関連テーマ 

 

 

 

 


サイドボックス

ここにテキスト


出し

キャロル

  キャロル

 

 現在私めが注目している女優さんはルーニー・マーラ。2013年の「グランド・イリュージョン」まではメラニー・ロランでしたけれど、“女優に関して浮気性”ですから鞍替え。子供がいないから「PAN 〜ネバーランド、夢のはじまり〜」は見ていないけど、HDDに突っ込んである「セインツ/約束の果て」は時間が許せばいってみようかなどと思っている。

 

 現在お気に入りのルーニーと共演するのがケイト・ブランシェットで、本作は新旧女優対決って宣伝されても仕方がない。「スノーホワイト」はそれほど離れているとは思えなかったけど、「プラダを着た悪魔」のように大女優に若手が挑む図式としてとらえるのも楽しい。もっとも挑むどころか、恋人同士を演じなければならないルーニーとケイト。「エデンより彼方へ」の監督だけにこの題材は納得。

 

 「アイム・ノット・ゼア」が素晴らしかったトッド・ヘインズ、楽しみでしたよ、「ザ・マスター」が劇場初体験だったのポール・トーマス・アンダーソンみたいにね。撮影がエド・ラックマンで「東京画」に携わったこの人は、間に「アメリカの友人」の監督ヴィム・ヴェンダースを挟むとパトリシア・ハイスミスにつながっていく。allcinemaばっかり眺めているな。

 

 ルーニー演じるテレーズはチェコの移民でデパート勤務。そこに子供のためのクリスマス・プレゼントを買いに来たキャロル(ケイト)と出会う。でもこの冒頭部分だけで、“遺しておかなければならない文化”が映し出されていると思うのはトシのせいか。「ザ・マスター」にもデパートで働く男が出てきますけれど、雰囲気も含めてそういえば、と思い出せる人は観客の中にどれだけいるのか。

 

 40代の私めでさえかすかに記憶している風景ですけれど、時代背景もさりげなく盛り込まれている。1950年代の合衆国は保守的で、親権に関しても60年代までは男が優勢だった(「ビック・アイズ」を参考までに)。そんな背景の中で、テレーズとキャロルは徐々に距離を縮めていく。このクラシカルな進行を魅せていく手腕は大したものです。

 

 「アデライン、100年目の恋」は設定そのものが時代の違いを観客に分からせる造りでしたけれど、空気として漂わせている。肝心な主演2人も抜群で、ルーニーの場合「ハートボール」の次にコチラだったら腑に落ちましたが、「ドラゴン・タトゥーの女」「サイド・エフェクト」を経ているとは信じられない初々しさがある。この変身ぶりは未来の大女優を予感させる。

 

 タイトルになっているし、主演女優とされているケイト・ブランシェットなんだけど、受け手に見えて仕方がないのは私めの勝手な解釈。製作総指揮を兼ねているだけに、華はルーニーに持たせたがったのか。この人もお任せされる人だし、アレでボブ・ディランに化けたりして若い人には「オスカーとルシンダ」を見ていただきたいものだ。

 

 「アデル、ブルーは熱い色」は21世紀だけにセンセーショナルなベッドシーンを入れるしかなかった。本作のそれは実にピタッとラストに待っている。まずないんですけれど、帰宅時間を間違えるとエライことになるので、チラッと時計を見たら、物語の進行が計算し尽くされた具合で驚いた。無駄に長くならず、簡潔に愛が成立していく過程を追っている。

 

 同性愛を描くのが目的というのではなく、センセーショナルな話題を狙ったのでもなく、本作が目指したのは“純愛を描くこと”なのだと勝手に解釈。同性愛のカップルは「キッズオールライト」などが現在の姿でしょう。不治の病だと「きっと星のせいじゃない」なんだけどかなり厳しい現実が不可欠。また身分違いの恋ったって今の金持ちはリバタリアンだから、一笑に付されるし観客も納得しない。

 

 ストレートな恋愛ものって昨今ご無沙汰。人を狂わせる感情は理屈じゃない。サバイバルが優先する時代だけに「オデッセイ」とかありますけれど、腰を据えて悲恋の物語をじっくり味わうのも悪くない。時間迫っていたけど、贅沢な時間でしたよ。片時もタブレットを離さず、時間に追われている気分から解放されない日常だけに。ルーニー・マーラにまだまだ注目の日々が続きます。

 

現在(2/15/2016)公開中
オススメ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com


前のページ     次のページ

 

top

 

関連作

  アメリカの友人

 

 映画通ならたいてい見ているパトリシア・ハイスミス原作の「太陽がいっぱい」。恥ずかしながら未見でして、コチラは何度か拝んでいる。映画の快楽で取り上げられていて、ダニエル・シュミット、ニコラス・レイといった映画監督の確認のために見たのが10年くらい前でしょうか。「キャロル」に合わせて見直すと、たまらなく魅力的に感じるから、この作品はやはり傑作。

 

 絵画が題材の映画も幾つか観ましたが、額縁職人が主人公というのはお目にかかっていない。久しぶりに見てフィルム撮影の凄さを思い知らされた「ファイヤー・フォックス」と同じく、もう冒頭からたまらない。加えてブルーノ・ガンツもデニス・ホッパーも渋くカッコ良いのだ。それと車や電車などの描写はどうか。「都会のアリス」もまた見たくなってしまった。
オススメ★★★★★

Amazon.com



ホームページ テンプレート フリー

Design by

inserted by FC2 system