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不屈の男/アンブロークン

  アンブロークン 不屈の男

 

 ホントにご無沙汰のアンジェリーナ・ジョリー。すでに監督作は2本目、ただしコーエン兄弟が脚本参加、ロジャー・ディーキンスが撮影担当となればグッとランクが上がり、じっとしていられなくなる。とは言っても21:00から始まる私めの仕事は終わるのが6:00。それから寝ないで東京まではるばる来ないとお目にかかれない。新宿バルト9で「ザ・ガンマン」の後は、渋谷のシアター・イメージフォーラムに直行。

 

 このミニシアターに来るのは「四つのいのち」以来だから5年近く経過している。渋谷のこの辺も変わったなではなく、眺めている私めの立ち位置はずいぶんと移動しております。昨今は若い人に指南されつつ、21世紀を息も絶え絶えに生き延びようと努力の真っ最中。所有している本を“自炊”している毎日なので、退屈どころか忙しくもワクワク。とは言っても映画がやはり優先する人間です。

 

 わざわざココまで来なければなりませんでしたが、この作品をマスコミが無駄に取り上げなくて一安心。どーでもいい騒ぎが起こって観られなくなったら台無しになります。もっとも中身は旧日本軍が悪役として登場しますから、態勢はアウェイ。「レイルウェイ/運命の旅路」はまだ冷静でいられましたけど、「ザ・コーヴ」のようになったら辛くなりそう。

 

 もっとも作中“日本を悪く描く”部分はあくまで1パートに過ぎません、タイトルが示す通り、不屈の男の生きざまを刻んだ、偉人伝スポ根方面の正攻法に描かれた1本。イタリア移民の主人公ルイ・ザンペリーニは町で尊敬される一家のはみ出し者。ところが足の速いことを兄貴が気づいて、5000m走でオリンピックに出場。出たのがハーケンクロイツ=鈎十字はためくベルリン大会。

 

 次は東京だと思っていたら第二次世界大戦が勃発。この辺の歴史をTVはちゃんと紹介して人々に知らせているのだろうか?無知な私めは存じ上げませんでした。軍隊に入って敵の基地に爆弾を投下する任務に就いたルイ。爆撃機に関しては「パール・ハーバー」より抑えめなれど十分で、雰囲気は当時をきっちり再現していると思う。ただし命からがらの任務ではなく、気楽なはずの救出作戦で墜落。

 

 なんとまたまたサバイバルですよ、「白鯨との闘い」「オデッセイ」に続いてさすがに食傷気味、しばらくはご遠慮したい。もっとも墜落して生き残ったパイロットたちがどうなったかを描いた作品は確かにない。過酷です、準備してたわけじゃないからボートの上には食い物なんてないし、戦争中だから敵に見つかれば命なんてない。この部分で役者さんは気の毒なくらいやつれていく。

 

 ルイを演じたジャック・オコンネルは知りませんでしたが、「アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜」「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」で知っていたドーナル・グリーソンは見たこともないくらいガリガリに。ただ彼らに向ける監督の視線は女性ならではという気もします。「ハート・ロッカー」のキャスリン・ビグロー、「ある愛の風景」のスサンネ・ビアとか。

 

 漂流の果てに日本軍の捕虜になると、もっと過酷な運命が待っている。ここからアウェイの状態で辛いんですけれど、否定できない。というのは非人道的な結晶である渡辺軍曹は、私めが嫌というほど見てきた“日本人の中に必ずいる種”だからだ。演じたMIYAVIは凄い。勝手に「俺とお前はトモダチ」などとたわけたことを抜かす…。まさに「秋刀魚の味」で口にされる「バカな奴らが威張らなくて」のバカそのもの。

 

 軽蔑の対象でしかないバカどもが威張り散らして、平気で今のイスラム国と変わらないことをしていた事実から目を背けるわけにはいかない。知っておかないと後でひどいしっぺ返しを食うし、身の回りにいつこんなバカに変貌するか分からない輩は満ち満ちている。ただどーしても爆撃を受けている東京の部分には“ざまーみろ”とはならなかったんだよね。実際に私の母親はあの中にいたんだから。

 

 副次的ですけれど、大森や直江津に捕虜収容所があった事実は勉強になった。また日本の描写が“おかしい”とも感じるけれど、金のかかったアメリカ映画、当時の写真映像など資料はたっぷり集めて作りこんでいるから、ひょっとするとああだったのかも。というのは空襲で死なずに済んだ私めの母親は「新宿にはタヌキが出たよ」などと言っていたくらいだから。

 

 ラストにこのルイが本当の意味で不屈だった実際の映像が披露されていて、単純に日本批判の映画として片づけるのは狭量というものでしょう。外国人が描く日本は辛いこともあるけど、後の糧になる。同じくランナーが主人公の「マイウェイ 12,000キロの真実」もそうだったし、「太陽」も勉強になった。もう少し公開規模が大きくても良さそうだけどねぇ、USJの系列会社が作っているのに。

 

現在(2/9/2016)公開中
オススメ★★★★☆

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