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三番目の殺人

三度目の殺人

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 “是枝裕和が日本の司法に挑む 「三番目の殺人」  サイコパスと対峙した人々の解釈も興味深いが、タイトルが辛らつでストレートすぎる”

 

  是枝裕和の作品はもう何本目かなぁ、1999年の「ワンダフルライフ」からなので実に18年のお付き合いといったところ。その間にシネマライズがなくなったり・・・、「パターソン」と同じスタートで申し訳ない。前夜に「海街diary」(「光」の影響からか音声ガイドで見たりして)、「そして父になる」をざっと眺めていたけど、新作はどうゆう趣向で来るか。

 前作「海よりもまだ深く」の阿部寛、樹木希林、リリー・フランキーは今回出ていない。それは雰囲気を変えるためだったのか、恐らくこの人の「ディスタンス」「誰も知らない」の系譜に連なる内容のためでしょう。キューピーマヨネーズの宣伝にも出てくる福山雅治は、世間一般では40代でも好青年なのかな?是枝作品だと実に嫌な男がしっくりで、ガリレオからさらに発展させた感じですか。

 予告で察せられるのはアメリカ映画に嫌というほどある弁護士モノを、日本映画でやろうとしているみたい。自信満々の若造がチョロいと思っていたのに深みにハマるというパターン。「ア・フュー・グッドメン」「アミスタッド」「声をかくす人」など品数豊富です。もっとも、パターンは似ていても、描かれる事件が実態を浮き彫りにする。ココが侮れなくて、前線基地の異常さとか、奴隷売買の実態とか、恐ろしい世間様の風潮とか観客に考える機会を作る。

 そして是枝作品に出たことがなかった役所広司が、サイコパスというのが興味深い。これは「エル ELLE」の観賞誘引剤になった「良心をもたない人たち」が参考になるし、本作観賞にも役に立った。早い話が“連続殺人鬼に何を言っても無駄”、森田芳光「39刑法第三十九条」も参考になりますが、まだ世の中の理解が進んでいなかった時期の作品とも言える。

 21世紀の本作は過去作品を継承しつつ、むしろ犯人を軸にして関わった人々、正確には巻き込まれた人々を描いているから新作。“嘘ついちゃダメ”なハズの法廷がデタラメで、それが実際の日本の写し絵にもなっているから、この監督の冷徹さは恐ろしい。どさくさ紛れに雇用の実態だったり、食品偽装だったり、虐待だったり。出てくる人はほとんどが功利主義者、まともな人間っていないの?という徹底ぶり。

 司法に関しても切り込んでいて、既に周防正行の「それでもボクはやってない」「終の信託」も描きましたが、TVドラマのサスペンスが簡単に上書きしてしまって人々は無関心なまま。チラリ出演の橋爪功は、判決が世相に左右されることをバラす。果ては「やってない」と訴えているのに、「金がかかるからこの辺で」と切り上げちゃう(場内で笑ったのは私めだけでしたけれど)。市川実日子が出てきたからか、「シン・ゴジラ」と同じでコメディかと思った。

 映像的にはドローンによる空撮が新味を感じさせ、雪に覆われた北海道は見惚れてしまいます。さすがに「君の名は。」とて実物の駅が映ったら敵わない。そしてあの窓越しに接見するシーンは見事だ。まるでオカルトものかと思うほどの効果があり、サイコパスに翻弄される人々は、自分の思い込みを相手に投影してしまう。「羊たちの沈黙」なんてラブストーリーに見えちゃう、モロに本作の主人公重盛は操られちゃう。わざわざ犯人が「ダメですよ、人殺しに期待しちゃ」と言ってるわけだしね。

 タイトルの三度目の殺人とは辛辣で、誰がいつ決定したか?はぜひご覧になってご確認を。司法制度そのものは間違っていないと思う、しかし運用する人間の精神が乖離しているのだ。もっともデタラメなのはずっと前からで、「熱海殺人事件」もオススメです。もし外国人だったらこの監督は怖いもの知らずだなぁで済みますけど、日本人ですから失笑の後に苦味が残ります。帰る道々考え込んでしまう。

現在(9/9/2017)公開中  オススメ★★★★★

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