page of POP |
Home | 50音順 | 俳優 | 監督 | テーマ |
|
ここにテキスト
|
フロリダ・プロジェクト真夏の魔法 |
観賞劇場 | アミューあつぎ映画.comシネマ |
関連テーマ | アミューあつぎ映画.comシネマ クロックワークス アカデミー賞 | |
インディペンデント・スピリット賞 インターネット |
7月もやっと中旬になったというのに、信じられないくらい気温が上昇している。まさにうだるような暑さで、世間様は3連休の最終日。混雑している場をなるべく避けるなら、アミューあつぎ映画.comシネマに行くしかない。もはやシネコン上映作で興味の持てる品は少なくなる一方だし、介護生活しているわけだし、トシなんだしでコチラの来館頻度が上がってくるのも当然か。 | ||
この作品に関して数ヶ月前から知ってはいたけど、積極的に観たいというわけではなかった。ところがフタを開けてみれば、監督のショーン・ベイカーは見過ごすことのできない人だと痛感。現時点で「レディ・プレイヤー1」か本作が本年度№1最有力。観賞後になんとも言えない余韻を味わうなんて何年ぶりか。今のところ劇場で年に80本くらい観ていますが、滅多にお目にかかれない代物と断言できます。 |
「ザ・マスター」のポール・トーマス・アンダーソン、「犬ヶ島」のウェス・アンダーソン、次に「ワンダーストラック」を予定しているトッド・ヘインズの次に来る人といった感じ。劇場の前説では本作の舞台が、ディズニー・ワールドのすく外側にあるモーテルというトコがポイントなのだそう。そして、合衆国では貧困層の多くがソコで暮らしているとのこと。 |
モーテルといえば古くは殺人鬼がオーナーで、うっかり泊まるとメッタ刺しにされたりしましたが、日本人の私めには全く理解も実感もできない。よって「ネオン・デーモン」もそうだったなと思い出すくらい。アノ作品でキアヌ・リーヴス演じる管理人はイマイチでしたが、本作のウィレム・デフォーは長年やってる感じがにじみ出ていてさすが。彼が出演しているというのが本作の観賞誘引剤で、予想していたのは「ハンター」のライン。 |
ところがこの監督は「万引き家族」の是枝裕和に一歩も引けを取らない子供の描き方が素晴らしい。可愛く純真に撮るのではなく、その真逆でとにかく何かシデかすか、ヤラかすか。顔かたちは可愛いのに、しつけのなっていない野放しのガキそのもの。その辺の子供を連れてきて、ただ撮っていたのでは?と言うくらい自然体。「gifted/ギフテッド」の子なんか優等生で、「ローガン・ラッキー」や「それでも生きる子供たちへ」に出てくる子役に近い。 | ||
でもさ、当たり前じゃない、いちおう夏休みで親は貧乏のドン底なんだから。放ったらかしにされて、何をするかといえばイタズラ。車にツバ吐いたり、モーテルの電源落としたり、果ては・・・。笑っちゃいましたけど、あの火事のところで場内の皆さんはお静かでしたな。ミニシアターで笑いは禁じられてないんだけど。ただ、21世紀には考えられないようですけれど、五十路の私めは似たようなことをしてました、今みたいにITディバイスありませんから(もちろん放火はしてません)。 |
子供が凄いんですから、親だって無縁じゃありません。まさに“ザ・ビッチ”という感じのヘイリーは“教育を受けずに大人になるとこうです”の典型。演じているブリア・ヴィネイトは並じゃないですね。比べるのもナニだけど、「わたしは、ダニエル・ブレイク」に出てくる親子はまともで、極めて生真面目です。剥き出しの彼女を見ていて、ラリー・クラークの「KIDS/キッズ」が思い当たる。あれから23年も経っていれば、あの子供たちが親になっていてもおかしくない。 | ||
それにしても卸問屋で買った物を観光客に売りさばいて生計を立てる、などという生活が既に破綻を予期させていて、案の定ヘイリーは手軽なスマートフォンで買春業に。ただし、この監督の素晴らしさは、成れの果てを描いていても、ちっとも涙を誘わないし、感動すら観客に提供していない(2人に同情心がわく人はかなり心が広いです)。「プレシャス」はあまりに過酷な現実で泣いてしまいましたが、本作は観ていて目頭が熱くなることもなく、ひたすら画面に釘づけになった。 | ||
それは撮影技術によるもので、唸ってしまうシーンが多々あり。フロリダの陽光の成せる技で虹がクッキリ、花火もそのまんま映し出されている。今までのカメラでは、捉えることができなかったモノを随所に配置している(アレとアレを再確認した)。夕暮れ時にウィレム演じるボビーがタバコに火を着けるトコなんてヨカッタ。もちろんそれだけでは成立しなくて、刺青だらけのヘイリーとムーニーの芝居の生々しさったら。 |
「スリー・ビルボード」も良かったケイレブ・ランドリー・ジョーンズもチラッと出てきて、モーテル管理業務の日常が描かれていたり、「アスファルト」と見比べるのも一興です。派手な色合いの建物はデヴィッド・リンチ風(「マルホランド・ドライブ」)でもないし、「エデンより彼方に」とも違う。人間ドラマに焦点を絞り込むと、途端に感情に訴えちゃうけど、無意味にデカい店を映すなどして、ベタなお話に滑っていかないのが凄い。 |
|
ラストは前作の「タンジェリン」で試したテクニックが活かされているので、本作観賞前にオススメです。資本主義とやらはごく一部の金持ちと、圧倒的多数の貧乏人を生む。よって主人公がマスメディアがターゲットにするような人物だと、即座に観賞を却下するのかもしれない。「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」、「きみへの距離、1万キロ」、「ラッキー」など20年前だったら見向きもしなかっただろうなぁ。ま、TVドラマじゃないんだから、嘘くさく、実在しない人物のドラマなんて映画にする価値ないよ。 現在(7/16/2018)公開中ですけれど、7/27までです。 オススメ★★★★★ |
← 前のページ | 次のページ → |
その他の関連作 |
関連作 |
タンジェリン |
ぜひ「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」の前にご覧いただきたい実験的な1本。allcinemaによると、“全編スマホ(アナモフィックレンズを装着したiPhone5S、3台)だけで撮影された”作品なのだそう。「今日、キミに会えたら」はキャノンの一眼レフで撮影だったし、人が映っていて、何かやっていれば映画になるんだから、必ずしも道具に縛られることはないでしょう。「サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ」をまたまた見直すことになった。 | ||
で、大雑把にトランスジェンダーの娼婦シンディの1日を追うスタイルで、確かにスマートフォンならではの映像は興味深い。御大クリント・イーストウッドとて時代に即した新作「15時17分、パリ行き」を撮っているんだから、新人が遅れるわけにはいかないでしょう。お客のコチラもそれなりに姿勢を変え、PCの小さいモニター(27インチ)で見たりして。悪くなかったですね、その作品に適したモニターサイズを選んでもよい。是枝裕和作品をシネコンの1番大きいスクリーンで観ると、“なんか違ってない?”と思うもので。 |
娼婦が主人公だけに生活圏に品行方正なものはナニもなくて、出てくる人物やらその日常やらは生々しいけど可笑しい(「プリシラ」とはまるで違います)。一見まっとうな人物として配置されているのかと思いきや、アルメニア人のタクシー運転手もホモセクシュアルで、ドラマに絡んでくる。基本はシンディとアレクサンドラが軸だけど、彼女たちのお仕事ってチリ(「ナチュラルウーマン」)やフィリピン(「ブランカとギター弾き」にもチラッと出てきます)とあんまり変わらないようで、合衆国だけに進んでいるような、荒んでいるような。 | ||
|
クリスマスイヴと言ったって、ロサンゼルスですし、ヤクの売人も出てくるしで「ムーンライト」がどれほど上品な作品だったことか。かつてスパイク・リーが「ドゥ・ザ・ライト・シング」でお客さんを唖然とさせたラストより、あいた口が塞がらない修羅場がドーナツ店で展開。ウザさ大爆発という点で、アッバス・キアロスタミ(「ライク・サムワン・イン・ラブ」)を参考にしているのかもしれない。 オススメ★★★✩☆ |
|