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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

 

 暖かくなりました、気がつけば3月も中旬なのです。秒進分歩の21世紀感覚ですと、ずいぶん前にはアカデミー賞に宣伝効果があった。ずいぶん前とは2006年の「クラッシュ」辺りを指しますが、“さっさと儲けて逃げ切っちゃえ、あとは野となれ山となれ”の感覚も浸透し、膨大な情報の洪水に飲み込まれている。あくせくと時代に追いつこうと必死の人々、様子を見ている人々、私めなどは疲れきっております。

 

 疲れているのも、本ページの主旨=関連作をオススメして一見さん(ライトユーザー)を常連さん(チェーンユーザー)にしていくため、漁った作品のお陰さま。「エニグマ」までは良かったんですけれど、「カティンの森」が凄すぎた。研究者でもなく、平凡な労働者なのに酔狂です、まったく。でも「マスコミはアテにならない」などとブーブー言ってても仕方ない。

 

 今年は第二次世界大戦終結から70年なのだそうですけれど、“前大戦について忘れるどころか、分かっていないことの方が多い”ことの一例。ドイツが始めた戦争は、ヨーロッパ全土に災厄を撒き散らしたことを、幾つかの作品から知りました。学校の教科書ではアメリカ合衆国、英国、仏国、伊、ソビエト連邦が挙げられていて、TVなども似たような感じ。でもノルウェーフィンランドも無関係ではなかった。

 

 “勝ったのはアメリカ合衆国のお陰、平和の立役者”とは一面的なのだと「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史」が教えてくれるし、全体像なんてそれこそAIの力でも駆使しない限り無理なのでは?ただし、その“人工知能の父”とも呼ばれる人物が、本作で描かれているアラン・チューリング。また“闇に葬るワケにはいかない、前大戦の功労者”でもある。

 

 全てWikipediaでおさらいしただけですけれど、本作で描かれている彼のイメージは史実に基づいている。フィクションの肉づけが最小限度なのは「エニグマ」を並行観賞されるのがよろしいでしょう。秘匿されてきた彼の実像だけでなく、戦局を左右した暗号解読はスリリングに描かなくたって、見応え充分。兵器が優秀でも戦争は勝てない、経済方面も情報においてもナチスは半端じゃなかった。

 

 情報戦で優位に立たないと、補給が絶たれて物資が届かない。これが戦争では最も肝心で、“腹が減っては戦はできない”。呼ばれてきたのがアランなんですけれど、天才ですから変わり者。ベネディクト・カンバーバッチが自然体で演じいて唸る。先週「フィフス・エステート/世界から狙われた男」を見たばかりなんですけれど、執念で真実を伝えようとするジュリアン・アサンジとは別人。

 

 別人というか、なりきっているのはキーラ・ナイトレイもご同様で、「はじまりのうた」は先月ですからねぇ。この人が演じるジョーン・クラークの存在抜きに、エニグマ解読は成功しなかった。“チームの紅一点”という役割も果たしつつ、アランにとっても不可欠な存在。また彼女の描写には男尊女卑のという時代記号も込められている。60年代まで続くけど、今やそんなことも人々の記憶から遠ざかりつつある。

 

 一番フィクションを展開しやすいのは、“バレちゃ元も子もない”スパイが暗躍しているパート。「ミュンヘン」などでも“想像力を駆使しないと無理”の部分は、作り手の腕の見せどころでしょう。マーク・ストロングは“存在しないことになっている”第六の部門=MI6を代弁している。彼は私めにとっての観賞誘引剤で、「善き人」では地味でしたけれど、「記憶探偵と鍵のかかった少女」を経て貫禄がある。そういえばベネディクトと「裏切りのサーカス」にも出てた。

 

 暴こうとするのではなく、“闇に葬っては後の糧にならない”事実を広範囲の人々に訴える映画にするのは正しい(「アメイジング・グレイス」とかね)。本作の主人公は変わり者だったけれど、人類に果たした功績は動かせない。非情に徹して多くを救ったことも、同性愛を禁じた英国の法律のおかげで自殺に追い込まれたことも・・・。痛みを伴うけれど、隠したままで涼しい顔を貫くよりはマシ。

 

 戦勝国とて功労者を隠蔽するくらいだから、敗戦国ならどさくさに紛れて、かなり闇に葬ったに違いない。「マイウェイ12,000キロの真実」で“もっとありそう”な気はしましたが、歴史を修正するエネルギーがあるんなら、過去を冷静に解明する方に使わないと。偉人伝にしてスパイ映画としても成立する本作を撮れる英国と、現在の日本はだいぶ違う。でも、たとえTV宣伝が幅を利かせている今であっても、平日にちゃんと入ってますから自分の隣人を信じたい。

 

現在(3/17/2015)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  エニグマ

 

 私めはコチラが先で、「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」が後だったんだけど、逆だったらどう見えるのか?“事実と全然違う、まるで分かっていない”と片づけてしまうのか、隠蔽された中で事実を抽出し、娯楽として成立させてるから合格と感心するのか?ダテにミック・ジャガーが関わってない本作は、エニグマにまつわる素材だけでなく、「カティンの森」に至る私めの道案内になった。

 

 冒頭に埋められた遺体が発見されるシーンがありますが、本作が込めた重要な部分。暗号解読が完了した時点で、英国は“カティンの森虐殺事件”も把握していた。「ぼくのプレミアライフ」の原作者ニック・ホーンビィが義兄弟なんだそうですけれど、ロバート・ハリスという人は侮れない。架空の物語には違いないけど、この人が知り得た“現実に起こったこと”を随所に散りばめている。

 

 ぜひ並行観賞して頂きたいんですけれど、「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」でもコチラでも補給船団を襲うUボートの脅威、スパイが暗躍していて人々が疑心暗鬼に陥っている事などは合致する。本作にアラン・チューリングもジョーン・クラークも出てこないけど、主演の2人がその肖像をフィクションの中で再現している。

 

 またポーランドという要素を欠いては、第二次世界大戦の輪郭がはっきりしないことも窺い知ることができる作品です。歴史的事実をフィクションの中に盛り込み、物語にして人々に伝える。気になった人は歴史書を手にするだろうし、そのヒントになります。まぁ余計なことは考えずに見て、第二次世界大戦の諜報映画として楽しむのも悪くない。「カティンの森」まで行っちゃったから、恨めしいんだよな。
オススメ★★★★☆

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  カティンの森

 

 アンジェイ・ワイダの作品はこれが初めてです、映画知りませんでした。反戦映画とはまさにこれを指すので、観賞後に“美味いもん食って、ブーブー言いながら、テレテレ生きられること”がどれだけ有難いか、なりふり構わず今の平和な状態にしがみついていきたいと心から思います。冗談じゃないですよ、突然ドイツとロシアがやって来て、人々を連れ去った挙句・・・。

 

 歴史の教科書だと“ナチスドイツがポーランドに侵攻”で済んじゃうけど、我々は教科書の中に生きてるわけじゃない。TVのドキュメンタリーも知らせることはできても、骨身に染みて分からせるには至らない。もし描かれているのが第二次世界大戦下のポーランドでなければ、“この監督の才能は抜きん出ている、やはり映画を知ってる人の作品は違う”とか涼しい顔していられたかもしれない。

 

 “鬼気迫る”とか“凄惨な”とか、言葉の飾りで表せる限度を超えている。では衝撃的なシーンばかりかというと、まるで誇張されている部分がない。“見せないで語る”のが映画、むしろ監督の見てきた情景を元に再現しているのでしょう、それだけで十分に伝わる。今とは違いますから、人々が“カティンの森虐殺事件”を直接知ることはない。でもロシアもドイツもそれを宣伝として利用するので、人々に伝わる。誰だって自分の夫が収容所に入れられて、手紙が検閲されていれば薄々気がつきます。

 

 第二次世界大戦を知る上で欠かせない、ポーランドという国、また国家なるものの正体を見る。“起こったことを宣伝に利用し、宣伝の中に真実はない”これは今でも繰り返されている。DVDをリリースしているレーベルがアルバトロスというのも象徴的で、B級もあるけどさ、「バンバン・クラブー真実の戦場−」「戦場カメラマン 真実の証明」などコレの関連作ではないけど、真実に近づける手がかりです。
オススメ★★★★★

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