page of POP |
Home | 50音順 | 俳優 | 監督 | テーマ |
|
ここにテキスト
|
ドリーム |
観賞劇場 | TOHOシネマズ海老名 |
関連テーマ | SF映画 偉人伝 アカデミー賞 TOHOシネマズ・シャンテ |
先週の「エイリアン:コヴェナント」に続いて、おすぎさんのレビューを頼りに、TOHOシネマズ海老名で初日の本作を拝む。予告編でジョン・グレンがさっそうと映っている、ということはアポロ計画の前段階であるマーキュリー計画の時代。その辺を「ライトスタッフ」で観たのも、もう何年前になるのか・・・。ただし、本作はフィリップ・カウフマン作の“抜け落ちた部分”を補っている。原題の“HIDDEN FIGGURE=隠された肖像”がピッタリだけど、なにか配慮があったのかな? | ||
アンジェイ・ワイダの「残像」しかりで、“歴史に埋もれた部分”に光をあてる機能が映画にはある。非難するわけではありませんが、「ライトスタッフ」と見比べるとクッキリ。かの作品でバッサリ切り落とされていたのは合衆国内の状況で、本作が描いているテーマの一つは人種差別。冒頭が分かりやすくて、エンストして立ち往生している3人組が、やってくるパトカーを恐れている。 |
警官でさえ当時の黒人にとっては驚異で、出てきたのはデマとうわさ話で生きている21世紀には絶滅種の男。ま、連中をあまり追い詰めると暴力に訴えますからナニですけれど、今から見るとホントにどうしようもない。しかし最新科学技術を取り扱っているはずのNASAは、もっと差別の巣窟というか、温床というか呆れ果てる組織体。この辺は「オデッセイ」と見比べれば歴然。 | ||
「42~世界を変えた男~」の悪役もやる気満々ですけれど、本作でそれを担っているのがキルステン・ダンストとジム・パーソンズ。キルステンは「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の美少女がいつの間にか“小便かけてやりたくなる”表情でやりまくり。ジム演じるポール・スタフォードって実名でしょ?あんな“あからさまな嫌がらせ”を後世の人々に暴露されるとはお気の毒様。「ハドソン川の奇跡」もそうですけれど、映画って怖い。 |
また差別に加えてマイケル・ムーアがニヤリとしそうな、アメリカ白人のアホさ加減もバッチリ描かれている。でっかいIBMの機械が部屋に入らないんだもんね。原子爆弾(「カウントダウンZERO」)も亡命ユダヤ人に作らせた連中ですけれど、宇宙開発も頼ってる。TV時代が追い風になった大統領はポスターで使われているけど、描かれ方は今までとはちょっと違うような印象ありますね。 | ||
“差別はいけない、人としてあるまじき所業”ではなく、本作がありありと描いているのは非効率極まるということ。いちいち別棟のトイレにオシッコしに行かなくちゃなんないんだもんね。“だからソビエト連邦に出し抜かれるわけだ”とまでは言わないけど、時間をドブに捨てている。ついにキャサリンの口からほとばしる怒りは、観ているこちら側も一緒になって叫びたくなる当然のもの。 | ||
結果キャサリンの天才にNASAは救われ、赤っ恥をかかずに済むんですけれど、彼らが真っ青になったガガーリンについてはぜひ「ガガーリン 世界を変えた108分」を並行してご覧ください。アメリカ人のビビリ症が笑っちゃうくらい鮮明になります。もちろん本作単品でもいけますが、特撮も頑張っているSF映画の側面はオマケですので、物足りない場合はぜひ。 |
主題は稀有な3人の黒人女性が“勝ち取ったもの”だと思う。実話をベースにしているとは言え、かなり色をつけた描き方はアメリカ映画ならではなんだけど、恐らく実際はもっと淡々と、当然のように差別はあった。しかしそれが“どう考えたって間違っている”ことを、彼らは自らの道を切り開くことで獲得したのだ。差別は人が発生させると同時に、人が蹴散らすことができるもの。 | ||
3人のうちFORTRAN言語を独学で習得するドロシー役のオクタヴィア・スペンサーは貫禄ですね。「フルートベール駅で」、「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」とかあるし、もう次の「gifted/ギフテッド」が観賞決定。キャサリン役のタラジ・P・ヘンソンは「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」に出てたみたいだけど覚えてない。もっともあまり美人過ぎない彼女だから、大人の恋の部分が良いのです。 |
そして「ムーンライト」の2人、ジャネール・モネイとマハーシャラ・アリは今後もっと売れていきそう。ジャネールは3人のうちのキレイどころで、「リリィ、はちみつ色の秘密」のアリシア・キーズっぽいかな?マハーシャラはバリッとした軍人役が見事にハマった。前作はヤクの売人で職種はまるで違うけど、中心に温かみがあるというか人情が滲んでるんだよね。 |
昨今「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」で見かけたケヴィン・コスナーは、刻一刻とジジイになりつつある。「JFK」、「13デイズ」など“白いワイシャツにネクタイ”の時代を描いた作品が似合います。また監督のセオドア・メルフィはノー・チェックでしたが、なかなかの実力者ですな。差別を描きながら、観客に“憎しみと蔑み”だけを植え付けなかった。「ヴィンセントが教えてくれたこと」も見とかないといけないかもしれない。 現在(9/29/2017)公開中 オススメ★★★★★ |
← 前のページ | 次のページ → |
その他の関連作 |
関連作 |
ガガーリン 世界を変えた108分 |
「ライトスタッフ」でも「ドリーム」でも合衆国を真っ青にさせた、ソビエト連邦の偉業達成の瞬間。並行して観賞し、その事象を双方から見られるのが現在の視聴環境。これは同じ戦闘でも呼び方は違うし、とらえ方も違う「5デイズ」と「オーガストウォーズ」がオススメです。「ドリーム」観賞後に帰宅して見たけど、色々楽しめます。まず驚かされるのが社会主義国の貧乏くささ。その辺は「残像」でもアリアリ。とは言っても似たような部分もあるんだよね。 | ||
合理的に計画を進めていくと同じ人類だけに、それほど異質にはならない。「銀河英雄伝説」で、戦争で新兵器が使われた場合、“まさか”ではなく“やはり”となる場合がほとんどだと記されていたが、本作を見ても納得。何年も経過して映画で見ると、そこにあるのは差異であって、図らずも未知の国への恐怖が、無意味に肥大していたことが浮き彫りになる。 | ||
見方が正しいかわからないけど、人類の可笑しくも微笑ましい、愛すべき血のにじむような努力。少なくとも大量殺人兵器の開発なんかより真っ当な様子でしょ。もうなくなった国(体制の方が正しい?)だから、権力者はアホって描き方までOKなのかな。差異で楽しいのはマーキュリーセブンと同じ訓練をしているガガーリン達。対G装置で耐えていることに、観察しているおばさんが「真の男だ」なんて失笑。 | ||
ガガーリンの親父さんが自分のじいさんに重なって、人類初の宇宙飛行士はド田舎出身で幼少時代は第二次大戦下。1961年の描き方も興味深い。TVが普及する前、人々は基本的にラジオで情報を得ていた。アチラでも普及率は低かった。もっともTV映りの良い大統領が台頭してきている時期でもあり、人々の白痴化がこの後進んでいく。 | ||
それにしても、“宇宙に行く”とはまさに挑戦で、“分かっていないことが山ほどある”ことを当時の人々は肝に銘じていたし、達成の喜びは宣伝を介さずとも人々に伝わったのだ。たとえすきま風が入ってきそうなボストークであっても。ま、国家の機密事項だけに、農村の人は知らないから空から落ちてきたガガーリンから逃げたりして。チョッと「アスファルト」に近いかな? オススメ★★★★☆ |
|
追記:90年代はフェミニズムが思想的に強い時代だったんだそう |
内田樹氏のブログに「エイリアン・フェミニズム-欲望の表象」という論文が載っていて、「ドリーム」との縁を感じる。全部が理解できたわけじゃないけど、読んでみると「エイリアン」のシリーズとフェミニズムは無関係じゃないみたい。もっとも「エイリアン」の登場が1979年で、バッサリ画面から「ドリーム」の主役を排除した「ライトスタッフ」は1984年に公開されている。 | ||
その昔を思想なんて分かりっこない高校生だった私めが振り返っても、80年代には未だ“男を中心にしたマッチョ”映画は人気だった。で、90年代に突入するとシルヴェスター・スタローンが当たらなくなってくる。流れが変わってきたのか、抑圧が働いてきたのか。宮崎駿、ジェームズ・キャメロンだけでなく、押井守とて、とてつもなく強い女が主人公の「GHOST IN THE SHELL」が最も認知されている作品。 | ||
流れが変わる変わらないにかかわらず、今後観賞を予定している作品も「アトミック・ブロンド」、「女神の見えざる手」、「エタニティ 永遠の花たちへ」というわけで、若かりし頃に植えつけられた思想が、自覚しないまま作品選択に影響を与えているのか?でもさ、今さら“男がえらい”なんて通用しないよ、ただ暴力を背景に支配してきただけなんだからさ。 |