部分とか、教会の批判までいろいろ出てくる。

デトロイト

 フランシス演じるミルドレッドの目的はハッキリしていて、広告で名指しされた警察署長もたじろぐ。TV視聴者といっても良いし、今ではネット上のトロール?無関係なのに自分の不満やら憤りを、赤の他人にぶつけるアホの相手しなくちゃなんないから、公共機関は十全に機能しないのが21世紀。そんな中で仕事していれば膵臓ガンになってしまう。昨年亡くなった従兄弟がまさにそうで、背負わされるとホントにロクなことがない。

  ウディ「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」など悪役づいていたけど、ダメな部下を調整しつつ、職務を遂行しようとする男。彼なくしては成り立たないキャラクターで、サムもまたしかり。どんな職場にもいそうな役立たずのバカで、遺伝的につながっている母親が根性の入った人種差別主義者。わざわざ現合衆国大統領にソックリな人を呼んできて、ベラベラと喋らせるけど辛辣さに笑ってしまう。
 
 猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)
    場内で笑っていたのは私めだけでしたけど、クライム・サスペンスの体裁だがコメディ・タッチで観客を飽きさせない仕掛けを、もっとみなさん楽しんだらいいのに。さてサスペンスだけに、展開は二転三転で、ぜひご覧になってご確認を。悪人と決めつけられた人物がナニだったり、信念を貫いているように見える主人公とて・・・。そして「告発のとき」のようならしさを捨て、それでも重くならずに感動を残すとは離れワザです。

 キャストが私めにとっては信じられないくらいの豪華さで、主要の3人だけでなく、広告屋に扮したのが「アンチヴァイラル」のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、デヴィッド・リンチ風にするため「ピクセル」のピーター・ディンクレイジが出てるでしょ、息子役のルーカス・ヘッジズは「ゼロの未来」が印象に残っているな、ミルドレッドの元亭主役はジョン・ホークスで、「セッションズ」がオススメ。アビー・コーニッシュは前作で監督と仕事をした縁かな?ぜひ「プロヴァンスの贈りもの」を。

 

 イギリス人のマーティン・マクドナーは合衆国に乗り込んで、コーエン兄弟、デヴィッド・リンチのテイストを漂わせつつ、クライム・サスペンスを感動作にしたかったのかもしれない。そして題材は「ツインピークス」なれど、もっと突っ込んでありありと合衆国の実態を描いてみせた。観賞中は“ああ、このパターンね”との予測をものの見事に外していて素晴らしい。

エル ELLE 女神の見えざる手

 くどいですが、「ルーム」が感動作になる21世紀、「エル ELLE」も観客を安心させないで進行したけど、本作もよく出来ている。前奏のウディから転調させるサムは絶品で、「バッド・バディ!私とカレの暗殺デート」にしろ変幻自在ですな。「コンフェッション」ジョージ・クルーニーはやられたと思うのか?勧善懲悪のお話が「女神の見えざる手」で、クライム・サスペンスのコチラに感動、いやはや素晴らしかった。
現在(2/6/2018)公開中
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プリズナーズ  ノーカントリー  ファーゴ  ゴスフォード・パーク

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    ブラッドシンプル/ザ・スリラー


 
 今とは違い公開当時の2000年、パンフレットなどで知識をため込んで、毛色の変わった作品の方が上等と思い込んでいた。観賞劇場は今はなき渋谷のシネマライズ。ところが18年後に見てみると、やはり映画についての知識が乏しく、分かっていなかったことを思い知らされる。それが冒頭部分で、昨今躍起になって昔の作品をBlu-ray仕様に変えているけど、コーエン兄弟はさっさと処女作のお色直しを済ませていたわけだ。

 2012年の「サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ」を観るまでデジタル処理に関して全く知識を持たなかった。ところがちゃんとジョージ・ルーカスについても触れているし、シャレになっているしでニヤニヤしてしまう。ずっと映画祭を絡めた宣伝効果がこの兄弟にはあったと思っていたけど、オリジナルを発掘したのはインディペンデント・スピリット賞だけ。発掘してくれてなかったら、「ヘイル、シーザー!」に至るまで、お気に入りになる監督が消えていることになる。


サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ

 もっともデジタル処理といっても、刺すような画像ではなく、1984年のものだから目に優しい。なんと一昨日見た「ネバーエンディング・ストーリー」と同年に製作されているのも何かの縁か。本作もオススメなんですけれど、ぜひポール・トーマス・アンダーソンの「ハードエイト」もご一緒に。「スリー・ビルボード」は間違いなく本作の影響を受けていると思うけどはたして。

シンクロナイズドモンスター ローガン・ラッキー

 フランシス・マクドーマンドが若くてね、酒場のシーンは「シンクロナイズドモンスター」に至るまで、合衆国の縮図なのか?「ローガン・ラッキー」にも出てきたな。後にしょぼい笑いを得意としますけど、サスペンスですからアルフレッド・ヒッチコックがどうしても思い出される。それはやっぱ暗闇がちゃんと機能しているところで、「グリフターズ/詐欺師たち」もイケる?いえいえ、やはり「サイコ」が凄いってことになるのか。
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