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残像

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 “歴史の中で抹殺された画家に光を当てるのも映画の果たすべき役割  「残像」
加速する今、アンジェイ・ワイダの遺した重要なメッセージ”


  先週の「ダンケルク」は戦争スペクタクルでぶっ飛んだ。と同時に第二次世界大戦の初期段階を描いていて、ドイツは結果的に“不屈の兵士たちを生み、敗北したのだ”と自分の中にある情報を更新することになった。もっともオリヴァー・ストーンのドキュメンタリー「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史」が伝えているのは、かの大戦にはソビエト連邦という要素が欠かせず、「ディファイアンス」なども参考になりますが、やはり本作の監督アンジェイ・ワイダの「カティンの森」も見ておかないと。

 大戦中のポーランドに関して、教科書で触れられるのは“最初に侵略された国”のみ。「ソハの地下水道」のおかげで、その渦中に起こったことはある程度垣間見られますが、その後はまたサッパリとなる。以後「アヴァロン」に至るまでがスッポリ抜け落ちた国。映画通でしたらワイダ監督の作品は見ていて当たり前でしょうけれど、私めはどーも不勉強なもので、まったく無知なまま。

 で、かの大戦に関して毎年観ていて情報は増し、昨今は“殺した人数でヒトラーとスターリンはどちらか上か?”とまで思うようになった。もっともそのことを職場の同僚(50代)に話すと、「毛沢東の方が上だ」と笑われ、堰を切ったように持論を展開される。なるほどね、「レッド・バイオリン」くらいでしか知らないけど、国内に変革の嵐が吹き荒れると、犠牲になる人は必ずいるし、あの国は桁が違う。とは言っても彼はIMAX未体験、皆さんホントに映画館から遠ざかっておられる。

 映画館に行くという習慣も人によっては潮時があるのかもしれない。で、超大作ではなく、名画座(アミューあつぎ映画.comシネマ)に観賞の場をシフトし始めている年頃ですので、「TOMORROW パーマネントライフを探して」で初めて訪れた川崎市アートセンター アルテリオ映像館に再び来ることになった。雨がシトシト降っているのもあの時と同じだったりして。

わたしは、ダニエル・ブレイク

 始まると配給会社のアルバトロスのロゴが出てきて、スクリーンの大きさも似たような、新宿武蔵野館で観ているような気になった。大雑把に「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」「わたしは、ダニエル・ブレイク」を合わせた内容。ただし、冒頭に不吉なスターリンの垂れ幕が出てくることが示す通り、命懸け。“自分の忠誠心を押し売りする”ような連中が出世する組織体=社会主義国と芸術が相容れるわけはない。

 主人公のヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ教授は片手片足というハンディがありながら、芸術に対して真摯に向き合っている人。温情の人などではなく、知的好奇心がいっぱいの若者が後をついてきちゃう本物。劇中この人の講義があって、ちょっとだけしか分からないけどストレートだ。ちょっと「ハンナ・アーレント」「アワーミュージック」に出てきたジャン=リュック・ゴダールを思い出したりした。

 それにしても全体主義とやらは恐ろしい。言いなりにならないと配給券すら取り上げられて、飢え死にするしかないんだもんね。社会主義とドップリ堕落しきったコチラ側とどちらが良いのか?「グッバイ、レーニン!」だとケバイ世界が押し寄せてきて、「ブランデッド」を見ると無彩色だったはずのロシアも宣伝看板だらけに・・・。広告看板とは程遠い、劇中披露される彼の作品はまさに美術品に見える。

 女性の描き方も注目に値する。ああいう体制だから芯が通っているというか、根性入ってます。教授の本を代筆しているハンナは美人だし、ナニな関係に発展か?とはケバケバ思想の邪推で、まさに同志って感じ。娘のニカはもう筋金入りというか、両親は離婚しているのにナヨナヨしていない(「やさしい本泥棒」も似ているかも)。母を看取り、父を気づかい、力強く生きている。それだけにあのラストはね、オッサン涙してしまうのですよ。

ゴースト・イン・ザ・シェル

 主義とやらが違うと、互いを全否定して屈服させようとする力が働くのでしょう。少なくとも質素どころか、実に貧乏臭い社会主義はごめんこうむる。とは言っても、「ブレードランナー」「ゴースト・イン・ザ・シェル」が描いてますけど、宣伝看板で埋め尽くされた都市は狂気の沙汰だ。冒頭に草原でスケッチしているシーンがあって、目に優しい色彩の中で生きるのが一番かも?檻に入りたがるのは勝手だけどさ。

現在(9/16/2017)公開中 オススメ★★★☆☆
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