タイトル

関連テーマ 戦争映画

 “熟した2人の静かな熱演に唸る「ヒトラーへの285枚の葉書」
孤独な戦いの勝利者は・・・”

 前回“ウザさ大爆発の人混みをかき分け、劇場に行くなんてもはや考えられない”などとほざいたクセに、翌週にはのこのこ新宿まで来ることになった。これはもう本日予定している作品の力で、「彼女の人生は間違いじゃない」が最優先、次いで再開した新宿武蔵野館を別サイト“映画館と私”に載せるため。じゃあ先に観るコチラはどうなんだ?になりますけど、“時間に余裕ができたから飛びついた”のが正直なところ。

彼女の人生は間違いじゃない

 とは言ってもキャストは保証されています、エマ・トンプソンとブレンダン・グリーソン。エマは「二つ星の料理人」が直近になりますが、ぜひ変わり者を演じた「主人公は僕だった」で楽しんでもらいたい。ブレンダンに関してはここ数年観ていて「オール・ユー・ニード・イズ・キル」「白鯨との闘い」辺りが目立っているかな?息子のドーナルはもっと観ていて「不屈の男/アンブロークン」「スターウォーズ/フォースの覚醒」「レヴェナントけ蘇りし者」「エクス・マキナ」などなど。


 でも、もっと期待させるキャストはダニエル・ブリュールで、データを漁ると「ラッシュ/プライドと友情」から本作まで、けっこう拝んでいた。また既にアレでエマと一緒だったじゃないか、と機械の力を借りると途端に情報量がうざさ大爆発。そんな中で監督のヴァンサン・ペレーズだけはほとんどスルーしている。出演の「愛のめぐりあい」は思い出せても、「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」はキレイさっぱり忘れちゃった。

  監督の腕前がどうこうの話ではなく、“絶やすと世界は途端にヤバくなる”ナチの犯した罪の一つに焦点を当てた作品。時代の進歩ではなく、“忘却のスピードが加速している”21世紀だからこそ、繰り返し観て心に刻んでおく必要がある。ヒロイン1人で成立させてしまう「マイビューティフルガーデン」とは対極に位置しますが、さすがは英国を代表する2人、じっくり魅せてくれました。

マイビューティフルガーデン

 戦争ですから勝っている時でも死者は出る。周囲は浮かれムードながら、“ただの殺し合い”である戦争の本質を、クヴァンゲル夫妻は思い知らされる。そして夫のオットーはヒトラーへの抵抗を開始。働いている工場でも、ペラペラとナチの話をしている“役立たずの追従者”が威張り散らしているとは、今の日本も変わらない。また戦後のドイツとて依然としてそのままだったことは「顔のないヒトラーたち」が描いた。

 ささやかな抵抗とは総統批判を書いたカードを、いろいろな場所に置くというもの。“そんなんで抵抗かよ”ではなく、それほど国全体がナチに毒されていた動かぬ証拠で、“周囲全てが密告者に見えてしまう”時代だったことを描いている。その行為をスリリングに見せる側がダニエル扮するエシャリヒ警部で、確かに切れ者。最初の段階で「95%は回収できる」とはさすが。

 たいていの推理ものだと善玉ですけれど、本作では権力の犬に過ぎない警部。で、権力を握っている連中は、自分でバカだと分かっていて暴力に訴えるしかないナチ。結晶とも言える大佐を「未来を生きる君たちへ」「ヒプノティスト-催眠-」のミカエル・パーシュブラントが熱演。サイコパスも避けるしかありませんが、この手のバカも相手にしないのが一番。

 とは言っても組織人である以上、切れ者警部もうすら馬鹿の無理難題に屈して、無関係の人間を犯人に仕立て、自殺に追い込むことになる。今の日本でも至る所で繰り返されているんでしょう。なお285枚配って“たった18枚が未回収”は示唆的です。店の無料入会の券を付けたチラシをポスティングしたことがありまして、140,000枚配って入会者は3桁に達しなかった。“たったそれだけか”と落胆するか、それとも・・・。

 「良心をもたない人たち」は“25人にひとりはサイコパス”と記し、「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」は“10人に6人はえらそうに見える権威者を目の前にしたとき、嫌な命令にも従う傾向がある”と描いた。Wikipediaを参照すると反タバコ運動はヒトラーが始めたんだそうで、「コンタクト」を見ると、宇宙人が傍受した最初のTV中継には総統がクッキリ写っていたりして。


 昨今の若い人で気になるのは、ひょっとすると嫌煙運動を通して“差別の味を覚えた人”が混じっているような。“ちくり屋”(スノーデンの真逆に位置する人)もいて、クドクドあれが悪いとかつまらん話を拝聴するたび、うんざりさせられる。嫌な気配はなにもTVニュースだけが漂わせているわけではないのだ。そうそう、ナチも進歩していたようで、1945年までギロチン使って死刑執行とは恐れ入る。副次的ですけれど、“見せしめ”が好きな連中はナチ臭いわけね。

現在(7/25/2017)公開中  オススメ★★★★☆




ヒトラーへの285枚の葉書


ヒトラーへの285枚の葉書

その他の関連作

ハンナ・アーレント  ヒトラー最期の12日間  帰ってきたヒトラー  ディファイアンス

黄金のアデーレ 名画の帰還  誰よりも狙われた男  アサシン・クリード

← 前のページ   次のページ→



       top

 

 

 

inserted by FC2 system