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シング・ストリート 未来へのうた

  シング・ストリート 未来へのうた

 

 シネコンは夏の稼ぎ時が始まっているみたいですね。しかしながらスクリーンを占めている大作2本はパスしてしまった。オリジナルを観ているにもかかわらず、トシのせいで身体がついていかなかった。ところがジョン・カーニーの新作はスルーできません。「はじまりのうた」からあっという間に1年経過、嬉しいけど忙しい。レンタル屋に行くとファティ・アキンの新作「消えた声が、その名を呼ぶ」か並んでいたりして、あれもこれもと見境ないと・・・。

 

 TOHOシネマズの宣伝には辟易で、109シネマズ湘南だったらと思いきや、似たような感じ。もっとも文句をつけ始めたら、爺さん化に拍車がかかってしまいますので、少し引いた姿勢で眺める。“稼いでくれる大作”がなかったらシネコンは成立しない、上映回数が少ないインディ系だって、それに合わせるのは大した手間ではない。首都圏のぎゅうぎゅう詰め列車に乗っている人々の運賃で、空間占有率からいったら極楽のローカル線が運営されている・・・、とらえ方次第です。

 

 さて予告編から察せられる通り本作は音楽映画、それも舞台が1985年というところがミソ。現在私めは48歳ですが、当時は主人公と同じく17歳。青春がよみがえるではなく、出てくるアーティスト名で知らいない人が一人もいない。DURAN DURAN、A-ha、Depeche Mode、HALL&OATESなどなど。たぶん今の若い人には「Sex Pistolsが上手いか?Steely Danになってどうする」というセリフは意味不明でしょう。

 

 自慢にもなりませんが、このたとえ話をオジサンはこんな感じに訳します。「売れてるけどパンクの奴らは上手いか?凝り性の激うまバンドになってどうする」てな感じ。そうそう「ロボコップ2014」のエンディングテーマClashの I Fought The Lawもかかってましたね、でも肝心なグループはDURAN DURAN。離婚の危機が迫っている家のTVには彼らのヒット曲RioのPVが流れている。

 

 80年代の音楽シーンで重要なのはこの“映像を音楽が伴奏するのではなく、音楽を映像が伴奏する”手法(「エレクトリック・ドリーム」の日本版DVD出ないかなぁ)。人によっては“ロックは死んだ”時代ですし、派手なアホらしさは加速中(「ロック・オブ・エイジズ」)。でもさ、なんだかんだ言っても“モテたい”という根性は、音楽やる場合最大の動機で、このコナー少年も一目ぼれのラフィーナに接近するためバンド結成。それしかないよ、楽曲の追求なんて大人になってから。

 

 バンドが出来上がっていく過程は「ザ・コミットメンツ」に近くて、ニヤニヤ(「FRANK -フランク-」も合わせてどうぞ)。それにしても「17歳の肖像」の時も唖然としましたが、高校生のくせにこの子たちスパスパ吸ってますなぁ。で、兄貴に“オリジナルでいけ”というアドバイスをもらったコナー少年はせっせと作曲。そして同時にPV撮影を敢行で、お目当てのラフィーナ嬢を巻き込んでいく。

 

 日本の場合未だそこまではいってなくて、TVKで流される日本人アーティストのPVもこの子たちが撮っているレベルだったと思う。アイルランドと日本の違いは音楽における時差だけでなく、家庭の事情もある。父親が失業なんて話は30年前の日本には聞いたことがないし、離婚に関しても今とは認識が全然違う。基本的に音楽映画にして兄弟の物語なんだけど、今回のジョン・カーニーは今までとは違っています。

 

 コナー少年の姉弟はちょっと「トイレット」を連想させるんだけど、そういった背景を込めて描く今回のジョンは、次の段階に進んだのかな?引きこもりには違いない兄貴とコナー君の絆が素晴らしく、「リトルダンサー」などもオススメなんですけれど、“家族みんなが仲が良い”と描くより説得力がある。個別化が始まった時代でもあるんだから。

 

 なお、ラフィーナ嬢を演じたルーシー・ボーイントン、監督の好みがありありと出ている(ぜひ「ONCE ダブリンの街角で」をご覧ください)。化粧でマドンナ風にもなるけどスッピンは10代の女の子。予想していた「あの頃ペニー・レインと」の方面にならなかったのは、この娘の透明感のある美貌が一役買っていたのかも。ジョン・テイラー(DURAN DURANのベーシスト)風になっていきますけど、コナー少年のフェルディア・ウォルシュ=ピーロ君ともども“映画で見たことない人”ってこの手の作品には重要。

 

 コナーとラフィーネが目指す80年代のロンドンには高橋幸宏氏も滞在していたんだそうで、彼の著作「心に訊く音楽、心に効く音楽」は実態をうかがい知る資料にして、40代の方々にオススメ。ロックは死んだかもしれないけど、音楽そのものが絶えたわけではない。コナーの憧れはDURAN DURANなれど、実際には違った楽曲を演奏することになる可能性だってある。そういった感じを次回のジョン・カーニー作品には期待したいですね。

 

現在(7/14/2016)公開中
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 「シング・ストリート 未来へのうた」のコナー君はTVを通じて、ロンドンから発せられる音楽シーンを知るわけですけれど、高橋幸宏氏は実際そこにいた。「ゲットラウド」を観るとU2のジ・エッジも音作りにかなり入れ込んでいますけど、80年代の音楽シーンにYMOは欠かせない。“DURAN DURANよりYMOの方が上だ”というのはナンセンスで、かつてデュランの面々がJAPAN、YMOの影響を受けたという記事を目にしたことがある。

 

 著者は音楽家であるから理路整然とした印象はないかもしれないけど、ゴーストライターが書いてない証拠。YMOの面々に関するエピソードだけでもオッサンは狂喜してしまいますが、この人の創作活動はノン・ストップだ。けっきょく少年時代に“身体に染み込んだ音”は一生ものみたいで、SKETCH SHOW、pupaも繰り返し聴いている。そしてたまたま倉庫で見つけたMETAFIVEが最近のお気に入り。
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