ニンフォマニアック Vol.2
先月ですね、忙しい性遍歴で笑わせてもらったのは。ボカシに呆れつつも、帰る道々頭から離れることなく、いろんな想像しちゃいましたよ。「セックスと嘘とビデオテープ」は不能の男だが、完全に真逆の主人公が本作のジョー。女が強いとかは過去の話で、村上龍著「愛と幻想のファシズム」で狩猟社幹部の洞木が冷静に、安定すると母系社会になると言っていた。
「すべての男は消耗品である。」だけに、未来が閉ざされてる若い男どもは、必死に可愛くなろうと心がけている。そして、可愛くなりようがないジジイたちは、従軍慰安婦問題を無かったことにしようと・・・、粛正対象になるのかな?男の本性は消耗品、本作の後に控えているのは、タイトルもそのものズバリの「エクスペンダブルズ3」。絶滅も何も消耗品なんだから、悲しむには値しないのが男なんです。
で、vol.2になったらすぐにシャルロットに交替かと思いきや、引き続き若き日のジョーを語る形式が続く。ま、子供を身ごもる役は、ステイシー・マーティンでなければ。ただし、性の探求者って言えば聞こえが良いけれど、母性が目覚めなかったジョーはさらに過激な方向へ。ここでバトンタッチなんですけれど、「アンチクライスト」のパロディで笑った人いなかったんだよな。
映画の日だからけっこう入っていたけど、センセーショナルって宣伝文句で集まったのかな?来年の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」っぽさを期待しているとムムムってことになりそう。ヤリまくった挙句、SEXじゃあ満たされないジョーはSMプレイに突き進む。ここでジェイミー・ベルが登場で、今さら「リトル・ダンサー」のあの子がといっても昔話、「第九軍団のワシ」だって2年前。
「ナインハーフ」は期間限定のプレイながら、子供と別れようが深みにハマっていくジョーを見ていると、際限なく過激になっていったAVコーナーとシンクロします。ホントにどんどん先に行ってしまう。でもそれだけじゃあ、ただのポルノに過ぎない。そこでジョーとゼリクマンの問答があるんですけれど、一方は地獄の蓋を開けた者で、一方は倫理を以て応じながらもタジタジ。
ゼリクマンを演じるステラン・スカルスガルド、彼の作品を最近いくつか眺めていましたけど、今回は「アミスタッド」が近いですかねぇ。「不眠症/インソムニア」もなかなかで、本物の悪魔でもなきゃこの人を善の側に立たせるのは難しい(「エクソシスト/ビギニング」)、ラストもこの人ならでは。またジャン=マルク・バールはお久しぶり、あのジャック・マイヨールも・・・。
ジャンの登場シーンは、SM嗜好を活かして借金取りに変身したジョーとご一緒なんだけど、笑えるようで深刻な問題提起がなされる。子供に対する変態趣味は吐き気がするけど、現実に存在する。レンタル屋のカタログにいっぱい載ってましたからね、それもアダルト扱いじゃないのが・・・。良識的な人が避けて通る話題に、ストレートに切り込んでみせるのは本作の真骨頂でしょう。
SMの次にはレズビアンのシーンまでと、シャルロット・ゲンズブールもすごい女優になったものだ。でも彼女の次の作品「サンバ」は気楽に楽しめそう。チラリ出演のウド・キアとか、ウィレム・デフォーに至るまで、豪華な出演者のおかげでご遠慮していたラース・フォン・トリアー作品を堪能。異才の異色作だからマイナス×マイナスでプラスに転じたのかも。
哲学的問答は知的な雰囲気を担保しているようで、笑いを倍加させる効果絶大。「ライク・サムワン・イン・ラブ」のジジイじゃないけど含蓄ありそうで、一皮剥けばただの人間。批判も賞賛もなく、赤裸々ですらないのに、滑稽さが滲み出ている稀有な1本でした。和製だとキリスト教が絡まないので「トパーズ」、「恋の罪」になるこのネタ、村上龍も園子温も勇気あったわけね。
現在(11/1/2014)公開中
オススメ★★★★☆
関連作
もう一度「インソムニア」が見たくなるオリジナル。リメイクではアル・パチーノが演じていた刑事を、コチラではステラン・スカルスガルドが持ち味を活かして見せてくれる。白夜に悩まされるだけではないのが、この主人公の興味深いところで、「ニンフォマニアック」まで健在なステランの微妙な芝居は唸ってしまう。
高校生の遺体発見から物語が始まるので、「ツインピークス」の影響もうかがえるし、北国の刑事は最近では「フローズン・グラウンド」があったけど、キャラクターは参考にされてるのかな?「プリズナーズ」のジェイク・ギレンホールも近い印象がある。優秀な刑事が狡猾な犯人に弱みを握られて、共犯関係に陥ってしまうとは色恋沙汰が入ると「チャイナ・ムーン」になるんだけど、証拠隠滅は捜査を熟知している刑事なら可能。
最近「イコライザー」に合わせて「キングアーサー」を再見したんだけど、ステランっていろいろやってるなぁと感心してしまった。一緒にマッツ・ミケルセンまで発見、「あぁ、あいつ、そういやカッコ良かったな、思い出した」などとなったりして。もちろん北欧映画の実力に気がついていたのはアントワーン・フークアだけでなく、クリストファー・ノーランもなんだね。リメイクも臆さず自分のテイストで味付け、ギャレス・エドワーズ(「GODZILLA ゴジラ」)とかマット・リーウ゛ス(「猿の惑星:新世紀(ライジング)」)が続くか
オススメ★★★★☆