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デトロイト |
そろそろアカデミー賞が宣伝に使われる時期なんですけれど、もうあまり気にならなくなってまいりました。チラシには最有力と書かれておりますが、見事外しちゃってる。ところが茶々を入れる必要なんてない、「大統領の執事の涙」とご同様で、後々まで心に刻まれる作品。ま、感動作じゃなくてズシンとくるドキュメント・タッチの力作です。つくづく「ダークタワー」を後回しにしときゃヨカッタと帰る道々考えさせられる。 |
ま、題材がストレートなだけに、合衆国で拒否反応を示す人もいるだろうことは想像できる。暴動を描いているのではなく、人種差別を真正面から捉えている。そして外国人が当時のアメリカ人がどうゆう差別意識を持っていたか?を理解するのに役立つ映像資料にもなっている。これを男らしい映画が得意なキャスリン・ビグローが手がけるのも当然かも。なにせ「ハートロッカー」、「ゼロ・ダーク・サーティ」の人ですから。 |
「リンカーン」とか「アミスタッド」を経ていますので、冒頭の黒人の歴史に関しては復習している気になった。またデトロイトに関しては以前にマイケル・ムーアが「ロジャー&ミー」で描いた。現在の様子は「TOMORROW パーマネントライフを探して」にチラッと出ていて、厳しいことはTwitter経由で知ってはいたけど、50年前はもっと過酷だったわけですね。
それにしても私めが生まれた1967年のデトロイトは凄まじい。愚痴だ不満だなどという生易しいものではなく、怒りが充満している。暴動が描かれた作品は「ダークスティール」、「バトル・イン・シアトル」を見ましたが、日本人の私めにはなぜ店から平気で物を盗んだりするのか理解不能だった。しかしそれは“背景に人種差別があるからなのだ”と本作を通じて思い知らされた。
デトロイト警察には「ビバリーヒルズコップ」のアクセル・フォーリー刑事も勤務していたけど、世界が違う。「チェンジリング」でも警察のデタラメさは描かれますが、当時の黒人は白人警官が驚異。「ドリーム」で描かれた様子はまさにほんのひとコマで、もっと全体に広く行き渡っている。黒人を痛めつけるのが日常的で、常態化しているなんて学校じゃ教えないからね。 |
目を背けるシーンが続くのに、観客を引きつける手腕はまさに監督の力量です。別に息抜きのシーンなんかないのに、目が離せない。空砲にビビってモーテルに踏み込み、ネチネチと黒人をいたぶる白人警官の筆頭がウィル・ポーターで、「レヴェナント:蘇えりし者」のあの坊やがこうも無慈悲で狂信的な男に変身するのかと驚かされる。注目していた「スターウォーズ/最後のジェダイ」のジョン・ボイエガは完全に脇になってしまっている。 |
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もうひとり認識できたのがアンソニー・マッキーなんだけど、“「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の空飛ぶ男なんだから、ぶっ飛ばしちゃえばいいじゃん”などという考えなんて浮かばない。笑顔を全く見せない緊張した面持ちは観客を代弁しているようだ。つくづく「42~世界を変えた男~」で黒人に対する差別を分かった気になっちゃダメですね、順序が逆だ。 |
観ている時は“白人のポリ公はナチと同じじゃないか”と怒りがこみ上げていきますが、全員がそうではないことをちゃんと本作は描いているし、憎んだって意味がない。実話を元にした「パトリオット・デイ」には運ばれるまで、少女の遺体から離れなかった警官が描かれている。ひと括りにして怒ってサッパリするんだったら、TVニュースで事足りる。 |
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この監督が裁判の行方まで時間をかけて描いているのは、制度とかそれに乗じた集団のことを見せたかったのでは?暴動が集団心理で拡散するように、差別も“法に守られている”から横行する。最近「アロハ」で見かけたジョン・クラシンスキーは私めにとってある種の記号で、「プロミスト・ランド」の人が暴力警官の弁護士とはなんとなく伝わるものがある。
もう「評決のとき」から22年経ちますけど、あの作品で原作者は現実には無理だから、フィクションにして世に問いかけたと思っている。もし「ハドソン川の奇跡」のクリント・イーストウッドだったらとも思うけど、このキャスリン・ビグローはストレートだ。「マルコムX」よりもっと怖いもの知らずというか、映画ってホントに恐ろしい、だって世界中の人が観られるんでしょ?
現在(1/28/2018)公開中
オススメ
追記 “映画館は厳しい” |
1/21に観たロボットアニメの原点と宣伝された作品は完全にボツだった。“ダメなら黙殺”が本ページのポリシーですので、あえて触れませんが、ダメ臭い予感はしていた。加えてよせばいいのに、帰宅してジェイク・ギレンホールとライアン・レイノルズが共演したSF映画を、DVDで摘んで見ようとしたけれど、こちらも途中でダメ。「エイリアン:コヴェナント」も「ゼロ・グラビティ」もあるわけだから、「フォース・プラネット」みたいなB級じゃないと・・・。 |
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で、ボツだったアニメは小田原コロナシネマワールドで観たんですけれど、日曜日のワリに客足は厳しい。そして上映作の中に「この世界の片隅に」、「女神の見えざる手」、「GODZILLA 怪獣惑星」が混じっていて、チョッと寒気がしました。だって、シネコンって新作が入っていれば、ちょっと前の作品はさっさと終わっちゃうもんね。予期してはいたけど、こんなに早く衰退が現実化するものか。都内では試みられていたシネマ歌舞伎をやるみたいだけど、効果があるのかどうか。 |
「スターウォーズ/最後のジェダイ」を4DXで体験した同僚は興奮していたけど、2015年の「ジュピター」で試して、昨年の「ルパン三世 カリオストロの城」まではヨカッタが、その後はご無沙汰している。2009年の「アバター」以来「天才スピヴェット」のジャン=ピエール・ジュネに至るまで、いろんな監督が試していたが、インパクトはもう薄れている。 その点アミューあつぎ映画.comシネマは路線に変更なく、ますますこのエリアで目立っていきそう。2作続けて落ち込ませてくれたので、ココで「女神の見えざる手」を再見。そりゃあ気分爽快で劇場を後にできないシロモノですよ。しかしサイコパスVS寄生虫の勧善懲悪サスペンス、曲がった性格の私めにはピッタリ。ひょっとすると「否定と肯定」も上映されるのか?次は「ヒトラーに屈しなかった国王」を上映してくれるし、遠くまで行くのが億劫ですからホントに助かる。 (1/24/2018) |
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