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リスボンに誘われて

    リスボンに誘われて

 

 ポルトガルの首都リスボンが描かれている作品は「リスボン物語」しか観ていないし、かの国に関しては無知同然。そのことを今回思い知らせてくれた、素晴らしい文学作品の映像化。邦題が“誘われて”になっているし、観光映画一歩手前の中身かな?マダム御用達の渋谷はル・シネマで上映されているし・・・。ところが「エル・スール」「瞳の奥の秘密」を合わせた物語で圧倒された。

 

 スペインにも内戦があり、ポルトガルにも革命があった事実を私めは知りませんでした。「マンデラの名もなき看守」を監督しているビレ・アウグストが、単純に“人生に迷った大人”の映画を撮るわけないよなと観賞中に気がつく。ま、この作品にたどり着いた経緯はもちろんメラニー・ロランで、彼女の出演作でなかったらスルーしていましたよ。事情は「黄色い星の子供たち」に近いか・・・情けなや。

 

 既に黄昏時を迎えているかのような高校教師が、自殺しようとした女の子を助けたことから思いもよらぬ旅へと導かれる。彼女の忘れ物=本に記されていたのは、独裁政権下のポルトガルで反体制運動をしていた若者の情熱的な恋。もうホントにふらっと乗ってしまった列車で、リスボンに向かう主人公ライムント。でもこれはジェレミー・アイアンズじゃなきゃ務まりません。

 

 ちょっと前に見た「ザ・ワーズ 盗まれた人生」では作中人物を演じましたが、今回は客体として物語を進行させる。著者を訪ねるのが始まりで、関係者に会って話を聞いているうちに、反体制運動の渦中で何があったのかを辿っていくライムント。そして作者の情熱的な恋が結果として、ご無沙汰していた男を変えていく。過去と現在の二重構造で進行する恋愛劇だけに「瞳の奥の秘密」が思い当たった。

 

 「エル・スール」ではスペイン内戦は少しだけ語られるのみだけど、作品世界に影を落としている。戦争のことを当事者が明かさないのと同じで、反体制運動とてキレイ事ばかりではない。過去のパートは「ペイドバック」なども似ていて、ミッションの渦中であっても男と女の関係はできてしまう。この愛憎劇、歴史的瞬間をホントに豪華なキャストが支えている。

 

 シャーロット・ランプリング(「エンゼル・ハート」)、レナ・オリン(「存在の耐えられない軽さ」)なんて、オッサンの私めからは“いい女”だった名女優。ブルーノ・ガンツ(「コッポラの胡蝶の夢」をぜひ)、クリストファー・リー(「戦場カメラマン 真実の証明」をぜひ)なんて老けちゃったけど魅せるよなぁ。そんな中できっちりヒロインになっていたのがマルティナ・ゲデック。

 

 確かに「マーサの幸せレシピ」から年月は経ちましたよ、年相応になっております。でもさ、ジェレミー・アイアンズとの部分がホントにいいんだよね。「プロヴァンスの贈りもの」を何度も見てしまうくらいで、中年にだって可愛らしい恋はできる(「おとなの恋には嘘がある」)。ホテルの支配人が「やっと、誘いましたね」が小気味よいセリフです、ぜひご覧になってご確認を。

 

 で、2010年以来の映画最優先事項=メラニー・ロランはというと、一番識別できないくらいに化けていた。先々月の「複製された男」でも“フランス映画の注目スター”という感じが微塵もなかったけど、「21g」以降のシャルロット・ゲンズブールみたいになっていくのか?メラニーが霞むほど、欧州の演技巧者をかき集めて、見応えある歴史劇、恋愛劇でラストがまた絶品。

 

 「VHSテープを巻き戻せ!」が先月ですから、間髪いれずに渋谷に来ているわけですけれど、ニュースで盛んに言われているデング熱ってホントかな?などと思うくらいの混雑。連休ということもあって、「舞妓はレディ」の直後に観るはずが、満席で1回飛ばすハメになった。そりゃあ首都圏に住んでいればいいんですけれど、2時間かけてきているものですから・・・。2本立て上映と共に“立ち見OK”の復活をぜひ。

 

現在(9/13/2014)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  ザ・ワーズ 盗まれた人生

 

 作家のというより小説の本質に迫っているのでは?と思わせる1本。ウディ・アレンの2作品「ミッドナイト・イン・パリ」「恋のロンドン狂騒曲」などが並行観賞に向いているかもしれません。売れない若い作家未満の男が、パリでたまたま買ったカバンの中には傑作が入っていて・・・。自作はダメで生活も苦しく、つい手が出てしまい、出版したら途端に時代の寵児となる。

 

 ブラッドリー・クーパーは現在のところ、こういう役(野心的な若者)がハマる。「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」がそうで、「アメリカン・ハッスル」はフィットしていない。奥さん役のゾーイ・サルダナはアクション(「コロンビアーナ」)もできますが、大人しい役も無理なくこなせる。「クラッシュ」の頃のタンディ・ニュートンに似た感じが出ていて、幅が広い。オリヴィア・ワイルド(「サードパーソン」)まで出演とかなり豪華。

 

 ただし、肝心なのがジェレミー・アイアンズで、“カバンの中の傑作”は彼が演じる名もない老人のもの。ジェレミーの芝居は退屈な男から強欲なCEO「フォース・エンジェル」などもファンにはオススメ出来ますが、この人のおかげで作品に歴史的な厚みを持たせることに成功している。人生をとるか小説に全てをかけるのか?人間の生の中から振り絞られたものこそ本物、ぜひご覧になってご確認を。
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