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マネー・ショート 華麗なる大逆転

  マネー・ショート 華麗なる大逆転

 

 現在我々は不幸のドン底にいるのか?それともまぁ何とか生きているのか?お先真っ暗にしてくれる出来事は山のように、あちこちに満ち溢れていて、けっきょく“見て見ぬふり”をして日々をやり過ごしている。30年くらい前までだったら“明るい未来”を辛うじて描けたのに(「2010年」でさえ)、もはやSF映画にもディストピア作品(「ダイバージェントNEO」)が次から次へと作られている。

 

 ただし“我々の不幸具合”を教えてくれる、“ありがた迷惑”なお話(「ドローン・オブ・ウォー」)は映画でしかお目にかかれない。劇場までわざわざ足を運べば身に染みて、ちょっとやそっとじゃTV洗脳にうかうか乗せられずに済む。“映画は映画館で観る”習慣すら過去になろうとしている現時点、10年近く前のニュースを金払って拝ませていただきました。

 

 予告編で分かるのは豪華なキャストと原作者のみ。まぁお客さんを呼び込むためには余分なものはいらない。「マネーボール」「しあわせの隠れ場所」を著しているマイケル・ルイスの名前はジャブとして申し分ないでしょう。でも監督にニヤッとしちゃうんだよね。アダム・マッケイって「俺たちニュースキャスター!」とか「アザー・ガイズ」を撮っている人と認識していたものだから。

 

 よって予想していたのはコメディの体裁だった。ところが最初からマジ路線で行きますよ、という今までアダムの作品でお目にかかったことがないスタイルで進行する。彼の過去作品っぽく脱線できそうな役ではあっても、クリスチャン・ベイルもスティーヴ・カレルもライアン・ゴズリングも、現実にいる金融機関の人々になっている。この嬉しい期待のスカされ方で、薄っぺらなTVニュースの裏側に興味津々。

 

 クリスチャンは“切れ者はズレちゃって当然”の博士マイケルで、世の中とは無縁に音楽に埋没している人。そしてこの天才がいち早く金融市場の異常に気づく。“目を開けてれば分かる”人物は銀行にもいて、それがライアン演じるジャレッド。博士の動きから、これからどうなるかを察知する。そして兄を自殺で失ったスティーヴ演じるマークのところに話を持ち掛ける。

 

 金融関係は“ハイエナの群れ”だけに鼻が利くことが大前提で、他にもいることを示すために2人の若者が出てきて、それがブラッド・ピット演じるベンの登場を促す。物語は登場人物のイントロ込みでとっとと進行して、“空売り”も“CDO”も“CDS”もサッパリ分からないんだけど、サブプライム・ローンはただの“ねずみ講”というのだけはハッキリしている。

 

 それは「ウォール・ストリート」で描かれていたし、堅実な証券会社であるマークの現地調査が、我々に最も身近な現象を見せてくれる。ストリッパーにまで投資を持ち掛けるチンピラみたいな連中は、浮かれ気分でマークがげっそりと「おい、いま罪を告白したぞ」と言わせるくらいに気分上々。思い出しますねぇ、国中が薄らバカだったバブル期の日本。

 

 その関係なのか、文章が引用されているのがマーク・トゥエインだけでなく、「1Q84」の村上春樹まで使われている。更に徳永英明が日本レストランでかかっていたりする。「俺たちニュースキャスター!」でほら貝が出てくるけど、この監督はバブル期の日本を知っているのだろう。自炊して「村上朝日堂の逆襲」を読み返してますけど、その後の日本が予言されている。

 

 もちろんただ濃いニュースを観ただけでは映画好きは満足しない。スティーヴとライアンマリサ・トメイが出てきているんですから、「ラブ・アゲイン」の再現ではないですか。スティーヴとマリサが夫婦役で、シリアスかつまともなドラマを演じているのが逆にニヤニヤさせてくれたりして。あっちだと「45分も×××したわよ!」と爆笑のシーンがありますからね。

 

 未見だった「ウルフ・オブ・ウォールストリート」もさっそく見てみましたよ、わざわざマーゴット・ロビーが解説だけに出てくるんだもんね。細かい用語、金融機関などの仕組みはサッパリなのに、観終ってつくづく思い知らされた。現在われわれが頭上にいただいている人々は“フザけている”ってね。欲にかられて、目先の金に飛びつき、しくじったら隠ぺいに四苦八苦。

 

 格付け会社もジャーナリストもでたらめで、はては国民の税金で穴埋め。10年近く前の出来事ですけれど、この“耳の痛い話”はエライ連中向けだけに作られているのではない。日々連中の宣伝(TV)に浸されて、とっとと忘れちゃう我々に向けられているのだ。去年腰の骨を折った親父を病院に連れて行っただけでも、その待合室には“現在進行している深刻な事態”が見て取れる。

 

 献身的な看護師さんたちとて老いには勝てない。機能不全に陥る前に機械化(「NEXT WORLD」)すれば、まだ救いがあるのかもしれない。見たくないのは分かるけどさ、もっと真剣に考えないと。とっくに役立たずのTVに出ている“フザけている”連中なんか相手にしないでさ。でも未練だろうなぁ、バブルが「懐かしい」と言ってる私めと同年代の人を、今の職場でも見かけるもんね。

 

現在(3/4/2016)公開中
オススメ★★★★☆

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  ウルフ・オブ・ウォールストリート

 

 私めにとってレオナルド・ディカプリオとマーティン・スコセッシのコンビ作は危険です、過去に2本ズッコケたものがある。本作も題材は面白そうだし、気にはなっていたけどパスしていた。ところが「マネー・ショート 華麗なる大逆転」にわざわざマーゴット・ロビーが出ているんだから見ないわけにはいかず、冒頭を拝んだら止まらなくなった。

 

 大爆笑です、もう皮肉どころかストレートに金融バカ一代って感じで、レオがやりまくり。どーしてコレじゃなく、今年の「レヴェナント:蘇えりし者」アカデミー賞獲得なんだろう?マザコンのホモ一代記=「J・エドガー」は真面目に演じて笑いを取りましたが、コチラはジャンキーの成功者ですから、ラリってる部分を最大限誇張。レオがランボルギーニ・カウンタックに這っていくシーンが絶品、ぜひご覧になってご確認を。

 

 監督、主演ともに観客に冷や水を浴びせている。TV宣伝で祭り上げられている連中を偶像視している我々に「ほら見ろよ、あんたらが憧れてる連中の正体はコレ」と言わんばかり。それにしてもラリってるか、ヤってるか、社員に演説かましてるかのシーンばかりで仕事している部分が皆無。「グッドフェローズ」にノリが近いんだけど、描かれている対象に作り手の悪意がタップリ込められている。

 

 けっこう豪華な出演陣で、マシュー・マコノヒーが株のことを分かりやすく親切に解説してくれます。ロブ・ライナー(「恋人たちの予感」をぜひ)とジョン・ファヴロー(「シェフ」がサイコー)という監督に挟まれたレオの3ショットは映画好きとしてはなかなか。この中では比較的新人になるマーゴット・ロビーとジョナ・ヒルはさすがの存在感。マーゴットはこの後「フォーカス」へと出世、ジョナは再度「マネーボール」っぽい役を期待。

 

 レオナルド・ディカプリオという俳優を過小評価しすぎました。「タイタニック」のイメージを徹底的に破壊、SMプレイまでご披露で、力入りまくり。あの当時彼をアイドルとしてキャーキャー言ってたご婦人方は、変わり果てた姿に嘆くのか。私めは敬遠してましたけれど、この人の地味な刑事役とか誠実な先生役とかが見たくなった。製作・脚本・ナレーションの「The 11th Hour」などが、恐らくこの人の実像を知る手がかり。
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  村上朝日堂の逆襲

 

 20代の頃よく読んでいたエッセイ。受けた影響というより、自分が書いている文章がまんま粗悪品のコピーだと久しぶりに読み返してガックリ来る。この本のおかげで「シルバラード」を知ることになったし、小津安二郎に関しても同様。ミーハーなファンだっただけに、何でもかんでも鵜呑みだ。でもビール好きになり、ジョギング始めてマラソン大会に出たりしたのは、私めだけではあるまい。

 

 確かに楽しいことも記されているし、安西水丸氏のイラストは気軽な感じを醸し出すことに成功している。しかし後々忘れないシリアスな部分があって、読み返すと予言されていたことを思い知る。刊行されて30年経過し、ジャンクの時代(p239)は過ぎ、政治の季節(p157)がやって来た。ジョークとしてやり過ごすことが多すぎて、「まあなんでも適当に」では済まされなくなった。

 

 大恐慌に匹敵するクラッシュ(崩壊)は今まさに進行中である。“目に見えない”カタチで進行しているのがIT技術方面で、“目に映る”ものがどんどん古臭く、機能しなくなっている。ま、少なくともその認識だけは持っているつもりで、それは本書のおかげ。“備えあれば憂いなし”って感じでバブルの時さ、周囲の浮かれ騒いでいる様がアホに見えたものです。
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