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健さん

   健さん

 

 本作の公開がスタートしたのは8/20、ほぼひと月遅れでの観賞になりましたが、近場の小田原コロナシネマワールドで上映してくれるのはありがたい。ロビーには“小田原映画祭 シネマトピア2016”の看板があったりして。かつて小田原市内にあった映画館はことごとく無くなってしまいましたが、映画好きがいなくなったわけではない。TOHOシネマズもコチラもぜひ今後も続けていただかないと、かなり困ります。

 

 さて、“知らない日本人はいるまい”という映画スターながら、映画という娯楽がこの後どれほど存続できるのか?と心配になってしまう今日この頃。冒頭に没年2014年とあって、えっ?もうそんなに経ってしまったのかと愕然となる。NHKの番組(プロフェッショナル 仕事の流儀)でこの人のロングインタビューを見て、ビックリしたのだって2012年なんですねぇ。

 

 パッケージ化されておりませんが、本作と合わせてご覧になることをオススメします。それ以前にこの人が喋ってる映像はまず見たことがなかったし、貴重な資料。現在48歳の私めとて、この人の出演作を劇場で拝んだのは「ブラック・レイン」が最初。ということはタイトルのように“健さん”と親しんだ人たちって、もっと年上ということになります。60代以上でないと、共に生きた感覚は持ち得ない。

 

 という認識がこの監督にあったかどうかは不明ながら、冒頭にはそういった観客への配慮がある。「単騎、千里を走る。」で健さんと共演したチュー・リンが訪ねてくるという設定で、彼が赴くのはフィルム上映されている映画館だったりする。風情は「オリオン座からの招待状」が再現していますけれど、もはや現存しない。老舗劇場有楽町スバル座とてデジタル上映、「JIMI:栄光への軌跡」で確認したのが2015年。

 

 親しんでこなかった年代の者にとっては、たいへんお勉強になるドキュメンタリースティーブ・ジョブズの映画だって2本もあるんだから、日本映画を代表するスターを埋もれさせちゃうのは情けない。ただこの人のヤクザ映画って「冬の華」とか「夜叉」が先で、「網走番外地」も「昭和残侠伝」も後からなんだよな。キッチリ覚えているのは「野性の証明」「新幹線大爆破」

 

 もっと若い年代だったら「鉄道員(ぽっぽや)」からってことになりそう。かようにキャリアは桁違いに長く、その間スターであり続けた人。もし日本人の証言だけで構成してしまうと、神格化を手助けする作品で終わってしまうので、海外出演作で関わった人達も出てくる。「ライトスリーパー」がまた見たいポール・シュレイダーは役者としての高倉健を高く評価。

 

 「ブラック・レイン」の現場で一緒に仕事をした撮影のヤン・デ・ボン、マイケル・ダグラスが語る健さんは唸ってしまった。あのそばを食べるシーンをすぐに確認したくなる。ジョン・ウーが敬愛しているのは「男たちの挽歌」を見れば納得だし、ロバート・デ・ニーロが親友なんだから、マーティン・スコセッシが出てくるのも当然なんだけど、一緒に仕事してたらと思わずにいられない。

 

 「友へ チング」のチョン・ウソンまで出てくるとは驚きで、松田優作に似ているから会ったというのも興味深い。映画評論家の川本三郎氏曰く、“アウトローを演じ続けてきた”というのも当たっている。もっとも一個人、高倉健を浮かび上がらせる証言で貴重なのは、付き人をしていた西村泰治氏。この人がたまらなかった、何言ってるかよく分からないけど、スターにとってこいいう“現実に生きている人”の存在は不可欠だったのでは?

 

 12月に公開予定の「ヒッチコック/トリュフォー」も楽しみなんだけど、“映画は底ナシ”ですな。誰もが知ってるハズの健さんとて、本作がほんの一部に光を当てたに過ぎない。これがもしTV番組だったら、“分かった気”になってさっさと忘れてしまうことでしょう。なおこの監督の手法というか感覚というか、「選挙」の想田和弘、「太秦ライムライト」の落合賢に近いような。どこか“かつての日本を検証する視線”を感じる。

 

現在(9/16/2016)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  単騎、千里を走る。

 

 俳優:高倉健のスケールを知るために重要な作品。国家に依存している人々にとっては、不都合な日中合作になるのかもしれない。公開から既に10年が経過していますけれど、「健さん」と合わせてご覧になることをオススメできます。確かに本作でもこの人のイメージは損なわれてない、しかし安定した作品より映画にとって“新しいこと”を模索し続けていたことが画面から伝わってくる。

 

 撮影も手探りだったのでは?と思わせるくらい、完成度は低いかもしれない。日本を代表するスターがインディ系に出ている印象がある。大げさかもしれないけど、監督は「HERO」のチャン・イーモウですから、もっと豪華絢爛になできるのにひたすら地味。これがたまらない魅力で、我々に身近な中国の人々が生き生きしている。ま、風光明媚なかの国なら「ベストキッド」をご参考までに。

 

 涙がほとばしるのではなく、じんわりグッとくる感動作。加えて中国の刑務所とか、村の慣習(孤児であっても村の人々が育てる)とか、実際の中国を知る手掛かり。誹謗するマスメディアに扇動されそうになったら、冷静になれる効果は十分にある。そこまで深読みする必要はないけど、健さんが残してくれた財産と受け止めても良いと思う。たとえ画面に映っている小道具(携帯電話、デジタルカメラ)が今はどこにも見当たらなくても。
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