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JIMI:栄光への軌跡

JIMI:栄光への軌跡  JIMI:栄光への軌跡

 

 ゲロを喉に詰まらせて窒息死したことは「寺内ヘンドリックス」で知った。お墓がシアトルにあることは「シングルス」で描かれた。渋谷陽一氏のロック―ベスト・アルバム・セレクションには天才と書かれている。しかしジミ・ヘンドリックスについてホントのところは分かっていない。そりゃあそうです、現在47歳の私めが生まれた頃に活動していた人なんですから。

 

 私めより2つ年上の監督ジョン・リドリーが、この伝説の男を好きなのは当然で、どういうアプローチを選択するかはかなり思案のしどころ。やり方間違えるとファンから怒られるというのではなく、関係者で存命の人はいるし、おまけに映像はタップリ残っている。わざわざ映画にするこたぁないだろ、とロック好きから笑われちゃうかもしれない。

 

 では長々と彼の足跡を追うのではなく、その才能が発芽した瞬間を捉えたら?のアプローチだったのだと思う。じつは劇中にPurple HazeもFoxy ladyもFireもかからない。そりゃあそうだ、ドキュメンタリー「ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間」には、最もカッコ良いPurple Haze演奏の瞬間が収められているんだから。また彼の音楽世界をクドクド説明するのも意味がない。

 

 合衆国から英国にやって来て、売り出すジミにとってキース・リチャーズの恋人リンダはなくてはならない存在だった。グルーピーに関しては「あの頃ペニーレインで」がオススメですけれど、プロデューサーとかマネージャーといった音楽業界の人間だけが才能を発掘するとは限らない。ライヴに足しげく通い、耳の肥えた彼女が一発で聴き惚れてしまうのがジミ。

 

 リンダを演じるイモージェン・プーツは発見だ、というのがまたまた大間違いで「25年目の弦楽四重奏」で既に“ただの美人では終わらない女優になるでしょう”などと書いている。この人が本作で発している魅力がたまらなくて、画面に釘付けになったし、ひょっとするとジミを描くことは二の次だったのでは?などと勘ぐったりして。しかしOutkastのアンドレ・ベンジャミンも全然引けを取らない。

 

 役者じゃないのに声も作っているし、仕草まさにジミ・ヘンドリックスそのものだ。てっきり演技初挑戦かと思いきや、「バトル・イン・シアトル」にも「Be Cool/ビー・クール」にも出ていたとは。もちろんミュージシャンの彼を出演させる目的は、画面にオーラを焼きつけることで、見事成功している。「8mile」でなかなかエミネムがご披露しなかったように、見せすぎると焦点絞れなくなっちゃうからね。

 

 それにしてもエリック・クラプトンのステージに飛び入りしたジミが、あまりに凄くてクラプトンがやられちゃったシーンは凄い。さらに一般の人がビートルズより先にSgt.Pepper's Lonley Hearts Club Bandを聴いたのがジミのステージだった、という瞬間が収められているのは本作ならでは。ジャンル別けが嫌いで、常に新しいことをしたいと語っているのは天才ならではといったところでしょうか。

 

 演奏のシーンは極力避け、音楽家の悲劇性も強調することなく、既存の音楽映画とは違ったアプローチを試みているのはひしひしと伝わるんだけど、残念ながら十分に機能していなかった。オーソドックスな「マジック・イン・ムーンライト」の直後だったからか、昨今のPVを見ていないからか、もう少しサービス精神があっても?という印象が残る。

 

 とは言っても宣伝に“知られざる2年の軌跡”とあるように、大量にある映像資料をなぞっても意味ないし、より一般的な若い年代にアピールするにはこの手法は間違っていない。だってインターネットですぐに知識が満たされる21世紀だもんね。だから、イントロとしてみたら合格。エリック・クラプトンが圧倒され、観客を沸かせるためならビートルズをダシにしちゃうとか、ジミ・ヘンドリックスをもっと知りたくなるものね。

 

現在(4/16/2015)公開中
オススメ★★★☆☆

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関連作

  ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間

 

 歴史的野外コンサートの記念碑的ドキュメンタリーを、映像資料として観賞するとは野暮。しかし同時代を生きていたわけではないので、「分かるよこのノリは」などと知った風な口は慎みたい。渋谷陽一氏によると、「愛と平和が忘れ去られようとしている今こそ、このアホらしさを思い出さなければ・・・」と記されていたのも過去になり、愛と平和が邪魔とされる、言論統制下の日本で見る意味は大きい。

 

 形骸化している今のフェスティバルと比べるのではなく、催し物としての原点が伺える。会場を設置している人々はワクワク、イキイキ。野放図のようで、当時の若者は礼儀知らずでもなく、モラルも酷くない。生々しく映し出される当時の人々は、純粋に音楽を楽しんでいる。現在若者が集う風景のなんと剣呑なことか。途中で無料にしちゃうとか、商売にがんじがらめにされる前のまともな音楽環境。

 

 今回はジミ・ヘンドリックスを見てみたかったからで、確かにその天才が爆発していて痺れた。ヴゥードゥー・チャイルド〜アメリカ国歌〜パープル・ヘイズと続くシーンはホントにしつこく見てしまう。既に最終日で観客はまばらなんだけど、音楽家とは観客が1人でもいれば、音の空間を作る人種なのだと痛感する。この人の天才は至るところで読んだ。CDを聴いたただけでは不十分で、そのパフォーマンスが不可欠。
オススメ★★★★☆

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  パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト

 

 「レッドオクトーバーを追え!」で潜水艦ダラスの天才ソナー担当が言っていたのをかすかに覚えているだけで、ニコロ・パガニーニについては全く知らない。しかし予告編で煽られると天才なのかも?どれどれと覗いてみる気にはなる。ま、同じく弦楽器を扱うジミ・ヘンドリックスの伝記映画を見る前に、19世紀の天才を眺めるのも悪くない、監督は「不滅の恋/ベートーヴェン」のバーナード・ローズだし。

 

 で、期待を上回る出来で楽しめます。Wikipediaを参照するとかなり史実のイメージとは異なるようですが、第二次世界大戦下の学者を扱った「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」とは違いますし、聴かせてなんぼの音楽映画ですからいくらホラ吹いてもらっても構いません。本作では忠実にパガニーニを追うのではなく、21世紀にも通じる天才音楽家の典型的な物語が素晴らしい。

 

 音楽を取ったらダメ人間、女をとっかえひっかえ。ところが演奏すればたちどころに人々を魅了、チケット完売でその名はイタリアのみならず、ヨーロッパ中に知れ渡る。なりきってるデヴィッド・ギャレットはモデルもしているそうで、世の女性たちはたまらんでしょう。ヴィジュアル系です、ラテン系ジゴロ風です。でも肝心の演奏能力がなければ務まらないので、そっちの方は聴き応えと見応え十分。

 

 「レッド・バイオリン」でも近いエピソードがあったような気もしますが、済ました天才のようで、美人には目がない。ロンドン滞在中にメイドだと思った指揮者の娘に惚れちゃって、の部分がドラマの根幹になる。シャーロット役のアンドレア・デックは初々しくて、美人だし文句なし。そして才能をいち早く見つけ、売り出す商才を持った男ウルバーニも欠かせない要素として配置されている。ま、彼がタイトルの悪魔なのかもね、原題は“THE DEVIL'S VIOLINIST:悪魔のヴァイオリニスト”。

 

 ロンドンからの招待をすっぽかしちゃうとか、コンサートに遅れてくるとか、イタリア人だけに王室の権威も涼しい顔してスルー。製作総指揮も務めているデヴィッドの知ってるエピソードが散りばめられているのかな?と思うと楽しい。またジャーナリストとカンケイしたり、現代のロックスターを笑っているかのようで、ニヤニヤしてしまいます。クラシック音楽は身近じゃないと思っている人には特にオススメできる逸品です。
オススメ★★★★☆

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