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ブレードランナー 2049 |
観賞劇場 | TOHOシネマズ小田原 |
関連テーマ | SF映画 シリーズ 外国人が描いた日本 アカデミー賞 |
今やSF映画が未来を描いていたと感じられたのは、何年前までだったっけ?というくらいテクノロジーが先走って、人間がついていくのにヘトヘトになってしまう21世紀。記憶を外部化し、機械に依存しなければ、数ヶ月前まで自分が何を考えていたかを確認できない。もっとも「オールド・テロリスト」のおかげで、そんなの“気にし過ぎ”なだけって、ちょっと救われている。 |
さて、いちおう区切りというか、再確認というか、私めが持っているオリジナルに関しての昔話をつらつらと記してみます。1982年に登場した「ブレードランナー」はインパクトが並じゃなかった。坂本龍一氏はアルバム未来派野郎の一曲目Broadway Boogie Woogieでセリフを使っている。鼎談集EV.Cafe 超進化論でも触れていて、“神殺し”がテーマと言い切っている。 |
その後は“SF映画の金字塔”が定着し、私めもディレクターズ・カットを劇場で拝んだものだ。ただし、公開当時は不入りで、職場の50代の人に言わせると、「劇場で観たけど、お客は2人しかいなかったぜ」なのだそう。ここが元ビデオ屋として無視できなくて、繰り返し見るのに適しているパッケージソフトが、それ以前の“ヒットの構図”を変えた80年代ならではの現象。パトレイバーもエヴァンゲリオンも該当する。 |
時代は進み、パッケージソフトを扱うレンタル屋どころか、リアル店舗、ショッピングモールすら、今後どうなっていくか分からなくなってきた。そういう流動的で不安定な時期だから、我が国でもああいった選挙結果になったのか・・・、は余談ながら、“右も左も皆目見当がつかない”のが現時点。映画で儲けようとしている人たちとて、かつての図式が手も足も出なくなっているから厄介。 |
そんなネタを任されたのがドゥニ・ヴィルヌーヴで、観賞前はこの人が作品にナニを込めるのかに注目していた。でもさすがにガッチリ製作環境が固められている超大作だけに、“好き勝手に描いている”印象は薄い。ただしホームページを見れば、売り込み戦略は“圧縮された新しい試み”をご提供している(「ブレードランナー ブラックアウト2022」)。監督自身も出張っていて、営業活動はお仕事の一貫。 |
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オリジナルへのオマージュというより、4DX、MX4Dへの配慮でしょう、あの空飛ぶ車は。30年前に新しかったアレは、今や古臭さを醸し出す小道具になってしまった。職場の30代の人に尋ねても、失笑が返ってくるもんね。「フィフス・エレメント」や「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」にも出てきますが、合理的に考えて、あれは渋滞解消のためのテクノロジー。でも今やそれが違った形で実現している。Googleマップで道路状況を確認すれば、渋滞を回避できる。 |
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ロマンもクソもないのが現実ながら、本作を“実現しなかった近未来”を描いた作品として読み取ることもできる。30年前とて“未来はこうなる”として描かれたのではなく、既にあった東京をオリジナルは描いていたのだから。だからさ、ちょっと寂しくなるんだよね、SONYが金出してるもんだから、「ゴースト・イン・ザ・シェル」より日本語が出まくっている(デザインは凄かったけど)。 |
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もっとも新しい作品にできる要素はふんだんにあって、エコシステムが破壊されて、地表を埋め尽くすおびただしい数のソーラーパネルとか、2049年の人類は枯れ木しか知らなかったり、タンパク源を虫に求めたり。「オリーブの樹は呼んでいる」とか「0円キッチン」を観ていたので、ニヤリとしてしまいましたが、画面の外に配されている。強調こそしていないけど、お客さんによってはアピールするって描き方なのかも。 |
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よって“見出す作品”として、やはり何度も見直す必要があるのかもしれない。まさに人によっては面白く、人によってはチンプンカンプン。娯楽としてはあるまじき体裁ながら、「エイリアン:コヴェナント」がそうだったように、帰宅してからオリジナルを楽しんだし。あと「her/世界でひとつの彼女」でやってた、OSと実際のSEXに至る描写はちょっと前進ですかな。でもナニの最中に連絡来たりして。 |
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ネット端末ディバイス=スマートフォンを常時携帯している我々は、既にSF映画で描かれた未来の先を生きている。観賞後にスマホの電源を入れた途端に「明日は21:00から仕事です」とメールが来てため息。いちおう車に乗って移動して、目的地に行くを未だにやっているけど、家に釘付けにする膨大な量のコンテンツに浸っていたら、果たしてどうなるのか。若い人たちは“外で引きこもっている”ように見えるし。 |
閑話休題、待望の監督による超大作だしキャストは豪華。ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォードの新旧共演は看板。ハリソンは「スターウォーズ/フォースの覚醒」に続いて、アイコンの役割って感じですか。ロビン・ライトは年代的にオリジナルのファンだったのでは?「コングレス未来学会議」などにも出てるけど、硬い役職も似合いますな(「誰よりも狙われた男」をご参考までに)。 | ||
ジャレット・レトーは「スーサイド・スクワッド」と「ダラス・バイヤーズ・クラブ」などまずは見分けがつかない変身。でもご注目は“脳内彼女”になったアナ・デ・アルマス、主人公を付け狙うラブになったシルヴィア・フークス(「鑑定士と顔のない依頼人」を再見しなければ)、マッケンジー・ディヴィス(「オデッセイ」)、そしてキーになるステライン博士になるカルラ・ユーリなど、ショーン・ヤング、ダリル・ハンナに負けない布陣。 | ||
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進行する環境の破壊は「不都合な真実2:放置された地球」で確認するとして、今後台頭してくるのは、エコシステムの覇者なのかもしれない。明らかに新種(レプリカント)の胎動も宣言していて、そこを強調すると娯楽にならない。でも絶望ではなく、ハイブリッドが希望をつなぐラストだったのでは。主役のライアンが雪の中で見せる表情がどこか「エクスマキナ」のテレウスにダブるんだよね。 |
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猿であったり、サイコパスであったり、換装用クローンであったり、まともな人類が主役の座を奪われそうになっている作品に、新しさを感じる昨今。その点で規模も内容も違いますけど、「わたしを離さないで」は見ていて損はしないと思う。SFなれど、“たいていの人の目に触れない”進行している現象を、パラレル・ワールドとして観客に提示。強調しなくとも、とっくに身の周りを取り囲んでいます。 現在(10/27/2017)公開中 オススメ★★★☆☆ |
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関連作 |
ブレードランナー ブラックアウト 2022 |
劇場公開と配信が同日で驚いたのは2月の「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち/第一章」で、8ヶ月後には劇場公開前に短編をネットでご披露して、宣伝の一助にしたのがコチラ。似たようなプロモーション手法は2003年、ヒットが期待される「マトリックス リローデッド」の前に「アニマトリックス」というのがあったけど、劇場公開されている。時代が進むにつれ、どんどん期間が圧縮されている。 | ||
で、「アニマトリックス」に参加していた1人が本作の監督渡辺信一郎で、海外でも知られているのか?「マクロス・プラス」はアメリカ人にも受けそうだけど、「サムライチャンプルー」はどうかな?でもこの短編はモロに「COWBOY BEBOP 天国の扉」を思い起こさせる。本作で実験のための戦闘に投入されたイギーは、まさにアチラのヴィンセント・ボラージュ。 | ||
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「ブレードランナー
2049」でブラックアウトと称される大停電は、東日本大震災と原子力発電所の事故を経験した日本人に任せたかったのか、金出しているSONYの意向か。今のところ特撮レベルは「ガルム・ウォーズ」を超えるものはなさそうだから、やはりアニメーションでやってもらうしかないと判断されたのか。来月の「GODZILLA
怪獣惑星」に期待ですね。 オススメ★★★☆☆ |
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