関連テーマ 

 

 

 

 

 


サイドボックス

ここにテキスト


出し

THE NEXT GENERATION/パトレイバー第7章

  THE NEXT GENERATION パトレイバー/第7章

 

 うっかり7枚つづりの前売券を買ってしまったために、シリーズ全てを観るハメになったパトレイバーの実写化も最終章。長かったのか、アッという間だったのか。満腹感が得られるかは、この章と劇場版にかかっている。もっとも、前回で元が取れることはハッキリした、2014年を退屈させなかったシリーズ。最初のOVAがそうだったように、恐らくは世界でも類を見ない試みだったに違いない。

 

 あくまで私めの認識ですけれど、劇場でパッケージソフトを即売するという流れは2012年には進行中だった。ガンダムの公開スパンが1年ごとで、ヤマトは更に短縮され、本作はもっと・・・。競争の結果そうなったのか?秒進分歩の時代に即したのか?遊びのエピソードも盛り込まれ、悪くはなかったけど第4章なんてあわや見逃すところだった。中年には酷な時代なのです。

 

 そして今回観客の中心を構成しているのはオッサンだというのを思い知らされた。観たのが海老名のTOHOシネマだったんだけど、初回に来場している層がまさに。新宿で第2章を観たときは気がつかなかったけど、押井守のファン層は厚く根強く、広範囲に存在する。で、このシリーズには彼から、下の年代に向けたメッセージが込められていることを痛感する。

 

 いちおう最後だけにおさらいの意味も込めて、総集編が挿入され本編が始まる(ガンダムと同じ)。しかし開始早々からこのシリーズが、劇場版第2弾に直結していることを思い出した。それは第1章を再見するとハッキリします。メディアミックスと称して最初は色々と展開したが、あの劇場版2作の流れを汲んでいる。静止画だけで語られますが、十分あの作品のシーンを脳裏に再現できる(何度見直したことか)。

 

 ひょっとすると総監督の押井守にとっては急を要したのかもしれない。ヒントは彼の著書「コミュニケーションは、要らない」にありそうだけど、滅びに直面している日本に残しておくべき映画として取り組んだのでは。それは「風立ちぬ」とか「かぐや姫の物語」もそうだし、「SHORT PEACE」だって。内田樹氏のブログ(1/1/2015付)にハッキリと、日本は“滅びる方向”と記されていて、否定できる根拠がない。

 

 そんな我が国を舞台に危険な映画を作れるのは押井守しかいない、彼は果たすべき役割を担っている数少ない映画人。ただし前作の後藤は彼の写し絵だったが、今回の後藤田はどうか?予想していた通り筧利夫の出番がやってきた。チラシも今回は彼がメインになっていたしね。ぜひ「22才の別れ」をご参照いただきたいんですけれど、バブル時代を生きた我々を代表する人間を体現できる役者。

 

 後藤田は問われる、守るべきものはあるか?これは中年にこそ響く。シゲさんを除いて前作のメンバーはこのシリーズに出てこなかったけど、南雲さんが今回は冒頭に登場で、柘植行人も出てくる。後は後藤なんだけど、どんな感じに物語に組み込まれるのか?年代に関係なく対処しなくてはならない事態とは?今となっては東日本大震災や原発のことでさえ、アッサリ無かったことにしてしまいそうな我が国。

 

 私めにとって2015年のスタートが劇映画を愚弄というか、破壊しているモノからとは象徴的。夢に浸っている間に破壊的な変化は確実に進行し、取り返しのつかない段階まで・・・。本編終わってからの劇場版の予告編がクライマックスになるとは、前代未聞のシリーズ最終章。今後はこんな贅沢さは許されないだろう。前々からやらかす映画監督だったけど、ホントに怖いもの知らず。戦々恐々で5月を待つことになります。

 

現在(1/13/2015)公開中
オススメ★★★★☆(予告も込みで)

Amazon.com

 

前のページ     次のページ

 

top

 

関連作

22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語  22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語

 

 日本映画の主流がダメだとしても、アメリカ映画ばかりを観て、自国をきちんと描いている作品を見過ごしてしまうのはいけませんね(反省です)。本作はちゃんと時代を切り取っている、素晴らしい出来栄え。「転校生」「時をかける少女」から作風は一貫している大林宣彦、描く対象に温かい眼差しを注ぐ人ですけれど、時代感覚は衰えていない。公開は2006年で、その後の日本で顕になってきた事態が刻まれている。

 

 ごくわずかな人々を除いて、登場人物は金に困り行き詰っている。三浦友和演じる企業でそれなりの位置にあった人も、休日に交通整理のアルバイト。若い人は前世紀でもみすぼらしかったアパートでルームシェア。ごく平凡な女の子がコンビニをクビになり、「おじさん、援交しよう」などと・・・。あの「シコふんじゃった」のヒロイン清水美砂は一見明るい秘書役だけど、あけすけなセリフには寂しいものが滲んでいる。

 

 主人公の川野 俊郎はごくわずかな恵まれた方で、筧利夫が実にピッタリ。堺雅人にはまだ無理があるし、加瀬亮とか浅野忠信にも難しい。ツルンとした“四十路坊や”は「僕が結婚を決めたワケ」に近いけど、彼には子種を残せないという深刻な事情があったりして。「そして父になる」の福山雅治よりホントは不幸な男なんだけど、上海で勤務して返ってくれば、出世が約束されている。

 

 “会社の出世なんて、人の一生にとってはその一部に過ぎない”と痛感する出来事が、俊郎の身に起こる。援交を申し入れてきた少女が、別れたきりで忘れられない恋人の娘なんだもんね。この構造に一気に引き込まれて、最後は号泣してしまいましたよ。別れた女のことを忘れない生き物なのが男なの。ちょっと「THE NEXT GENERATION/パトレイバー第1章」で、後藤田が籠城犯を説得するシーンを思い出しちゃった。

 

 冒頭に岸部一徳が登場して、この作品のクォリティが保証されていることを確信した。大林映画の常連役者というだけでなく、この人が出ているとなぜか安心「舞妓はレディ」だって、「39刑法第三十九条」だって。フォークは聴かないけど、この曲は耳にこびりついている。きっと巷に長いこと流れていたんでしょう。でも我が国の庶民を描く場合、これほど適している楽曲ってないよね。また大分で撮影されていることも肝心。

 

 全体的に下り坂の日本である状態は暗い影を落としているけど、ヒントは随所に散りばめられていて2015年の今では手本かもしれない。田舎に帰って人間らしく生きるのもよし、焼き鳥屋を継いで都会で生きるも道です(「選挙」でも焼き鳥屋の描写は素晴らしかった)。そしてバブル絶頂の頃に青春時代を過ごして、恩恵に預かったまま40代に達した我々を描いてくれた監督に感謝。
オススメ★★★★☆

Amazon.com

DMM.com

ホームページ テンプレート フリー

Design by

inserted by FC2 system