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スポットライト 世紀のスクープ

  スポットライト 世紀のスクープ

 

 トム・マッカーシーとのお付き合いは2009年の「扉をたたく人」から始まる。2012年には「WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々」があって、去年は「靴職人と魔法のミシン」があった。7年間で4本この人の作品を観てきて、本作はエポックになった。インディペンデント・スピリット賞だけでなく、アカデミー賞も獲得でより広い層にアピールする内容になっていると思う。

 

 最初から“我々の隣人に起こること”を描いてきて、今回もその目線は変わらない。この監督が好きな最大の理由がそれで、過度な芝居も大げさな仕掛けも皆無。人によっては、起伏に乏しい映画に見えるかもしれないから、チト心配になるくらい。けっこう入ってたんだよね、21:15開始のTOHOシネマズ小田原。でも出てくる役者たちは、私めにとっては申し分のない豪華さ。

 

 映画の成否は全て彼らにかかっているといっても過言ではなく、見事にうまくいった。マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムス、マイケル・キートンの顔はひょっとすると知られているかもしれない。それぞれ「はじまりのうた」「アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜」「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の主演だからね。でも私めの場合、リーヴ・シュレイバーが出てきた時に傑作が決定した。

 

 「完全なるチェックメイト」とは別人に変身している彼が演じるのが編集局長なんだけど、各欄の責任者に指摘しているシーンからこの人物が切れ者だと分かる。「マネーボール」っぽいんだけど、率いる者がしっかりしていると人材も生きてくる。リーヴだけでなく、こいつぁいいぜと印象的なのがジョン・スラッテリーとブライアン・ダーシー・ジェームズなんだけど、ぜひその辺にもご注目を。

 

 そしてもっと嬉しかったのがスタンリー・トゥッチ。確かに脇なんだけど、予告編では目立たず定番の役かと思いきや、地味にいいトコ持って行った。さすがは役者もしているトムだけに、起用法も心得ている。俳優としては「ピクセル」に出てたらしいけど、役者としてこの人を認識したことないんだよな。いずれジョン・ファヴロー(「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」)みたいなことも期待。

 

 物語が2001年を描いているのも重要で、9.11があって、人々の思考停止が起こって、結果としてより社会状況は悪化の一途をたどった合衆国。「扉をたたく人」などはその現象の一端を垣間見せるんだけど、大量の情報に上書きされて、とっとと忘れてしまう我々にこの事件を再認識させる契機も作っている。“権威が不正の上に成り立っている”だけでなく、教会のシステムに幼児虐待を誘発する構造が潜んでいることを示唆している。

 

 あえて強調することはない、「ラストワルツ」で村上龍氏は小説とは“本質的な疑問を提出する表現だ”と記しているけど、映画は映像の中に情報を込めて観客に提示するメディア。“いたずら”とTVショーでは報じられるけど、正確には性的虐待。あえて連呼する必要はないけど、報じられたら受け手のコチラは覚えておかなければならない。またインターネットが普及している真っ最中(「LIFE!」をご参考までに)であることは、画面に映るモニターの古さで判別できる。

 

 記者たちが山のような資料から犯罪を暴くという過程そのものが、今後は説得力を持たなくなってくる。本作でスポットライトチームがやっている作業は、今後もっとスピーディになる。司法手続きやらなにやら、今まで特権の側にいてやりたい放題だった犯罪者(TVに映っている人を操ってる連中)に先が無いのは明るい兆しか、それともやはり狡猾に立ち回って人々を支配下に置くのか。

 

 予告編でも使われている「暴かなかった責任は誰がとるのか?」というセリフは大人が肝に銘じておかなければならない。作中でも「たまたま異常者の犠牲にならなかっただけ」と口にされるけど、これらのセリフにトム・マッカーシーの本音がある。私めより一つ年上のこの人、五十路間近の責任を果たしている。「ルーム」「ボーダーライン」ときて3作連続で×5.。

 

 それにしてもマイケル・キートンは老けましたな、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」より枯れ方が良い。「ザ・ペーパー」でロバート・デュバルに食ってかかっていたのは何年前だろう?同じようなことを、私めと同じトシのマーク・ラファロが決めてくれるのがまた嬉しい。今月は映画の醍醐味を再確認させてくれるものばかりで、まだまだ後半が楽しみになってきた。

 

現在(4/16/2016)公開中
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