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アメリカン・ドリーマー/理想の代償

  アメリカン・ドリーマー 理想の代償

 

 「オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜」を未だ見てないけど、「マージン・コール」の監督J・C・チャンダーの最新作なんだから観賞優先度が一つアップし、主演のオスカー・アイザックは「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」の人だし、「ゼロ・ダーク・サーティ」「インターステラー」のジェシカ・チャスティンも出演となると観賞決定になる。

 

 パソコンのモニターを眺めながら家でやってるこの姿を、何年前ならイメージできたんだろう?マスコミを信用できない今となっては、明確な時代の流れを計る物差しはない。現在並行して読んでいる2冊(電子書籍についての15の考察〜次世代にいかに情報を引き継ぐべきか<、ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?)がここ数年の変化への認識がそれほど掛け離れていない、という気にさせてくれるので助かる。

 

 さて、物語が描かれているのは1981年のニューヨーク。70年代だったら「アメリカン・ギャングスター」が参考になりますけれど、日本製家電に負けてから10年経過すると、合衆国の荒み具合はより進行する。ラジオは頻繁に犯罪を伝えていて、街全体が犯罪都市ですと宣伝しているみたいだ。カタギの商売なのに、オイル会社のタンクローリーを襲う事件は日常。

 

 常態化すると分からなくなるけれど、今の日本だって人事じゃない。TV視聴者に“あいつらよりオレ達はマシ”と思わせたいのか、せっせと異常な事件ばかりを面白おかしく垂れ流しているニュースは・・・。今の日本にも必要なビジネスマンのアベルは、まさに気骨のある男。損得勘定でこの男がやばいライン(銃の所持とか、ギャングに接近とか)を避けているかは判然としませんが、暴力の連鎖が愚かなのは知っている。

 

 その日の寝床もままならない歌手から一変、オスカー・アイザックは家族や会社を第一に考える男=アダムを岩の面構えで体現している。ホアキン・フェニックスがやってもいいのでは?と思うから、ジェームズ・グレイの「裏切り者」「アンダーカヴァー」などが脳裏にチラつくし、後はもちろん「ゴッドファーザー」だ。警察や業界の腐敗を物語に色濃く組み込んだら、もっとハッキリしただろう。

 

 ただしそれではこの男を主人公に据えた意味はなく、80年代にする必要もなく、巨大企業が好き放題の今にアピールしない。邦題は“理想の代償”となっているけれど、原題のa most violent year(=最も暴力的な年)はあの時点でとどまっていてくれたら、という監督の願いも込められているのでは?その後の悲惨さを招く人々の愚かさを、既に「マージン・コール」で描いていたことだし。

 

 少しだけど今が良くなっているところもある。それは物語とはまるで関係ない電車内の描写。あれだけ落書きで汚かった車内は21世紀の合衆国には存在しない(「フルートベール駅で」などをご参考までに)。しかし癒着体質の業界も、警察内部の腐敗も、社員のクビを簡単に切っちゃう経営者もいなくならない。アダムは理想を追求したから、代償を払うハメになったと解釈する観客は多いかもしれないけれど、キレイになったのは電車の中だけと言いたいんじゃ?

 

 最後に禁じられている銃を撃ってしまった元従業員の死と、接近しようとしている検事とが刻まれて幕となるけれど、これも“暗に示している”気がして仕方ない。しかしそんな中で、「私にはそこに至る道が大切だ」と語るアベル。無法、暴力が日常で、静かに言い切ってしまうこういう人物が今求められる。ま、ストレートに描かないのは、政官財学報にガッチリ抑えまこれてしまっているTVの前の世間様に伝わらないからで、後々効いてきそうな仕掛けがありそう。ま、これとて勝手な解釈です。

 

現在(10/9/2015)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  オール・イズ・ロスト〜最後の手紙〜

 

 色々な仕掛けを施して、飽きっぽい観客をスクリーンに集中させることは映画製作者にとって大切。ですから本作と「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した 227 日」を並行してご覧になるのも一興です。 3D を駆使して絢爛豪華に漂流サバイバルを描いたパイの物語と、ロバート・レッドフォードしか映っていないコチラ。どちらが良い悪いではなく、予算が限られてたって、観客を画面に釘付けにできる。

 

 もちろんこの種の作品にピンでいける役者さんは不可欠なれど、それがやっと悪役もできるようになった往年の大スターというだけでも意表を突ける。パッと思いつく単独サバイバル映画というと、トム・ハンクス「キャスト・アウェイ」ウィル・スミス「アイ・アム・レジェンド」。インディ系の「月に囚われた男」のサム・ロックウェルにしても観客を捉えて放さない魅力がある。凄いのは今回の御大には過酷なシーンを演じてもらっている。

 

 劇場で観なかったのをホントに後悔させてくれる数ある1本がまた増えちゃった。ちょっと「グランブルー」も脳裏をよぎる本作に映画館は必須。高性能のネット端末ディバイス=スマートフォン、タブレットに生活の時間を奪われている私めなどは、スクリーンを見るしかない状況こそ必要。恐らく劇場だったらもっと想像をかき立てられた。というのは映画館と観客の文化史第5章“観客の再定義 暗闇のなかの観客”には「見えないものを見ることの内にも観客たる要件がある」と記されていて、納得なんだよなぁ(解釈違うけど)。

 

 冒頭にスマトラ沖と触れられているから、ひょっとしてあの災害にリンクするか?とも思う。たぶん観賞中は主人公の生き死にハラハラして終わるかもしれないけれど、劇場を後にして思い至るかもしれない。ホントに幾つか映画を観てくると、記憶に刻まれるのは劇場で観賞した方が圧倒的に多いのを痛感。映画はやはり映画館に限ります。なお新作と本作を経て、監督のJ・C・チャンダーは余地を残す描き方をする人では。それも実話を元にせず、あくまでフィクションで勝負のね。
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