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トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

  トランボ ハリウッドに最も嫌われた男   

 

 第二次世界大戦について分かってない自分を「いしぶみ」で思い知らされて、3日後に好きな映画の事とてまるで無知だよな、と痛感してしまう偉人伝映画方面。“おすぎのビデ・シネプレビュー”でも映画ファン必見とのお墨つき。日比谷のシャンテでも上映しておりますが、TOHOシネマズららぽーと横浜での観賞になりました。通常料金でプレミアムシートだからコチラの方がお得(観賞の仕方は星の数ほど)。

 

 データ的には監督がジェイ・ローチというところに、意外さと納得がない交ぜ。「オースティンパワーズ」の人で「ボラット」「ブルーノ」も製作している。下品な笑いならお任せなれど、シリアス作なんて…。しかしながらお笑いの人ほど、世の中をシビアに見ているのは「LIFE!」のベン・スティラー、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のアダム・マッケィが直近の例として証明している。

 

 それにしてもこのタイトル、「ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男」とモロに被ります。むしろハリウッドから嫌われた方が、傑作撮れるのでは?と意地悪にも思います。だってさ、知ってるだけでもチャーリー・チャップリンも「おとなのけんか」のロマン・ポランスキーもでしょ。ヒッチコックだってスタジオと揉めたりしていたし・・・。

 

 「古典見ないでどうすんの」と説く押井守「仕事に必要なことはすべて映画で学べる」でも本作のトランボ氏は触れられていますけれど、アメリカ映画を知るうえで“赤狩り”は重要なキーワード。蓮實重彦氏の映画狂人シネマ事典には非米活動委員会についてもっと突っ込んで書かれている。忘れていましたけれど、この時期のことは「グッドナイト&グッドラック」も描いている。

 

 大雑把に本作は2つの作品を思い出させる。ハリウッドを追放されたが帰還するチャップリンを描いたのが「チャーリー」で、世間を焚きつけてエライ人々が個人を抹殺した史実は「声をかくす人」にバッチリ刻まれている。マスコミのばらまくデマでエライ目に合うのは「ブリッジ・オブ・スパイ」でも・・・。アメリカ共産党とて対ナチから発生したと冒頭に出てきますけれど、世間様って恐ろしい。

 

 で、“よく分かっていない世間様”をだまくらかして、味方につけて偉そうなのが非米活動委員会。グルになって映画人を血祭りにあげる評論家ヘッダ・ホッパーをヘレン・ミレンが実力全開で演じている。「黄金のアデーレ 名画の帰還」と正反対なれど、この悪役はやりがいあったでしょう。何年も経って人々から軽蔑されるって気の毒。ネットで斜め読みすると、大したことない人なんだよね。

 

 ただ何年経っても人々が称賛を惜しまない当の本人ダルトン・トランボ氏は、「波乱万丈ですな」などと人から言われたら張り倒すでしょう。まっとうな信念を曲げないってだけなのに、よく言って迫害されますから。“仲間を売らなかった”ことで刑務所行き、娑婆に出てきても仕事はさせてもらえない。「GODZILLA ゴジラ」くらいしか記憶してませんが、演じるブライアン・クランストンは素晴らしい。

 

 大手スタジオがダメならB級映画専門の会社に売り込むトランボ。もっともその間に友達の名前を借りて「ローマの休日」を世に出しちゃう。タイトルを同席している娘と決めるところはニンマリ。成長した娘役がエル・ファニングで、奥さん役のダイアン・レインともども、この人を家族が支えたドラマとして成立させている。奥さんが夫に訴えるシーンは「レイ」「大統領の執事の涙」などにもありましたが重要。

 

 TV中継のアカデミー賞は実に滑稽で、受賞者本人が家で見てるんだもんね、それも2回も。ただしこのトランボ氏にとっては一緒に見ている家族こそ宝で仕事仲間。家にカーク・ダグラスとオットー・プレミンジャーが乗り込んできて仕事の催促するのも重要なシーンで、進行中の作品は「スパルタカス」と「栄光への脱出」。2作は彼の家から生み出された。

 

 本作を通じてジョン・ウェインはちょっとアレな人になりましたが、お気に入りのジョン・グッドマンはもっと好きになった。B級専門の社長がハマっていて、「うちはB級専門だ、関係ねぇ!」と言って偉そうな協会の手先を追っ払うところなんて痛快。またトランボ氏のキャラクターを明確にする人物として肺がんで亡くなるアーレン・ハードが出てきますが、彼の“作品に何かを込めよう”とする傾向は最近の作品に多々見られる。賢い人の映画よりダルトン・トランボのような天才が今の映画には必要。

 

現在(7/22/2016)公開中
オススメ★★★★☆

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  今を去ること20年くらい前、レンタル屋の棚には必ず置かれていた基本在庫。もっともそんな概念など何処かへ消え去ろうとしている21世紀、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」経由でもいいから見た方がお得な傑作。なんと「二十四の瞳」「ゴジラ」と同じ年に公開されている。背景には“赤狩り”が進行しているというのに、アメリカ映画はロマンティックコメディを提供できたのだ。

 

 というのはどーでも良くて、あんな目に合わされた脚本家がどーしてこんな面白い話を思いついちゃうのか。連綿とこの手のお話は作られるでしょうけれど、ロマンティックなだけでは超えることができない。最近はサラ・ガドンの「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」があって、男が見るなら「ノッティングヒルの恋人」なんだけど、ギャグが入魂なのよ。

 

 特に薬でメロメロのオードリー・ヘップバーンをグレゴリー・ベックがアパートに連れていくシーンは爆笑です。TVのコント番組が継承しているけど、やたら説明していることがよく分かる。ジョン・ランディスだって好きなのはアリアリで、「星の王子ニューヨークへ行く」でパクッてた。“永遠の名作”とレッテルを貼るとこの作品を殺すことになる。中年目線でもとびっきり面白いコメディでして、断然オススメ。
オススメ★★★★★
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