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関連テーマ 真っ向勝負の日本映画  ギャガ(GAGA)

 “何かが欠けている”日本を逃げずに描いた「彼女の人生は間違いじゃない」
悲しいが、絶望の先に光は見える。

 新宿までのこのこ来る必要に迫られた、本作に至る過程は単なる偶然。たまたまallcinemaを眺めていて・・・。溢れる情報の中から“自分に必要なものだけ”を抽出することは不可能だけど、“直感に引っかかるナニか”を頼りに生きていくしかない。ニュースはアテにできない(「世界を欺く商人たち」)、映画と本で足場を組み立てる。苦いが良薬になった「わたしは、ダニエル・ブレイク」も気づかせてくれたこと多々あり。

わたしは、ダニエル・ブレイク

 今の日本で“知らなければならないこと”ではなく、“気になって仕方ないことの一つ”が東日本大震災のその後。“TV映りの悪い現実”は隠蔽されるだけでなく、我々は無意識に知らん顔して生きている。でも放射性廃棄物は100,000年待たないと無害にならない。よって繰り返し観ないと忘れちゃう“いい加減な生き物”だけに、ナチの映画(「ヒトラーへの285枚の葉書」)も差別の映画(「あん」)も定期的に観賞、2011年以降はこの題材が加わっている。

ヒトラーへの285枚の葉書

 そしてはからずも本作は“今の日本を映し出す鏡”にもなっている。とにかく“お金がなく、年取ってる”のが実際で、ジリ貧だから東京にアレもコレも集中させて取り繕ってる。予告で主人公は市役所に勤めているけど、渋谷でデリヘルのアルバイトとは象徴的だ。新幹線ではなく、バスに乗っていくシーンは何とも言えない気分にさせられます。今はド田舎に住んでおりますが、私めは東京出身。“地方を食い物にして繁栄を享受してきた”首都の生まれ。

 主人公金沢みゆきを演じている瀧内公美は本作に不可欠だ。美人なんだけど生活感も備えていて、いずれ「海よりもまだ深く」の真木よう子のようになっていきそう。「東京無国籍少女」の清野菜名には体当たりアクションに驚かされましたが、本作で瀧内が見せてくれたデリヘルって商売は初めてお目にかかる。レンタル屋で25年も働いて、AVだって見慣れているとは言え、“不衛生すぎるだろう”とはナイーヴですかな。要はポルノとして描いていないってことです。

 働いている倉庫で、なんでローションがあんなに出荷されるのかと思っていたけど、需要があるわけだ。AV女優の数は20年前とは比べ物にならないし、好きでやるわけないよ、貧困層が確実に広がっている証拠です。みゆきのボディガード役で出てくるのが高良健吾、この人も生々しい。ゴジラと戦っていた人とは思えない、渋谷の住人になりきっている。繁華街で生きていると醸し出す雰囲気がプンプン。

 仮設住宅の部分で重要なのが父親役の光石研で、保証金をパチンコにつぎ込むとはやるせないです(「レンタネコ」の情けなさとは真逆)。またそれに“たかる人種”も出てきて、ツボを売りつけるとは事実でしょう。詐欺師を演じる波岡一喜、「THE NEXT GENERATION パトレイバー第3章」の間抜けなテロリストもできますが、安っぽいヤクザ風情が似合います。

 もうひとり光ったのは柄本時生で、お父さんは柄本明(「幻の光」を見て欲しい)ですよ。彼は地味な役場の職員役なんだけど、辛い仕事をしている。“お墓も簡単には移せない”とは当事者にとって諦めきれないけど、それを受けなきゃなんない。また観客と似たような立ち位置が論文のため潜り込んでいる女子大生で、TVと似たような質問を浴びせられて吐いちゃう。当たり前ですよ、思い出したくもないんだから。

 おびただしい汚染土を日本政府は処理できない、TV視聴者は知らん顔を決め込んでいて、“どーでもいいこと”を知りたがる。知らぬ間にヒタヒタと貧困は広がっていて、ダメージを受けると回復不能になるくらい年老いている日本。この認識は怖くて言い出せないけど、薄々みーんなが感づいているのでは?でも「家路」では自殺する人だったけど、光石研はラストに見せてくれましたね、アレは希望だと思う。

 もちろん主人公のみゆきも、劇団員として生き始めた元ボディガードの三浦から・・・、ぜひご覧になってご確認を。“これからは地方の時代”などというキャッチコピーではなく、東京に住むことが“しんどく”なりそうだ。まず夏の暑さは殺人的だし、乗って行ったすし詰め状態の小田急線は、立っている人が気の毒に感じた。これはトシのせいだけど、“東京に行かなければ手に入らないモノ”という価値観はだいぶ怪しいですよ。
現在(7/25/2017)公開中  オススメ★★★★☆
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追記
 「君の名は。」の配信が帰宅後、日付が変わって7/26から開始だった。というわけで、5:00起床で新宿までのこのこ行って、2本観てクタクタ、眠いにもかかわらず、零時まで起きていたりして。やはりいち早く見たい、“はやる気持ち”にさせる作品なのだ。で、もうページにしたし、5回も劇場で観たので、好きなシーンを摘まんで見ようかと思ったけど、けっきょく全部最後までじっくりいくことになった。

 で、発見というより、楽しく感動の後にふと気がついたことがある。東日本大震災のあと“残しておこう、記しておこう”というクセが私めにも芽生えたような気がする。実際映画館の閉館に遭遇しているから別サイトを始めたし、自分が被っているIT機器の変化も、いちいちページを割いて残している。それが振り返る足場になっていて、気が楽になっていることは確かだ。

 この作品で新海誠はモチーフに東日本大震災をもってきたこと、タイムパラドックスで物語を駆動させたことはハッキリしている。ただ忘却もこの作品の重要なテーマで、人の記憶は脆く、危ういことを描いた。またIT機器とてあっという間にその記録が消え失せるシーンがあって、ちょっと気になった。昨今のIT機器万能感に批判を込めたのか。

 映像の強烈さで「レヴェナント:蘇えりし者」に引けを取らなかったし、やはり2016年ナンバーワン。パッケージソフトの発売を急がないと(もはや半年が当たり前)、さっさと忘れられてしまう作品とは違う。劇場で5回観賞できたということは、それだけ上映期間が長かったことの証明。偶然にもページに載せられた2本のうち、もう1本の劇場版アニメーション「この世界の片隅に」もリリースは・・・、元レンタル屋だけにこの辺は記しておかないとね。

彼女の人生は間違いじゃない


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あん

 予備知識を持たず見ると、驚かされ、“心を鷲づかみにされる”感動に遭遇することを痛感させてくれた傑作。監督の河瀬直美はかなり前から知っていたけど、本作が初。“映画通には程遠い”とは何度も繰り返しておりますが、もはや“うろたえ”たりはしません。アミューあつぎ映画.comシネマの予告で「光」が良さそうだと気になり、「パターソン」も楽しみな、現在の永瀬正敏を確認したかったことも大きい。

 「選挙」「海炭市叙景」「午後8時の訪問者」がテイストとしては近いかもしれない。過度な“ありがち演出”を排してテーマを浮き彫りにし、“観客それぞれに委ねる方向”を心がけた作品と言ったらよいでしょうか。冒頭はごく自然に、街角に立つどら焼き屋の描写にニヤニヤ。永瀬正敏が素晴らしいです、マジで。そこに樹木希林扮する老婆がやって来て、雇ってくれと頼まれる。私めも店長でしたから、“困っちゃったな”という彼の心理が手に取るように分かる。

 で、業務用のあんこじゃダメってことになって、夜も開けぬうちから仕込み。「店長さん、それやって」といった作業風景が素晴らしくて、入り込んでしまう(飲みながら見たので、永瀬のセリフが口をついて出た)。出来上がったあんこの具合は絶品で、やる気のなかった男も納得させられる。美味けりゃあ人が集まるのは当然で、“いいなぁフードムービーとして大当たりだよ”とは前半部分。

 ところが荻上直子「彼らが本気で編むときは、」を撮ったように、この人も日本の差別に迫っていく。アッチと近いのは、“可愛い”と称された女優に悪役をお任せしているトコ。水野美紀は出番はチラッとだけど、「恋の罪」の人だけにダメな母親の印象を残す。もっと凄いのは浅田美代子で、近づいてはいけないサイコパスたちと変わりませんよ。“その辺にいっぱいいる”迷惑で不愉快なデマ伝搬者。

彼らが本気で編むときは、

 樹木希林の手にケロイドがあったので気にはなりましたが、ライ病患者を描いた作品とは予想していなかった。TVニュースで知ったことを除外して記憶を辿ると、「グインサーガ」第一巻にその種のことがあった。そして、店のお客さんで一人いたなぁと思い当たった。彼女の外見は本作の写真と同じだから間違いない。もっとも思い出すのに時間がかかったくらいで、気にしてなかったんだよな。覚えているのは上野樹里にご執心の人で、しょっちゅう「のだめカンタービレ」の話ばかりしていた。

 後になって気がついたんでけれど、“差別とは人が発生させるもの”なんですね。せっかく浅田美代子がネチネチやってくれたんだから。それと「君の名は。」にも出演の市原悦子も忘れてはならない。もっとも糾弾、告発を目的とした作品ではないから、感動で伝えているところが良いのだ。その部分を担っているのが祖母との共演を果たした内田伽羅。「舞妓はレディ」の上白石萌音もさ、オッサンの急所を突きますが、泣かされてしまった。そしてallcinemaで確認したからなんですけど、「奇跡」のあの娘ですよ、あの重要なパートを演じた彼女か・・・。
オススメ★★★★★
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