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 “愛がなければテロとは戦えない 「パトリオット・デイ」 ボストン市民に捧げる直球勝負。観客を現場に連れていく迫真の描写が圧巻”

パトリオット・デイ


パトリオット・デイ

  4月の「バーニング・オーシャン」から間髪いれずに公開される、ピーター・バーグマーク・ウォールバーグコンビ作。私めにとって主要キャストは完璧で、ジョン・グッドマン(「キングコング:髑髏島の巨神」)、ケヴィン・ベーコン、J・K・シモンズ(「ザ・コンサルタント」)、ミシェル・モナハン(「アイアン・ソルジャー」)。前作が素晴らしかったので、今回も期待は大きい。

  その期待は十二分に満たされて、本作がピーターの代表作になった。ところが公開初日のTOHOシネマズ海老名でしたが、そこそこの入りだったのでちょっと意外です。もちろん今の日本にテロの驚異は“風呂場で溺れて死ぬ”より確率は低い。ただボストンマラソンの爆弾テロ事件というニュースは、簡単にあちらの国の出来事として片付けて良いものか。実際に起こっているんだから。少なくとも本作を通じて“テロとはどういうものか?”を知ることができる。またとっとと忘れちゃってる自分の確認にもなった。

 2010年を最後にマラソン大会に出るのは止めましたが、もしゴールで爆発なんて起こったらたまらない。TVニュースだと他人事に感じられる瞬間映像ですけれど、映画は許してくれません、見せつけます。もし自分があの中にいたとしたら・・・。惨劇って文字情報では伝わらない酷さが刻まれていて、観客に帰る道々“ひどすぎる”と呟かせる強烈な描写。意図しているのは我々を現場に連れて行くことだと思う。

 よって時系列を前後させたり、交錯させず、事態の推移を時間通り丁寧に追っている。爆発直後にFBIがすぐさまやって来て、あっという間にだだっ広い部屋に捜査の指令所を作ってしまう。この辺を「シン・ゴジラ」と比べて日本政府を笑っても意味ないけど、果たして初動であそこまで迅速な対応は取れるものかな?ただし、スピーディな動きだから気がつかないけど、テロ対策を口実にした例の法律に関して考えさせてくれる資料にもなった。

 おおぜいの捜査官が残った監視映像を逐一確認していく。この人海戦術を機械化できるのか?マーク演じるトミーは爆発現場にいたので、記憶をたどって容疑者が映っているだろうカメラを指定していく。この過程がはからずも観客に教えてくれるのは、2013年の時点で、思ったほど機械化なんて無理ということ。後々明らかになっていくけど、膨大な量の情報がむしろ足かせになっている。これは本作が描こうとしているテーマとはかけ離れているけど、覚えておくべき事の一つ。

 監視カメラまでは使えるけど、判明した容疑者を捕まえるにはハードルが一段高くなって、発表に際して政治的判断を迫られる。紋切り型の作品ならFBIのトップを演じるケヴィンがワルだけど、そうはならなかった。ちゃんとムスリムに関して考慮した上で、自分の勘を信じるといった過程を盛り込んでいる。テロに関して描いた「メイド・イン・フランス -パリ爆破テロ計画-」が参考になりますが、本作の犯人像とダブるところがある。

 豪華キャストに引けを取らないのが犯人役の2人で、逃亡中の部分はかなり色をつけていると思う。この辺は劇映画として成立させるために必要で、観ているこっちはホントに腹が立つ。テロリストなんてしょせん私怨のはけ口を、見ず知らずの人々に向けているだけで、規模がデカくとも「機動警察パトレイバー2」「ダークナイト・ライジング」もその点で一致している。

 本作が感動的なのはテロとの戦いに勝利したのは何だったのか、“問い”ではなく“解”を見せてくれたこと。これは前向きなアメリカ映画ならではだと思う。セリフにしてわざわざ告げられていて、“勝利したのは愛”。ニュースから目を背けてもただの世捨て人になってしまうし、無関心症は危険。「ハドソン川の奇跡」「キャプテン・フィリップス」など、TV視聴者が興じるニュースが終わったあとに確認しておかないと。

 本作を通じてテロ対策を口実に進められている法整備が、現場の捜査を妨げる可能性が見えてきた。意地悪く考えれば人口調節をしたいエライ人々は、宣伝を使ってテロを煽り、テロリストの手助けをしている。うんざりさせられる現実だけど、我々を囲っている。これはもちろん余談に過ぎません、本作はそんな現実に身を置きながら、勝利したボストン市民を称えている。

現在(6/11/2017)公開中  オススメ★★★★★

わたしは、ダニエル・ブレイク すべての政府は嘘をつく
 
 
 
バーニング・オーシャン キングコング:髑髏島の巨神
            

その他の関連作

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い  誰よりも狙われた男  ブッシュ   

大いなる陰謀  ハートロッカー  トゥモロー・ワールド  パトリオット・ゲーム

ワンダーランド駅で  良心をもたない人たち


 

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良心をもたない人たち

 まだ途中だけど、著者がボストンの心理学者だということで「パトリオット・デイ」の関連作としてピッタリだと思い、載せることにしました。たまたま倉庫で見つけて、というパターンは「戸越銀座でつかまえて」もなんだけど、昨今“身の回りで起きていること”を考える上で大変助かった。“異常な~”で済ませて、思考停止して、涼しい顔して生活するのも悪くはないが、知っておくべき事実。

 良心をもたない人たち=サイコパスは4%、“25人に1人”の割合で存在するそうな。“彼らにとって殺人などはゲームに過ぎない”とは「セブン」から始まって、為政者たちもそうだし、彼らの手先もまさに典型。イザベル・ユペールの新作「エル ELLE」も近そうだ。読んでいる最中は、とにかくタイトルが次から次へ浮かんできた(「チームバチスタの栄光」「スポットライト 世紀のスクープ」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」などなど)。

すべての政府は嘘をつく

 また「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」が、今になって観に行ってヨカッタ重要な作品だったことを思い知らされた。“10人に6人はえらそうに見える権威者を目の前にしたとき、いやな命令にも従う傾向があることを実証”とはミルグラム博士の功績で、兵士に攻撃を命じる司令官は殺人教唆をしているに過ぎない。人は生まれながらの殺人者ではないから、「アメリカン・スナイパー」のような悲劇も起こり、「ハクソー・リッジ」「虐殺器官」も訴えているテーマは重要。

 同盟国での病気は当然輸入されつつあって、かつて東アジアではこの種のサイコパスは少なかったそうだが、現在は増加傾向にある。資料を調べずとも、自分をこき使ってきた経営者がまさに該当する。組織体は当然人にサイコパス化を要求するから(「ザ・コーポレーション」を参考までに)、自殺者が絶えない。以前に比べて電車が止まることは増えたけど、数が多い不穏なニュースはTV向けじゃないから周知されない。


 ひょっとすると世の中がおかしくなっているのか?と疑ってしまうのは、この種のサイコパスをもてはやす風潮に歯止めが効かず、まともな人を周辺に追いやっているからなのでは?「ザ・コンサルタント」は人のために知恵を出す会計士が出てくる。「Dearダニー君へのうた」の孫娘は多動性障害とレッテルを貼られているけど、通うはずの施設がまともに見えたものだ。

 また“愛着障害”という言葉も初めて知った。もはや覚えている人すら少ないけど、独裁者ニコラス・チャウシェスク政権下のルーマニアが例に挙げられている。どういう事態だったか「4ヶ月、3週と2日」で知るのみだけど、「ハーモニー」がこの症例を間接的に描いたことになるし、「LION/ライオン ~25年目のただいま~」も参考になるかもしれない。ただし、サイコパスはまるで違う生き物なのだ。


LION/ライオン ~25年目のただいま~

 マイケル・サンデル先生は「正義」の話をしようと説き、このマーサ・スタウト先生は良心を教えてくれた。ボストン市民はテロに屈せず愛で勝利した。“そそのかす人間”は至る所にいて、恐怖で支配している。“恐れは尊敬と誤解されやすい”とは真理で、サイコパスは治癒しない。もっとも読み始めて、まず自分を疑ってかかった。店長をやっていた時は“人を駒として扱っていた”からね。でもどーも納得いかなくて、今はこの有様。でもこの社会に順応できない自分にホッとしたりして。
オススメ★★★★☆



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