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サンバ

   サンバ

 

 TVが見せる幻想は未だに“昭和時代が継続している”錯覚を起こさせる。TV宣伝によると国民全体の17%が支持しただけで、今の政党は政権の座にいられるらしい(どうして投票率低かったんだろう?)。パソコンを使ってインターネットの閲覧ばかり繰り返していると、はたからは“何様だ、おまえ”という態度が板についてしまう。TV漬けもネット漬けも人の精神にとっては不健康です。

 

 で、ネタがなくちゃ書けないコレ。肉体労働をしていると怪我は禁物、つくづく“自分の身体はいたわらなければ”を痛感した2週間、懲りもせずに映画観賞再開です。ま、映画好きでよかったですよ、映画館行かないと観るの無理だもんね。それには外に出ないとならないし、副次的に街の様子も空気も感じられる。それにしても外国人が増えたではなく、日本人が希な気がする新宿。

 

 確かに満員の新宿武蔵野館ですけれど、もっと入っても良さそうな気がするのは外の人出を見たからですかねぇ。あれだけ「最強のふたり」はヒットしたのに・・・。でも中身は前作より私めの好みにピッタリでした。想像するに監督も主演のオマール・シーも、“移民の若者”というモチーフをもっと掘り下げたかったのでは?かなり今回のオマールは頑張っていた。

 

 ただし彼が目立つだけではなく、シャルロット・ゲンズブールも素晴らしかった、美しかった、惚れ直しですよ。「恋愛睡眠のすすめ」からすっ飛ばして、先月の「ニンフォマニアックvol.2」で変わり果てた姿に唖然とさせられただけに。仕事中に携帯電話をかけている同僚にアタマにきてキャリアを放り出し、くたびれてるし、人生投げちゃってるんだけど、オマール演じるサンバと通じていくことで、再生していくアリスは本作の魅力。

 

 ジュリア・ロバーツ「幸せの教室」で見せた投げやりな雰囲気にプラスして、薬をいっぱい持ち歩いているオマケつき。「幸せの1ページ」みたいだったら笑えますが、リハビリを兼ねたアリスのお仕事は、海外退去を迫られている外国人の面倒を見るというもの。10年以上前に赤坂のレンタル屋にいた頃は10カ国以上の人が来店していましたが、ものすごく面倒です外国の人とお付き合いするって。

 

 で、前作はEarth Wind & Fireが鳴り響いてノリノリでしたが、今回は描く対象がシリアスなだけに静かなトーンで進んでいく。「扉をたたく人」に足りなかった部分なんですけれど、国家が“より大勢のため”に締め出す人々に、助け舟を出す人が登場する。その仕事風景を通常業務として描いているのが真骨頂。移民が当たり前のフランスならではで、「パリ20区、僕たちのクラス」なども参考になります。

 

 更に移民の仕事風景も過度に批判的に描いていない。これはすごく大切なアプローチで、“観客の感情を揺さぶらず、現実を見せるために適温を心がける”といったところでしょうか。「あんなことして、政府はひどい、ヘイトスピーカーなんて人間じゃない」は確かなんだけど、底辺で支えている彼らの仕事風景を、観客は頭に血が上ることなく垣間見ることができる。

 

 サンバがする仕事は皿洗いからスタートして、とっ捕まった後にシャバに出てきて警備員、窓ふき、そしてゴミ処理場へと続く(彼らなくして社会が成立しない証拠)。マリオン・コティヤールの2本「君と歩く世界」「エヴァの告白」と比べると、観客の判断に委ねている比重が高いことが分かります。特に自称ブラジル人の仲間が加わると、辛い現実ではあっても、そればかりが目立たなくなるので侮れない。

 

 そして仕事の場面ばかりでなく、パーティのシーンも良いし、ガソリンスタンドの会話がもう絶品です。人種もトシも違う2人の、気恥ずかしくも暖かさが感じられる名シーン。観ていて心にグッとくるというか、サンバとアリスの関係が成就するところなんかたまらなかった、ぜひご覧になってご確認を。サンバなんかちゃっかり細身の美人に手を出しているというのに、ロマンスが成り立つんだよな。

 

 合衆国は「フルートベール駅」で底辺層を描いた。我が国とて非正規雇用は常態化しているし、「東のエデン」でも触れてたし、「孤独なツバメたち」には外国人労働者の実態が刻まれている。我々の隣人を描くのが映画で、アリスがしていた仕事=人材紹介や、サンバの生きる現実はフランスだけでなく、先進国の実情を反映させているんでしょう。観ていて何度もうなずいてしまいました。

 

 たかだか国民の17%の支持に乗っかっている人々が、TVを通じて垂れ流している幻想(ニュースもドラマも)に現実味なんて微塵もない21世紀。我々の隣人を描くのに適温を心がけた監督と出演者に感謝。辛い現実なんだけど、恋愛映画にしちゃうってさすが。「ラブアゲイン」もコンビ監督ですけれど、この2人エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカッシュも侮れない実力者、前作よりハッキリした。

 

現在(12/30/2014)公開中
オススメ★★★★☆

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  フレンチなしあわせのみつけ方

 

 「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」に続く、イヴァン・アタルによるシャルロットを主演に迎えての監督第2作。シャルロットは本作後に「恋愛睡眠のすすめ」「アイム・ノット・ゼア」と可愛い役から脱していくことになる。共演もしているイヴァンはこの後「ザ・インタープリター」「ミュンヘン」へとアメリカ映画に進出していく時期か。

 

 なに不自由ない暮らしをしている人々の日常を、彼らが中流階級だけに辛辣に捉えているのは監督らしさかも。綺麗な奥さんと可愛い子供がいるというのに、浮気する唐変木を監督の特権でイヴァンが演じている。不実な役というのも役者冥利なのですな。サッカー場のシーンがあったので、どうしてもDVD化されていない彼の「哀しみのスパイ」がもう一度見たくなる。

 

 そして、試聴機のシーンはご注目。なんとジョニー・デップが無造作に出てくる。なんとなく縁を感じますね、イヴァンと彼はその後に無関係ではなく、オリジナル(「アントニー・ジマー」)とリメイク(「ツーリスト」)に主演という共通項を持つことになる。「君のいないサマーデイズ」が近いですかねぇ、フランス人の結婚観というか、恋愛観も垣間見れます。

 

 茶目っ気タップリのコメディだし、街の描写であるとか、バスなどしっかり描かれていて監督のイヴァン・アタルは侮れない。物語は結構シリアスな夫婦の危機すら含んでいるというのに。そこはシャルロットがカギを握っていて、彼女の存在はなくてはならない。注がれる視線には単に近しい者へのひいき目というのではなく、主演女優への信頼と尊敬が滲んでいたりする。
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