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確かに悲劇だが、 今後はいつ誰の身に起こっても不思議じゃない。 または、日常になる可能性がある 「わたしは、ダニエル・ブレイク」 ケン・ローチの投げかけた問いを、 我々は考える時間を作らなければならない。 |
わたしは、ダニエル・ブレイク |
観賞劇場 | アミューあつぎ映画.comシネマ |
関連テーマ | アミューあつぎ映画.comシネマ |
ららぽーと横浜を後にして、しばらくすると来館頻度が増しそうなアミューあつぎ映画.comシネマに移動して本作を拝む。老化する現実の心構えにと思った「海辺のリア」だったが、なんとシェイクスピア劇で驚かされる。しかしコチラはケン・ローチ作、甘くはないだろう。“オッサン必見の2本立て”とはオレもトシ食ったけど、ショッピングモールに居場所はないし、宣伝で成り立っている超大作は退屈なものが多い。 | ||
劇場の前説で“監督は実際のエピソードで脚本を組み立てた”と教えてもらって、冒頭に納得してしまう。役所の面接らしく、意味もない質問が延々と続く。心臓発作で倒れたダニエル・ブレイクが「ふざけるな」と返すのはごく自然。つくづくアドルフ・アイヒマンは至る所にいて、どんどん世界を世知辛くしている。また彼らを悪と断ずるのではなく、単純に“服従の心理”に忠実、とコチラも姿勢を変えなければならないのだろう。 | ||
ダニエルのしてきた仕事は大工で、マメに作っている品はなかなかの出来栄え。でも仕事は止められているし、収入はないから援助の手続きをしなきゃならない。その過程はホントに消耗させられるもので、“業務を民間に外部委託すると、こうなります”の典型。お役所仕事を通り越して、“支払わないよう仕向ける”マニュアルに則っている。追い詰められる男は英国だけでなく、スペインもご同様で「マジカルガール」が描いた。日本だと携帯電話の料金変更がこれに近い。 |
手続きする役所でシングルマザーのケイティ一家と出会うけど、彼女も排除される一人。ホームレスの施設に入れられたら子供だっておかしくなってしまう。「聖者の眠る街」なんか酷かったもんね。でも過度に悲劇性を助長するのではなく、淡々と描くのでもなく、冷静に観客が観ていられるんだからケン・ローチの手腕はさすがだと思う。コメディ「エリックを探して」も撮れるけど、お客さんに現実を知って欲しいからなのだ。 | ||
マリオン・コティヤールの「サンドラの週末」、「君と歩く世界」にも我々の隣人は描かれている。それらの作品を観ると、無力感に支配されて思考停止に陥ってしまう。この辺を監督は考慮した上で、本作に可能な限り娯楽性(悲劇であっても)を排し、観客に問いを投げかけていると思う。本作に比べると「サンバ」は極上のラブストーリーでしょう。ケイティが配給所で、つい缶詰開けちゃうところは切なくて、今後も忘れられない。 |
ダニエルは最期まで政府が進める人口調節に負けることなく、諦めずに尊厳を守った。ケイティ一家と出会えたことも大きかったと思う。じゃあ我々を救うどころか、監視している政府を憎んでどうにかなるか?昨今リリースされた「シークレット・オブ・モンスター」と「ザ・コンサルタント」を繰り返し見ているからか、ヒントはありそう。リーダーなんて誰がなっても良いし、下手をすると癇癪持ち。でもヒーローは意外に会計士だったりする。 | ||
監督の問いかけを自分なりに考えてみると、身体は資本で、ハナっから役所を毛嫌いしないことではなかろうか。確かに奥さんの介護で時間に余裕がないのは分かる。でもほんのチョッとでいいから、運動を心がけていたら心臓発作はなかったかもしれない。また役所の人も全員が服従者ではないから、中には親切に方法を教えてくれる人だっているかもしれない。これは賭けかもしれないけれど、隣人を信じないことには。若い人の中にだって親切な人はいる。 |
よって本作観賞後にはさっさと帰って、町役場の健康福祉会館にあるリラクゼーションルームにあるマシンを使って走る。利用料金は\200で、公的施設を使い慣れるようにしている。そしてダニエルを排除するのに使ったPCに、なんとか慣れるためにこうしてせっせとページを作っている次第。もちろんそれとて徒労に終わるかもしれないけど、惜しむ労ではない。 | ||
国のために戦った兵士でも切り捨てる。乗員全員を救った機長も査問にかける、嫌というほど映画は描いてきた。略奪者に対しては泣けなしの財を投じてヒーローを雇うしかない。いなかったら自分で何とかする方法も21世紀には微かだがある。となりの若造が独自にやってるけど、スニーカーに値打ちがあるうちは有効かも。 現在(6/4/2017)公開中 オススメ★★★★☆ |
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