君の名は。
とうとう一度もオリンピックのTV中継を見ないまま8月も終わろうとしております。「言の葉の庭」から3年経過しているわけですけれど、新海誠は傑作を作ってしまいましたね。素晴らしい出来栄えの堂々たるサマーシーズン大作。現時点で本作か「レヴェナント：蘇えりし者」が私めの2016年№1候補。“より多くの人々に訴える”大作の要件は「シン・ゴジラ」ともども満たしていて、興行収益は期待できそう。
テキトーに虚言を弄しているわけではなく、小田原のシネコンでも2館で上映されており、21:00スタートの小田原コロナシネマワールドは8割の入り、それも大きめの劇場で。女の子の比率が高いですかねぇ、一緒に働いている20代の子も「初日に行く」と当たり前のように言っていたし。「ほしのこえ」から14年を経て、新海誠の名前も認知度が上がってきたのか。
タイトルはある年代にとって馴染みのもので、1953年の日本映画。若い人はお祖父さん、お祖母さんに聞かれるとよろしいでしょう。よってあの表記になっているわけですけれど、48歳のオッサンは予告からニヤニヤしていた「転校生」をオススメしちゃう。男女の高校生が入れ替わって繰り広げられるコメディで、動画配信でもいいですから視聴可能にしていただきたい。
監督もアレは見ているハズで、本作はもう1本要素として組み込まれている。田舎の三葉と東京の瀧が入れ替わって爆笑のパートが進行しますが、電話で繋がっているんだから会ったっていいじゃん、お約束?と思っていると「×××××」の仕掛けを流用している。これはネタバレに類するので伏せますけど、ラブコメで進行させつつ×××××××××を組み込む。
大雑把に「転校生」＋「×××××」なんですけれど、この作品で監督が描きたかったことはより大きなもの。分かりやすくするため既存の作品から仕掛けを持ってくるのは映画の常道なれど、人々に訴えるテーマは東日本大震災だと思う。浮かれ騒ぐ世間様を批判したり、嘲笑したりしても立石に水。観にくるお客さん、それも若い人に伝え、ニヒリズムに逃げないで希望を持って欲しかったのでは?
Radwimpsの楽曲もたまらなかった、使用法はTVアニメっぽいけど観客を20代で想定した場合はこのやり方が正しい。オープニングテーマ、Aパート、Bパートと進行していく流れ。さりげなく田舎と東京の生活、金銭感覚などが描かれているのも魅力。ただし彗星落下の描写は美しいが“自然とは恐ろしいものだ”を込めていると思う。これを宮崎駿風にせず、人々の忘却を込めて物語にしているのが監督の凄さだ。
あの災害を思う時、つい“もし～だったら?”と嘆いて無力感に捕らわれて、投げっぱなしで生きている大人たち。でもフィクションを通じて、“忘れちゃダメなこと”を新海誠は若い人に伝えたかったのか。観客の全員がそんな風に受け止める必要はないけど、マスメディアのデタラメさもキッチリ入っていたし、読み取れる人は多いと思う。日本批判に傾かず、美しい自然の描写を恐ろしさとして刻み、次の世代に託す。監督は日本映画の果たすべき役割を担った。
現在(8/26/2016)公開中
オススメ★★★★★
サントラは聴きっぱなしになりました
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いつも夕飯時にTVはついていて、私めは目を背けていてほとんど見ていない。いいトシしてアホっぽいけど、垂れ流されてるお喋りに辟易ゆえ。もっとも本日（8/24）静岡ローカルの番組に「君の名は。」の新海誠と主演の神木隆之介＆上白石萌音が出ていて目を向けることになった。宣伝で全国を回っているんだなぁと感心、だって同様のお仕事を何度もやるわけでしょ。
本作は「ほしのこえ」のDVDにも収録されている短編をリメイク。猫好きは村上春樹に止まらず、荻上直子や「戸越銀座でつかまえて」の星野博美などいっぱいいて、それぞれの猫に対する描き方の違いは興味深い。関西弁の猫＝坂本も出てくる「日常」も手掛けている坂本一也の描写とオリジナルを見比べるのも一興。もっとも時代の進み具合が一番目につくのかな?
さりげなく主人公の生活を描いていても、21世紀の現実は描き込まれていてホッとしちゃうんだよねぇ。お父さんがいないことを寂しがるといけないから、お母さんが猫のダルを連れてきちゃうトコとか、就職活動とか、ルームシェアとか。猫に思い入れないもんで、部屋からの眺めが良かったりして。ま、年寄りのダルと同じ視線ですかな?ちょっと「バイナリ畑でつかまえて」に通じるところあるんだよね。
オススメ★★★☆☆