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ディバイナー 戦禍に光を求めて

  ディバイナー 戦禍に光を求めて

 

 俳優の初監督作品、去年はライアン・ゴズリング「ロスト・リバー」があって、50代のベテラン、ラッセル・クロウもついにデビュー。そうねぇつらつらと思い出してみるとジョージ・クルーニーは定期的に撮っていて、ベン・アフレックも公開されたらまず行くことになる。またトム・ハンクス「LIFE!」のベン・スティラーも見逃せない実力者。

 

 で、オーストラリアの先輩格だとメル・ギブソン(「ブレイブハート」)がいて、昨今のニュースは「マッドマックス/怒りのデスロード」がアカデミー賞を席巻といったところですか。ぜーんぜんまとまっていない情報の断片だよね。でもいちおう書いとかないと、ただ漫然と過ごすことになる。時代の流れが早いことだけは身に染みて、ズルズルと最悪の事態を招かないよう注意を喚起する作品は貴重。

 

 アンジェリーナ・ジョリー「不屈の男 アンブロークン」で第二次世界大戦、本作のラッセルは第一次世界大戦時のトルコ、ガリポリの戦いを描く。もっとも中心は、戦死した息子を故郷に返すため、かの地を訪れる父親の物語。宣伝のために存在する、TVのニュースショウで取り上げられることは結構多いですけれど、掘り下げて人々に訴える力は映画の方が勝る。

 

 ハッキリ言って、“人々に訴える”方が優先され、映画の出来具合は評価されないかも。それでも私めにとってはとても勉強になったし、記憶に残る得難い小品。中身は違いますけれど、今や見ることが出来ない「ワールド・アパート」なんかが近い。ただし、戦死した兵士を探す父親の悲痛さだけに焦点が絞られておらず、副次的にトルコに関しても知る契機を作る。

 

 ファティ・アキンのドキュメンタリー「トラブゾン狂騒曲」は今のかの国を知る映像資料ですけれど、ちゃんと20世紀初頭と変わらない建物などが残っている。「009 RE:CYBORG」のコメンタリーで神山健治も触れてますけど、いろんな宗教、民族が混じり合っている国。そこに大英帝国が版図を広げるべくやって来て、オーストラリアもニュージーランドも巻き込まれてしまった時代なわけですね。

 

 前の日に見た「屍者の帝国」でも描かれますが、19世紀の末から20世紀になっても戦争に明け暮れてないと、帝国って存続できないものか。我々庶民にとっては迷惑以外の何物でもない。多くの人々は戦死した息子たちを諦めなければなりませんが、ラッセル演じるジョシュア・コナーには特技があって、それがタイトルにもなっている。原題のTHE WATER DIVINER=“水脈を探し当てる男”の方が良かったような気もする。

 

 彼の持つ特殊能力のおかげで、辛い物語も多少は息苦しさから解放される。もっともこの能力の持ち主が出てくる「エル・スール」も戦争に関係してしまうんですよね。救われるのがジョシュアが宿泊するホテルの女主人と息子の部分なんだけど、オルガ・キュリレンコも「007/慰めの報酬」からあっと言う間にお母さんとは。「スパイ・レジェンド」の時とは別人。彼女に関しては「故郷よ」がなかなかでしたけれど。

 

 味方のサボタージュに悩まされても、敵の将校の助けを借り、なんとか目的を達する父。でもサブの物語として、「リスボンに誘われて」のテイストが散りばめられているのが救いのラッセル・クロウ初監督作品。もっともストレートで効果的な反戦映画は「カティンの森」でしょう、でもこの焦点の当て方は宗主国にはできないもの。これは至近に迫った我が国が傍観できない重要なポイントです。

 

 “人間は戦争をしないと生きていけない動物なんだよ”などというたわ言は聞き飽きた。“戦争しないために強力な武器が必要”などという詭弁にもうんざりだ。もちろん“命以上の価値がある”説と“命に勝るものはない”説を交互に繰り返して、戦争を継続してきたのが人類史かもしれない(「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリー談)。だからこそ70年間無縁でこれたのは奇跡だし、そう文言に刻んだ憲法は武器そのものです、再確認しました。

 

現在(3/3/2016)公開中
オススメ★★★☆☆

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関連作

  屍者の帝国

 

 「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁」の余波は継続しているみたいで、関連作に相応しいんだけど、帝国という代物がしょっちゅう戦争している動かぬ証拠でもある。大英帝国を米帝に置き換えれば、21世紀に起こりそうな事もある程度予想できるかも。また19世紀の帝国にビクター・フランケンシュタイン博士の死体蘇生技術が開花し、全世界に波及は有り得ないけど今日的なテーマ。

 

 時制をチョッと前にした「プリディスティネーション」が上手く機能しているし、まだ確定していないテクノロジーをうかうか使うとズッコケる公算は大きい。で、朽ち行く先進国の関心事はアンチエイジングだから、ニーズが合致していて、「コングレス未来学会議」「ジュピター」と出揃っている。日本の小説家もちゃんと今を分かっていると世界に胸を張れる作家伊藤計劃。

 

 「ハーモニー」からこの人を知ることになりましたが、亡くなっているのはやはり惜しい。ちゃんと商用の要件も満たしていて、派手なアクションもスリリングに展開していく。もちろんその中に呆れられない情報もタップリ込められている。ラザロという死体を兵士に改造は神山健治「009 RE:CYBORG」で描いた。標的殺人(「ドローン・オブ・ウォー」)の次はこの方向に行きそう。

 

 TV視聴者の為にある戦争ショー、そこんところはムカムカしますが、予め見ておくと後の備えになる。全編文学的オマージュで満ちていて、既にジャンル名がある。Wikipediaにはスチームパンク、パスティーシュ小説って書いてある。「リーグ・オブ・レジェンド」がまさにそうで、「アイ・フランケンシュタイン」などグラフィックノベルが手を着けていたわけだ。しかし忘れちゃあいけません、和製でも「帝都物語」っていう傑作があるんですから。

 

 正気を保つため、現実的なキャラ=フレデリック・バーナビーがいてホッとする。「楽園追放 -Expelled from Paradise-」のディンゴみたいにね。わざわざ地獄のフタを開けることないだろって人は配置していないと。もちろん主人公の名前はジョン・ワトソン、当然ラストは「やはり、そうきたか!」で締めくくられる。エンド・クレジットの後までお楽しみです、ぜひご覧になってご確認を。

 

 タイトルが過激と思われているのか、〈Project Itoh〉の第3弾「虐殺器官」は公開が延期になってしまっている(3/5/2016現在)。「シドニアの騎士」も第二期で終了してもらっては困る。「ラストワルツ」で指摘されているけど、日本製アニメーションは海外でブームになどなっていない。しかし需要があることは、働いている倉庫で確認している。逆輸入された実写日本映画のBlu−rayは一つも見たことがないけど、アニメは棚のあちこちにあります。
オススメ★★★★☆

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