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海辺のリア


海辺のリア

 “仲代達也の力業 「海辺のリア」現代日本の抱える日常を舞台に、シェイクスピア劇にしてしまった”

 どういった経緯で観ることになったのか、自分でも説明不能。恐らく吞みながら、映画サイトを眺めていて、たまたまホームページに至り、予告映像を見たのだろう。そしてそのままGoogleカレンダーの予定を変更、チケット予約も済ませている。本日はオッサンが今を知るための2本立て、もう1本は「わたしは、ダニエル・ブレイク」で、娯楽作とは程遠い品をよりにもよって日曜日に・・・。

  ま、先に予定していたのはブルク13で上映される作品で、後にアチラに書くことになりますが、私めが記憶していたみなとみらいも、あっと驚く変化があった。それは後ほどで、今回はTOHOシネマズららぽーと横浜です。今の日本のニュースは“どんどんトシとってて、どんどん金が無くなっている”でけだと思っているから、この選択になったのだろう。ある意味自分の足場の確認になる。

 いきなりスーツケースを引きずって、仲代達也がもうろうとした目をしながら歩いている。施設を抜け出してきた老人は、祖母の最期を思い出させる。夜も明けないうちに、田んぼの真ん中で立ってたことがあったのだ。場面は海岸に移り、若い女性と出会う。もはや自分が誰なのか、何をしたいのかもハッキリしない(「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」顔負け)。目の前にいるのが愛人に産ませた娘であることも。

 フィクスの画が延々と芝居をする出演者を捕えていて、人によっては退屈かもしれない。劇映画で最も懸念すべきは、観客が飽きてしまうこと。それを回避するため、背景の景色はちゃんと選ばれている。観光宣伝に使われそうでもないし、かといってダメでもない。「めがね」が映した沖縄か野比海岸が映る「HANA-BI」っぽいですかねぇ。車のナンバープレートから判別できるのは、金沢だというくらいか。

 観賞前は数年先か数か月先か、老いて“自分が分からなくなった”親との接し方の参考にするつもりだった。前日に「熱海殺人事件」で仲代達也の迫力に爆笑していて、その衰えを比べてみたかったのかもしれない。ところがより鬼気迫る狂気じみた演技が出現した瞬間に、これがシェイクスピア劇「リア王」の翻案だと思い知らされる。「乱」の主演なんだし、舞台でも活躍してる人だもんね。

 シェイクスピア劇は舞台装置がなくとも観客に見せることが出来る。よって場所は問われない(「リチャードを探して」を参考までに)。迫真の仲代が圧倒的で、他の出演者はついていくのにやっと、という印象はさすがだと思う。受け手の阿部寛はこの種の作品は未経験だっただろうけど、「海よりもまだ深く」「チームバチスタの栄光」など出演作は多岐にわたり、もはやベテラン。

 娘役の黒木華は「永い言い訳」にも出演していたそうな、日本映画の新人には全く知識ありませんな。美味しいのは悪党の原田美枝子と画面の隅に映っている小林薫。両人ともにご無沙汰で、データを頼りに探ると原田は「半落ち」、小林は「海炭市叙景」以来になる。でも「それから」のお芝居もあったから、小林にはもっと出番があってもという気がする。

 それにしても役名がシャレで、わざわざ桑畑長吉とは「用心棒」を匂わせているけど、若い人にアピールするのか?もっとも場内は私め以上の方々だったから、受けたと思う。娯楽作じゃないと決めつけていたけどこの監督は侮れない。日曜日ながらこの題材でよく人が入っているけど、シェイクスピア劇の映像化は「英雄の証明」などでもなぜかお客が入る。


 御年85歳の仲代達矢に圧倒されて105分退屈せず、もちろん現在私めが同居している親との接し方も参考になった。ハッキリ言って大人向けのエンターテインメントにもなっている。直近で82歳のウディ・アレンが監督した「カフェ・ソサエティ」があって、年の初めに「シーモアさんと、大人のための人生入門」があって、まだまだ多様性という点で品薄なのでは?「マイ・インターン」みたいなのがもっとあってもイイんじゃない?

現在(6/4/2017)公開中  オススメ★★★✩☆

カフェ・ソサエティ
わたしは、ダニエル・ブレイク

その他の関連作

 ツレがうつになりまして。 海洋天堂 レナードの朝 レインマン 
 マイライフ、マイファミリー


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熱海殺人事件

 リリースされた時はVHSで、レンタルないもんだからDVDを購入。力いっぱいアホなセリフをよく覚えている。で、「海辺のリア」前日にスタッフ名などを注意して見ていると、いきなり音楽担当が久石譲でニヤリとしてしまう。同じ年に「天空の城ラピュタ」を手がけているとは。そして平泉成が看守役でチラッと出てくる。後に「シン・ゴジラ」で内閣総理大臣になる人も若い。

 仲代達矢がギンギンで、志穂美悦子は確実に美しく、風間杜夫は「蒲田行進曲」よりヘタレで、コント山口君と竹田君の竹田高利だと言っても、もはや通じないか。大滝秀治の何とも言えない芝居など、しみじみしてしまう。“工員がブスの女工を殺したチンケな事件”とは凄まじい表現だが、堂々と口にされている。つかこうへいの差別を前面に出した代名詞戯曲の映像化で、このくらい徹底しないと意味がない。

 全員ひどい人たちのようで、核にしっかりと人間らしさが備わっている。ラストは必見、ぜひご覧になってご確認を。公開当時は思いもしなかったけど、時代を知る手がかりもタップリある。今がどれだけ窮屈な表現を強いられているか。“言っちゃいけないこと”を決めるTV局が作っているのは皮肉だ。最近映画を観ててさ、痛快さがまるでない“死んだ魚のよう”ってのは気のせいじゃないんだな。警察のデタラメさもちゃんと学べる。
オススメ★★★★☆
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