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奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ

  奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ

 

 フランスの教育事情について、映画からいくつか知ることになった。子供の食べ物には気を配り(「未来の食卓」)、幼稚園児に哲学を教え(「ちいさな哲学者たち」)、給食はフルコース(「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」)なのだとか。都市部の学校事情は厳しいが(「パリ20区、僕たちのクラス」)、デモに参加する気骨ある生徒は、文学作品を議論している(「アデル、ブルーは熱い色」)。

 

 大人の国だしベタな感動作はご遠慮かと思いきや、映画発祥の国だけに「エール!」とかもちゃんと取り揃えている。そこに登場の“師と弟子もの”作品。私めがお気に入りのネタを、アミューあつぎ映画.comシネマで上映してくれるのはありがたい。上映開始が10:20だからか、女性のお客さんが目立ち、客席は6割埋まっている。「ジェーン」よりも人々にアピールしたのは、授業で扱う題材がそうさせるのか。

 

 予告にあった通り、落ちこぼれクラスの生徒たちに、ホロコーストを研究させ、コンクールに参加させる過程を描いている。感動作の王道だから、“ベタな展開だろ”と思っていると、「パリ20区、僕たちのクラス」の延長線上にある作品だと冒頭で気づかされる。なにせいきなりスカーフのことで校則と宗教でモメてるもんね。作中でも“20カ国”というセリフがあるけど、合衆国の教育現場にそんな複雑さはない。

 

 学校から放り出されると、命すら危うい事情は「ギャングスターズ/明日へのタッチダウン」で描かれましたが、フランスの場合落ちこぼれた挙句に・・・という事情が垣間見られる。その辺りは「メイド・イン・フランス -パリ爆破テロ計画-」で確認する必要がありそうですけれど、落ちこぼれたちのダメさ加減は「デタッチメント 優しい無関心」と変わらないし、私めの通った高校とも似たりよったり。

 

 あんな連中が世の中に出て行ったら、ブラック企業だらけで日本が沈みかけるのも無理ない。と30年前を思い返してうんざりしますが、本作の生徒たちはゲゲン先生に救われている。ほとんど動物園状態の教室で、辛抱強く取り組む彼女の先生根性には頭が下がる。帽子を脱げとかイヤフォンを外せとか、たいがいの大人はとっとと投げちゃう仕事ですよ。

 

 ただ取り組み出すと、ちょっとやそっとでは忘れられないのがナチス強制収容所に関して。「アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」も派手なネタに飛びついた人々だったけど、収容所の実態が映され始めると注目することになる。今回勉強になったのは数ある虐殺の中で、ナチの行ったのはそれが“計画的であった”という事実。「謀議」という動かぬ証拠もありますし、まだまだ解明されていく必要はある(ドイツを誹謗するのではなくね)。

 

 自分たちで調べ、考え、それぞれの中に情報が蓄えられた段階で生徒たちは収容所の生存者と対面する。生徒たちに語るレオン・ズィゲル氏は生き証人で、聞いている生徒たちの涙は本物、ぜひご覧になってご確認を。ドキュメント・タッチで描いた甲斐ありで、狙った効果ではあるけれど、真実の瞬間では?実際に体験したアハメッド・ドゥラメが脚本を書いているんだし。

 

 働いている同僚と「アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち」の話になって、「奴はサラリーマンと変わらん」には同意できるんだけど、「その上役がたまたまヒトラーだっただけ」で片づけるのは賛成できない、引っかかるものがある。“簡単に済ませたい”気持ちが見え隠れするからか。あくまで副次的ですけれど、師と弟子ものが好きなのは、まともな授業を受けたことがなかった反動なのだ、と本作を通じて知ることになった。

 

現在(11/7/2016)公開中ですけれど、11/18までです。
オススメ★★★★☆

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関連作

  メイド・イン・フランス-パリ爆破テロ計画-

 

 「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」の脚本担当アハメッド・ドゥラメも出ている“今を知る手掛かり”。2015年に発生した事件の前に作られているにもかかわらず、“予想されていたこと”を証明している。隠れモスクに集った若者たちの中で、テロを起こそうとする4人が描かれていて生々しい。主人公は潜入して取材をするジャーナリスト。ココに説得力があって、まぁ名の知れた記者はまず近づけないもんね。

 

 ただし女房も子供もいるイスラム教徒のサムは本物で、他の連中はコーランをまともに読んでいない。テログループのリーダーも実は・・・、の部分はぜひご覧になってご確認を。ただの憂さ晴らし的な犯行は「バーダー・マインホフ理想の果てに」と似たりよったり。取材の範囲を超えた段階でサムは警察に出頭するも、相手にされないどころか即席のスパイにされちゃう。

 

 素行不良の小娘すら工作員にしてしまう国(「ニキータ」)だけに、日常茶飯事って感じが怖い。さらに刑事のセリフに唖然としてしまう。「公式にテロリスト予備軍は3,000人」とは知らせずにいた方が良いのか、知っているべき数字なのか。ただしイスラム教をおとしめるどころか、移民排斥を怒鳴っている連中が“見て見ぬふり”しそうなラストは救われる。
オススメ★★★★☆

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