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エクス・マキナ

   エクス・マキナ

 

 「マネーモンスター」から始めて、4本立てになるはずだったけど、さすがに20時間以上寝ていないもんで3本目のウディ・アレン作品でアウト。いずれ時間を作って「教授のおかしな妄想殺人」は観なければ・・・。こんなに無理して映画を観ている俺はアホだな、とつくづく身に染みますけど、生活は厳しく、時間も乏しく、シクシクの現実。

 

 また本作は無理をしなくても、Blu-rayを取り寄せれば家で見ることができる。Amazonのサイトで確認できますけれど、スペイン版には日本語の字幕がついているそうな。パッケージソフトを劇場で販売した日本アニメーションとも違って、未公開作だからといって嘆かず配信で探しても良いし、愚痴るより行動すれば道は開ける至れり尽くせりのIT世紀。もっともソレがアダになったりもする。

 

 でもどれだけ家のモニターがデカくたって、劇場のスクリーンには敵わない。シネマカリテにはちゃんとお客さんが入っている、それも昨今見たこともないくらに若い人でいっぱい。敏感な人はちゃんといるんだよね、題材は見過ごすことのできない人工知能に関してなんだから。明らかに「A.I.」「チャッピー」より現実味を帯びている内容で文句なしでした。

 

 この辺は「わたしを離さないで」の脚本担当アレックス・ガーランドが監督というのが大きいでしょう。アカデミー特殊効果賞を獲ってますが、イギリス人だけに欧州産SFのテイストがある。「インストーラ―」とか「ルネッサンス」などが近いですかねぇ。見どころは役者さんにもあって、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の善悪双方が出ている。

 

 隔月俳優のドーナル・グリーソンはアレで悪の将軍でしたけれど、本作では「FRANK -フランク-」っぽい生真面目青年。対して凄腕パイロットのポーがカッコ良かったオスカー・アイザックは、スキンヘッドで今風CEOに変身。この人も「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」「アメリカン・ドリーマー/理想の代償」などここ数年はよく見かけるので、売れっ子。

 

 そして肝心なヒロインがアリシア・ヴィカンダー。「フィフス・エステート/世界から狙われた男」はどこに出ていたかは思い出せないけど、「コードネーム U.N.C.L.E.」はクッキリと記憶した。また「ジェイソン・ボーン」が待機中で、公開中なんで食指が動く「二ツ星の料理人」も・・・。ご尊顔が肝心の役なので、「ロボコップ(2014)」のジョエル・キナマンみたいに繊細かつハッキリしていないと。

 

 設定も実に21世紀的で、社内の抽選で当たった社員がCEOと会うってまさに。「ゼロの未来」では隣にいたりもしますが、有り余る金で山一つ買っちゃって、そこに独りで住んでいる。最近読んだ「仕事に必要なことはすべて映画で学べる」に記されているジョージ・ルーカスは、スカイウォーカーランチのどこかに滞在することがあるんだそうですけれど、「コンタクト」なんて衛星軌道上にいたしね、財を成しても金の使い方は知らないのかも。

 

 ま、行った先で謁見かなって、契約書を書かされて何をするかといえばチューリングテスト。「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」を観ておいてよかったですよ、もう当たり前にお話が進んじゃうもんね。でもITディバイスに囲まれて生きている若者たちにとっては、常識ってことになるんでしょう。タイトルが同じの士郎正宗作品から観客の側は確実に進化している。

 

 テストを重ねるうちに人工知能を搭載したロボット=エヴァは徐々に人間に近くなっていき、ドーナル演じるケイレヴと距離を縮めていく。これは「her/世界でひとつの彼女」もそうなんですけれど、かつてのSFみたいに恐ろしい存在へという描き方になっていない。ただし、映画ですから悪役がいないといけないので、それがCEOのネイサン。

 

 もう一人の登場人物キョウコがヒントになるけど、きれいな景色(「昼下がりの背徳」に近い)に囲まれていたって寂しいのが人間。攻殻機動隊にも凄腕ハッカーのくせに高価な××××××に囲まれているクロルデンが出てくるけど、テクノロジーの進化はスケベ根性がなければ成せないってのは滑稽だ。ネイサンの風貌もそれを意識したのかもしれない。

 

 劇中語られませんが、“機械が人を利用することを覚えたら、それがいわゆる技術的到達点”なのかもしれない。wiredの記事“人工知能に恋をしてはいけない”に人工知能の開発に大規模な施設は必要なく、どこかの誰かがいつの間にか完成してしまうとあって、ラストはまさにそれを予感させるものだった。「her/世界でひとつの彼女」の寂しさも「ブレードランナー」の虚しさもなく、既に地球上のどこかで“起こったこと”のようにね。

 

現在(6/14/2016)公開中
オススメ★★★★☆

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  AIの遺電子

 

 「バイナリ畑でつかまえて」の山田胡瓜による長編で、現代にブラックジャック先生を復活されるとなると、この設定になる。まだ1巻のみ読んだだけなので展開は不明なれど、現在唯一新刊が楽しみなコミック。恐らくITやAIに関してもっと他にも描かれているマンガはあるのだろうけど、48歳のオッサンには、たまたま“巡り合った作品”が貴重に思えるものでじっくりと読みたい。

 

 主人公須堂先生は金を出せば引き受ける、という裏の顔“モッガディート”があり、クールで現実的。引き立てているのが可愛らしい助手のリサ、という人物配置もパターンではあるが、この定型はいじる必要などない。先生が見る患者の症例やそれに付随する背景などは、ヒューマノイドという形を借りているが現代人の病に当てはまるものも多々あり。

 

 第2話「かけそば」、第3話「ポッポ」などは泣かせるが、第10話の「海の住人」などは長編映画に発展させてもよさそう。未だAIに関して浸透していない人も多い我が国で、日常を絡めて描くのは正しい選択。もう来てるぜ、とっくだぜの「エクス・マキナ」とも好対照。だからこの人には志郎正宗(「攻殻機動隊」)ではなく、手塚治虫(「メトロポリス」)の血が流れている。
オススメ★★★★☆

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