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エクソダス:神と王

  エクソダス:神と王

 

 前回(「黒執事 Book of Murder 上巻」の時)はブルク13ってアニメ映画の聖地みたいになったなという印象があったけど、今回はモロに実感させる状態に出くわした。なんと8:00の段階でロビーに人が列を作っているではないか。公開2日目だし、本作は混んでいるのかな?と思ったらさにあらず。「ラブライブ」のライブビューイング物販に詰めかけたファンなのだそうな。

 

 何年か前に秋葉原のJR駅構内にベタベタと「THE IDOLM@STER」の宣伝が貼ってあって目が点になったが、アニメファンは熱心だ。ガンダムも8:45の上映開始にズラッと並んでいたもんね。もっとも萌え系BL全盛の主流ではないけれど、オッサンの私めもアニメは継続して見ていて、「シドニアの騎士」が3月に「蟲師 特別編/鈴の雫」もアナウンスされているから楽しみ。

 

 さてリドリー・スコット最新作はというと、150分の上映時間に少し憂鬱になったがきっちり元が取れた。昨年は聖書を題材にした「ノア/約束の舟」もあったが、「ロビン・フッド」の枠組みで仕上げられているという印象。つまりリメイクなんだけど、21世紀の解釈で現在の人々から笑われない仕上がり(「キングアーサー」に近いアプローチ)。それは預言者モーゼが聞いた“神のお告げ”に関しての部分が分かりやすい。

 

 「009 RE:CYBORG」のコメンタリーで、“彼の声とはつまりは神の声”であると説明されていますが、何でもかんでも解明したがる21世紀の人々に訴えるには最適の方法。いまさら空が光り輝いて、ガンダルフ(「ロード・オブ・ザ・リング」)に似たような人が出てきては、リメイクする意味がない。既に「十戒」があるんだし、メッセージが残せない。

 

 おとぎ話風の作りをアッサリ捨てて、ドキュメント・タッチを採用した世界だから、出てくる豪華な面々も濃いメイクは控えめ、誰が誰だか識別できる。主演のクリスチャン・ベイルを筆頭に、ラムセスを演じたジョエル・エドガートンも浮世離れしていない。「ミラル」のヒアム・アッバスも分かったし、ベン・キングズレーはそのまま出てきても史劇的コスプレに違和感がない。

 

 ただジョン・タトゥーロとシガーニー・ウィーバー、「ジャッキーコーガン」のベン・メンデルソーンは笑ってしまう。SFや現代劇で実に映える人たちだからね。そんな中でモーゼの奥さんツィポラ役を演じたマリア・バルベルデは、一発で観客の視線を独占する美貌の持ち主。今のイメージ(「シン・シティ 復讐の女神」)からは程遠いですけれど、「キングダム・オブ・ヘブン」エヴァ・グリーンに近いかな?

 

 モーゼの奇跡は映像として見ごたえ十分なものになっていて、観客を満足させている。人馬一体のシーンもCGの適正配置といったところで、3Dで観ていないから十全ではないんだけど文句なしです。どうも公開バージョンの多様化は、日本ではうまく機能していないみたい。ただこの後にジャン=リュック・ゴダールの3D作品「さらば、愛の言葉よ」が控えていて興味津々なんだけど。

 

 監督の掘り下げたいテーマはもう一つあって、モーゼとラムセスの兄弟関係。それはまんま「グラディエーター」にも通じていて、血筋を盲信する日本人にはあまりピンと来ないかも(切迫した事態を知らんぷりだし)。公務重視の賢い王様は“メガネにかなった者を後継にしたがる”は「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」もそうだった。民全体に関わることだけに、私情を捨てないと。

 

 もちろん本作のラムセスは汚職官吏のへゲップを徴用したり、占い女信じたりバカ殿丸出し。ホントの災厄が襲ってきて手も足も出なくなると、ため息つくしかない様は笑い混じりになっている(漫画っぽい「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」をご参考までに)。ここが肝心で、天罰が下ると人間風情がどうこうできるもんじゃない。食べ物なくなったり、顔中にオデキがあったり、子供は残らず殺されたり。「ざまぁみろ」を通り越して気の毒になった。だって先進国の末路みたいだもん人事じゃない。

 

 「メル・ブルックス/珍説世界史PART1」で落っことして十二が十戒になるけど、“人は変わるから石版に刻む”も重要な部分。ガンダム最終章だって訴えていた。亡くなった弟のトニー・スコットに捧げられているので、ラムセスに監督自身の投影があったのかもしれない。余談だけどアニメキャラを追っかける偶像崇拝はほどほどにしないとね。でないとTVタレントを国会議員にして、国を危うくしたアホな大人の轍を踏むことになるよ。最近「日本沈没」ばかり見ているからそんな風に思うのかもね。

 

現在(1/312015)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  日本沈没

 

 「エクソダス:神と王」でヘブライ人は追放されて放浪するハメになりますが、日本民族だとこのケースになる。国土の消失などというパニックはあんまりないから、ホラとしては1級品。子供の頃に見た時は震え上がった、若ければ小野寺に共感したかもしれないけど、今は田所教授の心情にシンクロする。映画は2時間であっという間に事態が進行するけど、違った意味で現在我が国はジワジワと沈みつつある。

 

 リメイクとこのオリジナルは、日本の変化を知る為には最適の映像資料ではないか。10年近く前にリメイクを観たけど、唖然としてしまった。ただし、作り手が“日本人を信じられなくなっていた”から、あのラストを採用するしかなかったのかもしれない。このオリジナルでは当時の子供に、トラウマを植え付ける特撮も鬼気迫るものながら、理想とされる人々も登場する。

 

 いち早く危機を察知する科学者の田所は、政界の黒幕である渡に科学者に何が大切かと問われて「勘です」と答える。首相の山本は対応に追われるけれど、成すべきをなす。官僚を博士の元に差し向け、着々と迫りくる危機に対応しようとする。官僚の中田たちは事が起こらなければ、山師かキチガイ呼ばわりされる仕事に賭ける。外国行っちゃえばいいやと思っていた若者小野寺も、沈みゆく母国に残って・・・。

 

 黒幕などという存在は「東のエデン」くらいで見当たらない。今の科学者も政治家も官僚もマスコミも国が消失しないのに、本来の役割から逸脱しているように見える。あるいは彼らが逸脱しているから、自国が沈もうとしているように感じるのか。庶民とて自分がしている仕事が果たして何かの役に立っているのか?と問われて胸を張れるわけではない。冒頭にねぶた祭りなど、当時の日本を映し出すけど、40年前の活気はもはや21世紀の今にはこの国のどこにもない、時代は変わったのだ。

 

 黒幕が識者に考えさせた提案を首相に告げる時に、参考意見として「このままなにもせん方がいい」と告げる。トシのせいだけど、“なにもせん方がいい”こともある。墓参りや仏壇に線香をあげる習慣は時代の変化とは関係ない。と同時に未だ日本人は子供だ、という田所の意見に全面的に賛成する。聖書の頃から“国なんてただの方便”と外国人は骨身に染みてるもんね。
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