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セルフレス/覚醒した記憶

  セルフレス/覚醒した記憶

 

 高校生も観に来る「グランド・イリュージョン/見破られたトリック」の後はターセム・シン監督作。ただ予算は控えめなれど、中身はコチラの方が良いです。もっとも48歳のオッサンだからこそで、ちょっと人生の苦味を知らないと無理なんだよね。「ザ・セル」から数えること16年のお付き合いとなりましたシン監督、“ヴィジュアル重視の人”というイメージでしたが、今回は違った趣向できました。そういえばヴィジュアル部分の心臓=石岡暎子亡き後だった。

 

 テーマは前回の「白雪姫と鏡の女王」から継続してモータル/イモータルで、アクションを展開、常連客を飽きさせないのはさすがです。そして現実味を帯び始めているアンチエイジングのテクノロジーを絡めている。「NEXT WORLD」を読むと本気で取り組んでいる人がいるし、A.I.と似たような感じで、もう実現されちゃってるのかも?という気もする昨今だけに、お話には説得力がある。

 

 “余命残り少ない大富豪が若い肉体を得て蘇る”は予告の通り、年寄りがベン・キングズレーで、若い方がライアン・レイノルズという配置も納得の布陣。ベンはガンジーを演じているだけに威厳も品も備えている。彼が若返ったという想定の人物を演じるわけだから、ライアンも芝居に気合が入ります。既に「白い沈黙」ではお父さん役に無理がなかったし、何度も見ている「黄金のアデーレ 名画の帰還」もヨカッタ。

 

 そういえばライアンは幽霊になって恋人を見守る役もやってたんだよな、数を見てくると見分けがつかないではなく、トシのせいで記憶が整理しきれなくなっております。それほど当然のように誰にも老いというのは訪れるものだし、抗いたくなるのも人情なんでしょう。銀河王朝だって関心事はアンチエイジング。

 

 で、特権階級だけに享受できる恩恵なれど、映画ですから当然ウラがある。たぶん昨今の事情を知っている方でしたら、新品の肉体はアッチ方面の技術かと思いきゃ、やっぱりコチラの変形バージョン。クリックはぜひご観賞後に。ベンが“マークの中に入っている男ダミアン”を演じなければならないのも肝心で、若返って生を謳歌する利己的な金持ちじゃあ「フリージャック」と変わらない。

 

 中身は建築家として成功した鋭利な頭脳の持ち主、肉体は戦闘能力を兼ね備えた兵士というのはアクション映画丸出しで、フォーカスフィーチャー社製とも思えないほどだけど、昨今この手の切れ味鋭い品から遠ざかっていたので新鮮でした。“残された兵士の家族”という設定は「ウォーリアー」も並行観賞にオススメなんですけれど、カーチェイスが「ナイトクローラー」バリでなかなかに魅せる。あと小道具で火炎放射器が出てきて、ラストで使われるシーンなんですけれどチョッと「コンスタンティン」に近かったりする。

 

 既存の映画の範疇を出ることはこの手のインディ系でもなかなか難しいし、“信じられないくらいの数”を観賞可能な昨今の視聴環境からすれば、“新しく見える作品”はほとんどない。加えて時代がホントにSFそのもので、未来を描こうにも不確定要素で充満している今となっては、娯楽として成立し、それを支える説得力のある設定を持ってくるのは製作陣の腕の見せどころ。

 

 その意味では十分成功しているし、文句ナシに×5です。テーマは若返りなれど、物語はちゃんと着地、感動作として成立させている。理解し合えなかった父と娘は絆を取り戻し、残された兵士の妻と娘には幸せが訪れる。悪と断ずるのは誤りなれど、最新医療に携わっている人たちは、容易に転がり落ちるエッジに立っている。最新ITを使いこなす人々にマジシャンはトリックで立ち向かい、本作のマーク/ダミアンが戦えたのは“家族の絆”あってのこと。

 

現在(9/2/2016)公開中
オススメ★★★★★

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白い沈黙  白い沈黙

 

 「デビルズ・ノット」の監督アトム・エゴヤンは近いテーマを追及、カナダの映画人を結集して後進のドゥニ・ヴィルヌーヴに挑戦しているかのような1本。スルーしてしまいましたが、「ルーム」ともども21世紀を知る手掛かりにもなる。本作と「プリズナーズ」を見比べるとアチラはオーソドックスで、コチラは時制をズラしたりする仕掛けが不十分に見えても、それらを補って余りある中身と言えます。

 

 小さい子供がチョッと目を離した隙にいなくなってしまうのは、親としては恐怖以外の何ものでもない。ではその件を警察に持ちかけたら、親とても容疑者になってしまう。刑事たちがそうなってしまうのは、実在するおぞましい世界が背景にある。「マジカル・ガール」とてどこか遠い惑星のお話に見えない21世紀、うんざりしようが目を背けようが、我々は渦中にある。

 

 父親役がライアン・レイノルズで、ごく普通の男に化けている。実際にいそうな人物の肉づけは彼ならではなれど、他の出演作と比べて控えめ。それは警察側を演じる2人を目立たせる効果にも繋がった。殺人課から配置替えでやってきた刑事役がイギリス人のスコット・スピードマンで、その上司がアメリカ人のロザリオ・ドーソン。どちらも魅力的でしたね、この2人のナニがないと確かに重苦しいままになってしまう。

 

 スコット演じるジェフリーが父親を疑ってかかるのも、ウェブサイトに充満する犯罪を取り扱ってきたためで、正視できないものばかりなんでしょう。「ガルム・ウォーズ」では兵士役もできますが、ケヴィン・デュランドが用意周到かつ変質的な男を熱演。スポンサーからそっぽ向かれるし、飽きっぽい世間様にアピールしないネタをスルーしているマスメディアが伝えない昨今だけに、映画で“自分の立ち位置を知る”必要を強く感じさせる。
オススメ★★★★☆ 

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