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誰のせいでもない

  誰のせいでもない

 

 生まれ故郷の東京に行くのは昨今ご無沙汰。アミューあつぎ映画.comシネマを見つけたし、なるべくなら遠出は避けたい。よって「いしぶみ」以来だから4ヶ月ぶりということになる。いつも乗っている御殿場線などとは比べ物にならないくらい、人で充満している通勤電車に乗って9:45スタートの本作を拝む。劇場はヒューマントラストシネマ渋谷で、「シリアスマン」以来かなぁ。

 

 メラニー・ロランの「ミモザの島に消えた母」はパスしたくせに、ヴィム・ヴェンダース最新作はどーしても来るしかなかった。ホントにたまたまホームページを見つけられた運に感謝です。“観たい作品”は毎時ストックされている昨今、“取捨選択は辛い”を通り越して、ただひたすら時の流れを呆然と見送っている始末。観賞の決め手はヴェンダースだからに加えて、予告編で見せつけられた映像クォリティ。

 

 それは冒頭にクッキリと出ていて、“自然光に映るホコリ”の映像でノックアウトされました。“映画はつかみが大切”のセオリー通り、ジェームズ・フランコ演じるトマスが小屋から出てきて、「釣れるかい?」などと語る一見平凡なシーンに魅せられてしまう。時間があればもちろん3Dでも観たかったし、70代の監督は突き進んでいる。「さらば、愛の言葉よ」以上に実験的な3D作品も拝んでいないしね。

 

 ひょっとすると「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」とドキュメンタリーが続いたヴェンダース、最新技術を試していたのか?とにかくね、素晴らしいですよ比較対象にどーしても「レヴェナント:蘇えりし者」を持ってきちゃうんですけれど、夜が明けて街灯が消えるトコなんて絶品。ただ劇場のスクリーンがもっと大きく、音響も作品に適していたら・・・と思わずにはいられない。

 

 では物語が空っぽかというと映像にまったく引けを取らない、大人が観賞すべき内容。予告の通りに作家のトマスはシャルロット・ゲンズブール演じるケイトの子供を車で轢いてしまう。事故なんだけど、“取り返しのつかない傷”をそれぞれに残す。恋人のサラ=レイチェル・マクアダムスとも別れ、トマスは行き場を失う。ただし物語を「白い沈黙」のようなサスペンスにしていないところがさすが。

 

 確かにどう生きて良いかわからなくなったトマスなれど、ケイトに救われる。自身の体験を作品として昇華することで立ち直っていく。特に彼が“小説の着想を得る瞬間が刻まれている描写”には説得力がある。見たことなかったんだよな、パッと閃くってシーンはよくあるけれど。「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」などにも出ますが、本作のジェームズは繊細だ。

 

 「ビフォア・サンセット」イーサン・ホークとか「酔いどれ詩人になるまえに」マット・ディロンとかも作家を演じていますけど、本作の美女3人と共演するとなるとジェームズでなければ。若い人にはちょっと年上かもしれませんが、「サンバ」とご一緒にとオススメできるシャルロットでしょ、レイチェル「スポットライト 世紀のスクープ」「サウスポー」と今年3本目だけど文句なしなんです。

 

 また劇場では「潜水服は蝶の夢を見る」以来のマリ=ジョゼ・クローズなんですけれど、レイチェルともどもロケ地=カナダの人。彼女が出ている「昼下がりの背徳」が参考になるんですけれど、かの国の建築物は風景に溶け込んでいてうるさくない。ヴェンダースはひとつ前に「もしも建物が話せたら」を撮っているからか、その辺も見所になっております。

 

 「ランド・オブ・プレンティ」「アメリカ、家族の肖像」以来あまりこの手のドラマを撮ってなかったヴェンダース。ただし既存のありふれた感じが全くないのがミソで、辛い事件を乗り越える人々、作品世界に没頭するあまり地に足のついていない男などがごく自然に描かれていて、批判的じゃない。タイトルがEVERY THING WILL BE FINEというくらいだし。

 

 映像美という点でテレンス・マリックの「聖杯たちの騎士」も楽しみになってきたし、スクリーンに映像で釘付けにされる作品は、爺の勝ちって再確認してしまった。几帳面に物事の解決を急ぐのではなく、時は流れ、季節は移り変わっていくというメッセージもあったのでは?なおオマケみたいでナニですけれど、悪魔やったりワルだったりするけどピーター・ストーメアもお見逃しなく。

 

現在(11/21/2016)公開中
オススメ★★★★☆

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