関連テーマ 

 

 

 

 

 

 


サイドボックス

ここにテキスト


出し

龍三と七人の子分たち

龍三と七人の子分たち  龍三と七人の子分たち

 

 日曜日にやってきたおかげで9:50上映開始だというのに、ららぽーとのTOHOシネマズはちびっ子でいっぱいだ。宣伝は藤竜也、近藤正臣といったかつての伊達男が、ジジイのヤクザになって詐欺集団をやっつけるという内容。よってスクリーン7にはご高齢の観客が詰めかけている。私めにとって北野武監督は「アウトレイジ ビヨンド」が最後かも?と思っていたのでホッとした1本。

 

 TVタレントとして寵児であり続けたビートたけしながら、監督として北野武はTVが見せている世界の外側を描いてきた。で、期待しているのもその一点で、どーしても主流の作品が避けてしまう部分をどう描いてくれるか。現代の極道は連綿と描いてきたけれど、昔気質のヤクザは出てこない。あくまで任侠映画で描かれてきた人々が、現代人の無関心が育んだワルに挑む痛快作、一歩手前になっていた。

 

 一歩手前になってしまうのは、ギャグがスベってしまうというか、機能していないからで、作り手だけでなく受け手である観客の感覚にも一因がある。もともとTVはすっごく面白い人なのに、コメディがとにかく下手な北野武。合わせて「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」の時につくづく思ったんだけど、今の日本人の笑いのコードはTVによって決定されていて、それ以外を受け付けないのだ。

 

 劇場に詰め掛けたご高齢の面々が以前の感覚を維持していれば、隆三の片手に指が3本しかないギャグとか、マサとそば屋でしょーもない賭けに興じる場面とかは笑えるはずなんだけど。しかし一日の大半をあの洗脳映像のTV宣伝を見続けたら、まあ麻痺してしまうんでしょう。けっこう笑っていたのは私めだけで、ゆるい笑いだとしても、爺さん婆さんのために監督がわざわざ重い腰を上げたのにもったいない。

 

 不謹慎なギャグで、とにかくテンポを殺して映画を撮ってきた監督だけに笑いはスベった。ところがちゃんと見所はあって、オレオレ詐欺の正体だけでなく、布団や水道の浄化装置を買わせる押し売りの手口を、ちゃんと見せている。ま、隆三以下の面々が訪ねて行った大親分のところで、またまた押し売りに合っちゃうんだけど、跡継ぎが間違いなく、某国首相に似ていると思うのは気のせいか?

 

 「ソナチネ」以来の勝村政信がヤクザのオヤジにうんざりする息子で、堅気なんだけど彼の勤める会社もご立派とは言い難い。「アキレスと亀」で“古きよき日本”はインチキ臭いと描いた監督なので、もっと突っ込もうとすれば出来そうだけど、隆三とマサがラストに「もう先がねぇよ」と言ってるように時間切れなんでしょう。アメリカ映画のジジイもの「ラストベガス」とはやはりお国柄が違う。

 

 今回の収穫はワルの面々で、京浜連合のボスを演じた安田顕は今後要注目かも。確か「スペック」でなんでも治せる超能力を持った、胡散臭い医者が印象的。他にもNo.2の人とか是枝裕和とか荻上直子作品でお目にかかりたい。そういえば萬田久子はヒロインとして健在ですな。「太秦ライムライト」もよかったし、桃井かおりだとちょっと過剰になるんだよな。

 

 出演もしていて疲れた表情を見せた北野武。描くべき題材は山のようにあるけど、あのシャープな感覚はもうなくなったのか?ただ60代ですから、もう少し頑張っていただかないと。年齢に関係なく映画監督としてはユニークなんですから。「さらば、愛の言葉よ」のジャン=リュック・ゴダールは現在進行中の3Dを題材にしたし、クリント・イーストウッド「アメリカン・スナイパー」を撮っているし、「マジック・イン・ムーンライト」のウディ・アレンは絶品だったしね。

 

現在(4/26/2015)公開中
オススメ★★★☆☆

Amazon.com

DMM.com

 

前のページ      次のページ

 

top

 

関連作

  ラストベガス

 

 リユニオン(再会)ものはまず冒頭に子供時代のエピソードがあって、一気に現代まで飛んでお話が始まる。ま、たいがい「スタンド・バイ・ミー」風で、ネタは違えども最近見た「マイライフ」も似たような感じだった。たださすがに“それから58年後”というのは初めてお目にかかる。そして豪華共演の面々も初顔合わせだったのでは?というのは気のせいか。

 

 料理しているのがジョン・タートルトーブで、「魔法使いの弟子」が2010年にあったけど「キッド」以来ですかな、彼がこの手のネタを扱ってくれたのが嬉しい。公開は知っていたけど、行けずに残念な気持ちにさせてくれる佳作。今やこの面々の共演が豪華だと思う観客は、どの年齢に達しているんだろう?昔懐かしい彼らの出演作を絡めたギャグが、通用したのかどうかチト心配になる。

 

 ぜひ若い方にはご参考までにロバート・デ・ニーロだったら「ゴッドファーザーpart2」「マラヴィータ」、マイケル・ダグラスなら「ウォール街」「ソリタリーマン」をオススメ。4人組の目立たない方にシフトしているケヴィン・クラインは、「シルバラード」の渋さとダメおやじを演じた「抱きたいカンケイ」を見ておくと面白いかもしれない。でも彼のイチオシは「デーヴ」です。

 

 モーガン・フリーマンに関しては1989年の「ドライビング・miss・デイジー」以来もう年をとっていないんじゃ?と思えるけど、熱血校長の「ワイルドチェンジ」はギャップを楽しめて、「RED/レッド」「最高の人生の見つけ方」が役的に近く、なんと言っても「セブン」が絶品にして代表作。ただジイさんだけだと「素敵な相棒」になってしまうので、彼らに相応のヒロインがキモ。

 

 やりました、メアリー・スティーンバージェンが出てきて、単なる友情映画にならない彩りを添えている。この人も芸達者で「バック・トゥ・ザ・フューチャーpart3」から変わらずの印象があるんだけど、「フィラデルフィア」の弁護士役なんかもハマるしさすがです。で、オッサン以上には役者さんだけでアピールするものの、若い人には50centチラリ出演をお見逃しなく。迷惑顔の彼はお宝映像です。

 

 もう残り少ない人生だし、過去の因縁にケリをつける。もの凄く上手く展開するけど、この豪華共演で全てチャラにできる。この辺は「龍三と七人の子分たち」と見比べると楽しいでしょう。また「ドラムライン」で既に古典とされていたアース・ウィンド&ファイヤーを、クラブで響かせるのはアメリカ人監督としての義務。あのSeptemberを「最強のふたり」にやられっぱなしじゃあいけません。
オススメ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com

ホームページ テンプレート フリー

Design by

inserted by FC2 system