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アメリカン・スナイパー

  アメリカン・スナイパー

 

 横浜のららぽーとにあるTOHOシネマズに来ると、どういうわけか3本立てになっちゃって、「マダム・マロリーと魔法のスパイス」の時は欧州ネタで、今回はタフなアメリカ人を再確認する作品と勝手に括っちゃえます。彼らは少なくともからも、悲惨な事件からも、戦争からも目を背けていない。劇場は8割埋まっていたけど、報道の自由度ランキングが下がりまくっている我が国では、どう受け止められるんだろう?

 

 あくまで願望ですけれど、テロとの戦争がどういうものかを思い知らせてくれるのが本作で、“ヤバイぜマジで”と観に来てた少年たちが感じたら、現政権が遂行している流れも・・・。“無理だよなぁ”という態度が一番良くなくて、よーく考えナシに事を起こしてしまうと取り返しのつかないことになる(「THE NEXT GENERATION/パトレイバー第5章」のepisode9をご参考までに)。

 

 合衆国での事の起こりは9.11、それまで本作の主人公クリスは平均的なアメリカ人で、国より家族を優先する。“自立心が強く兄弟を大切にする”のは「欲望のバージニア」とか「ファーナス/訣別の朝」にも描かれている。しかし“あの瞬間”を目撃して軍隊に身を投じるのは、刷新されたジャック・ライアンのキャラクターもそう。今からすれば、ものの見事に彼らはマスコミに煽られたのだ。

 

 衝撃的な冒頭のシーンは予告編でも脳裏に焼きついていて、この戦争の本質を突いている。訓練されたシールズが相対するのが、屈強の兵士ではなく民間人、それも女子供だということ。「父親たちの星条旗」にも戦闘のシーンはあるけど、当時の合衆国に継戦能力が欠けていたことも、余すところなく映画にしているクリント・イーストウッド。そんな監督だけに淡々とこの戦争全体を浮き彫りにしていく。

 

 「ヒアアフター」の時だったけど、「アモーレス・ペロス」の後に作られているのに、この監督の方が先んじていた印象を受けた。作品によってその題材に適した構造を用いることができるんだからさすがです。同じ年のジャン=リュック・ゴダールは「さらば愛の言葉よ」で3D映画とはどういうものかを観客に示した。「ハートブレイクリッジ」の人ですから、戦争映画の撮り方は心得ている。

 

 オスカーを受賞した「ハートロッカー」が比較の対象になるだろうけど、本作はその要素をも含んでいる。アチラでは主として人間爆弾が描かれましたが、レイフ・ファインズが登場する場面が分かりやすくて、テロリストとの戦闘にはスナイパーも重要。「THE NEXT GENERATION/パトレイバー第5章」のepisode8でも触れられていますのでご参考までにどうぞ。

 

 「スナイパーは投降を許されない」とは攻殻機動隊のサイトーが語る真実。敵に狙われ、無防備の民間人では?と思いながらの任務遂行は生半可なストレスではない(「レッド・サイレン」もそうだった)。過度な役作りではなく、体現して見事なのがブラッドリー・クーパー。目の芝居は「世界にひとつのプレイブック」でもご披露していましたけど、「特攻野郎Aチーム」より格段に兵隊らしい体つき。

 

 イラクでの米軍による蛮行は「リダクテッド」「ルート・アイリッシュ」が描いた。強烈過ぎるのか?ホントにみんなが忘れっぽくなったのか?批判すればするほど人々は遠のいていく。イラクに赴くたびに、どんどん“目が死んでいく”クリスを追う方が効果がある、と監督が判断したのでしょう。帰還兵に関しては「それぞれの空に」も良く出来ていますが、出征している夫を待つ妻もきちんと描かれている。

 

 さらにIT機器が時代記号なのもこの監督はちゃんと知っていて、衛星電話の描写はさすがなんだよな。「ローン・サバイバー」の頃になると、もはや傍受されてしまうので危険とされていた。「ヨルムンガンド/PERFECT ORDER」にも描かれているけど、スパイ大国の合衆国だけがテクノロジーを駆使できるわけではない。争っている間に着々と進行している流れはコチラの方面。

 

 “TVを見ている人と、インターネットで情報収集している人との間に乖離が生じている”とどこかのサイトに記事が載っていた。一体何を信じれば?という昨今、正気を保つためにTIMERSをよく聴いてるんだけど、その中で特に今の状況は“争いの河”という1曲が正確に歌い上げている。“人々が争ってる間に目的を持った奴が着々と準備をしている”ってね。今更だけど忌野清志郎ってすごい。

 

 着々と進行しているITの流れは“沈みゆく日本”では浸透しにくい。本作ではそんなことには一切触れていないけど、淡々と描かれているだけに劇場から帰る道々、その後も頭から離れないこの映画が考えさせてくれた。賞をもらって当然の「ジャージー・ボーイズ」が本国でスルーされちゃったけど、アメリカ人に教えてあげなくちゃ。「賞を獲得していないこの人の作品も忘れちゃいけない」とね。だってさ、「ホワイトハンター ブラックハート」なんて今の日本にこそ必要だったもん。

 

現在(2/21/2015)公開中
オススメ★★★★☆

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  ホワイトハンター ブラックハート

 

 “虫の知らせ”かどうかは分かりませんが、いつもは字幕で見ているアメリカ映画を吹き替えで拝んで狂喜してしまった傑作。映画の内幕ものとして優れているだけでなく、クリント・イーストウッド「ダーティハリー」以来継続しているイメージを演じつつ、スカッとさせてくれつつも、ガクンとさせてくれる。このニュアンスはぜひご覧になってご確認を、的外れじゃないと思います。

 

 山田康雄氏の吹き替えで子供の頃から見ていたヒーローが、素っ頓狂な映画監督ですから目が離せない。あの「アビエイター」のマーティン・スコセッシが一歩譲ってしまう大胆さが爽快。特に映画監督と脚本家のやり取りに目が釘付け。「観客のことなんか考えないで、堂々と作ればいい」とはこの人の本音なのかも?更にユダヤ人嫌いのマダムに「醜い」と言い放つシーンは絶品だ(今の日本に必要)。

 

 マダムはやっつけたけど、黒人を差別する白人にノック・アウトされちゃうのもカッコ良い。またハリウッドについても語る部分があって、このキャラクターは「グラン・トリノ」まで健在。ただ後に「インビクタス/負けざる者たち」も作りますが、とっくにアフリカの本質を知っていた。それがタイトルにもなっている“白い狩人、黒い心”で、ラストの疲れきった表情が雄弁に語っている。

 

 ま、小さな発見なんだけど「ラストサムライ」のティモシー・スポールが顔を見せるのではしゃいでしまった。「ネバーセイ・ネバーアゲイン」でローワン・アトキンソンの出番に喜んだみたいに。クリント・イーストウッドの映画に出たい人はいっぱいいそうだけど、そんなに誰も彼もじゃない。まだまだ“若き日のあの人”が拝める作品があるに違いないから、何度も見直していくことになりそうだ。
オススメ★★★★★

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