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ディーパンの闘い

  ディーパンの闘い

 

 ジャック・オーディアールは「君と歩く世界」が大好きで、私めの2013年ベスト。それだけでなく、本作は昨年11/13に起こった“パリの同時多発テロ事件”を補完する題材でもありそうなので観賞決定。本日はTOHOシネマズららぽーと横浜にて3作品を拝むことになる。この後は「スティーブ・ジョブズ」「キャロル」と続くんだけど、まぁ“映画作家3本立て”ってことになりますかな。

 

 予告編を見る限り、知っている役者は一人も出ていない。それは「エール!」以来となるんだけど、フランス映画の公開も規模が縮小傾向にあることを示しているのか。カンヌ映画祭パルムドール獲得!は、宣伝文句としてもはやインパクトがないのだ。そりゃあね、生活苦しくて働くばっかりだったら余裕がなくなりますよ。今の仕事場では超大作ですら話題には上らない。

 

 ただし恐ろしく単純な作業が続く今の職場には、多様な国の人々が日々増えている。東京に出るとますます外国人の姿が日常的になっている。国家ではなく、IT機器の成せる技が招来させた様なんだけど、これは外へ出てみないことには実感できません。もっともTVの映し出す日本だったり、このショッピング・モールでもそんな現実はまるで存在していないかのようだ。

 

 しかし映画は現実世界に触れる機会をくれる。前作も唸ったけど今回もこの監督の“地に足の着いた”感覚、作品世界は観る価値がある。国を逃れてフランスまでたどり着くディーパンとヤリニとイラヤルの3人。彼らに血のつながりはなく、“疑似家族”として入国。このあって当然だけど、あまり描かれない設定は新鮮なだけでなく、観客に現実を示す。

 

 「サンバ」がそうですが、移民を描く場合たいてい“迎える側”の視点。その逆があってもよいのです、ユダヤ人からだけでなくその逆の「ミラル」とか。国を出た人はたいてい無一文ですから、すぐにでも働かなければならない。「マダム・マロリーと魔法のスパイス」はファンタジー。公団住宅の管理人として働くディーパンですけれど、そこはギャングの巣になっている(「パリより愛をこめて」)。

 

 そんな環境でも暮らさなければならないディーパンには“人目を忍ぶ”必要があった。弾圧を逃れて国外へ退去したには違いないけど、彼は身分を変えなければならない過去がある。作品の中でもスリランカに対してまともな知識を持っている人はいませんが、それは私めもご同様。「5デイズ」でグルジア、「あの日の声を探して」でチェチェン、「ザ・ガンマン」でコンゴ、世界から戦火の絶えることはないのか?

 

 もっともその部分に焦点を当てるのが本作の目的ではなく、かといって安易に疑似家族が本当の家族のようになっていく、という感動作の王道にもなっていない。この辺のさじ加減はさすがで、いちいち生々しい。身寄りがないから引き連れられてきたイラヤルにしても、学校に行く部分がそうで「パリ20区、僕たちクラス」とは逆の視点を観客に提供している。

 

 観ていて一時的に3人が同居するという点で「ときめきに死す」なども思い当たりましたが、政変によって逃れるという部分は「壬生義士伝」がピンと来た。TVドラマだと全員討ち死にしたかのような印象を与える新選組ですけれど、実際はそうじゃない。また淡々と終わるのかと思いきや、ラストをアクションで締めくくっている。ぜひご覧になってご確認を。

 

 “ナチスによるユダヤ人の迫害”は幾度となく描かれて当然だし、人類の糧。ただ「ミラル」も私めにとっては忘れられない1本。スリランカで起こったことを知る契機にもなりましたが、本作はやはりTVニュースとは比べ物にならない“濃さ”を映画が持っていることを再確認した。“スターが出てなきゃダメ”じゃなくて、身近な人々を移民も含めて描いているんだから、想定される客層はより広範囲だと思うのは変ですかねぇ。そうそう「外事警察」以後にその種のモノってあったのかな?「わたしを離さないで」がドラマ化されるのは凄いけど、老人国の人々が気にしているのはアンチエイジングなのね、至近に迫った身の回りじゃなく。

 

現在(2/15/2016)公開中
オススメ★★★★☆

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