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ローン・サバイバー

  ローン・サバイバー

 

 前売り券を買う時に「ローン・レンジャーのムビチケ下さい」と言って怪訝な顔をされてしまった。物忘れも激しくなり、オッサン街道まっしぐらの男には実にもってこいのジャンル戦争映画。でも、昨今の戦闘は様子が前世紀とは違っているように見える。小隊編成で敵に接近し、極力戦線の拡大を防ぐ戦法にシフトしている。それは当然で、展開されるのは戦闘地域ならぬ市街地。

 

 少なくとも第一次世界大戦では戦場が設定されていた(「戦火の馬」)。第二次世界大戦は総力戦で、逃げ場がない。しかし現在は少なくとも、宣戦布告による交戦状態は存在しないハズだから、作戦行動中の部隊は“戦闘状況にある”と表現されるらしい。「ガメラ2」でも「機動警察パトレイバー2」でも、“状況開始”とか“状況終了”という言葉が使われていた。

 

 マニアではありませんが、いくつか戦争映画を見てきた。そして知った気になっていたけれど、現在の戦争事情には全くついていけない。“軍隊が鉄砲撃ちゃあ戦争だろ”は乱暴でも、為政者だって人の子、歴史に“戦争の張本人”って記されて何世紀も語られたら嫌でしょう、軍事介入と称している。でも嫌なくらいならまだいいけれど、実際の戦闘に参加する兵士にとって戦争は現実。

 

 アメリカが誇る精鋭部隊“ネイビーシールズ”によるアフガニスタンでの作戦=レッド・ウィング。生き残った兵士による体験記を元にしているだけに、実に生々しい事実を観客に見せつける。並行観賞に適しているのが「ネイビーシールズ」「ゼロ・ダーク・サーティ」。前者はフィクションだけに見せ場はあるし、娯楽作としても通用する。後者は本作に近くて事実を再構築しているため、ドキュメンタリーのよう。

 

 タリバン指導者の殺害が目的で隠密行動。いると想定される村の近くまで行って、様子を伺っているシールズ。ところが村人に見つかって、目撃者を生かすか消すかの選択を兵士は迫られることになる。ここが21世紀の現実で、マーク・ウォールバーグ演じるマーカスら4名の隊員は、逃がすという道を選ぶ。単純に人道的な判断ではなく、軍隊への批判も考慮しているのがいかにも実話。

 

 時は2005年だから「リダクテッド真実の価値」はまだ出てきていないけど、精鋭である彼らは世間知らずじゃない。ジュリアン・アサンジなどはアフガニスタンの戦争を、彼らの戦争と言っているくらい。自分たちが送り込まれている戦場のことは、誰よりも理解している。さらに小隊単位で意志決定がなされるのは、対するのがタリバン兵だからだ。

 

 結果として仲間を危険にさらす決断だが、現場にいない人間が評することは出来ない。むしろ“仕方がないまでも、賢明な判断でした”としか言えないよ。フィクションじゃないから、通信機器なんて役に立たない。連絡だけでも厄介で、支援部隊は経済が足を引っ張ってる。過酷な戦闘シーンも迫真の演技と相まって凄いんだけど、込められている情報量は並じゃない。

 

 そしてなぜマーカスは生き残れたのか?はぜひご覧になってご確認を。ここが動かせない実話だけに、心に染み込んでくる。もしタリバン兵に囚われたら、「ある愛の風景」のように惨いことになる。“敵とはなにか?殺すのも助けるのも人間なのだ”という現実に触れられた、と勝手に解釈。“そんなこと起きっこないさ”は「ビン・ラディンを探せ!」を見ているから否定できる。

 

 マーク・ウォールバーグは製作兼任だから、当然熱演。でも揃いも揃って今後も楽しみな役者で固められている。テイラー・キッチュ、エミール・ハーシュ、ベン・フォスターはそれぞれ「バンバン・クラブ」「イントゥ・ザ・ワイルド」「360」で実力がお分かりになります。そういえばテイラーとエミールは「野蛮なやつら/SAVAGES」で共演していましたな。

 

 監督のピーター・バーグ前作が“マジ?大丈夫?”だったけど、VFXの性能を試していたのかもしれない。まさかアフガニスタンで撮影するわけにはいかないから、気がつかれないように特撮技術も駆使していると思われる(「ハンコック」の人だし)。「大いなる陰謀」に出演経験もあるこの人は、愛国者。冒頭に海兵隊員の訓練を映し出し、その過酷さと彼らを称える部分がその証拠。

 

 現在も進行している戦争を忘れることはたやすいし、大衆の無関心を責めても意味がない。実際に起こったことだし、軍隊の足を経済が引っ張っている様も、通信機器がそれほどアテにできないことも、小隊単位で迫られる判断がとても難しいことも描き出した。しかしあれ(9.11)以来、いつまで経っても泥沼から抜け出せない合衆国に強いメッセージになったのでは?

 

現在(3/29/2014)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  ファントム-開戦前夜-

 

 「追いつめられて」で焦点になったソナーに探知されない潜水艦。似たような時期にソビエトが音のしない潜水艦を開発して米軍真っ青が「レッドオクトーバーを追え」「U・ボート」から“潜水艦映画に外れなし”と勝手に思い込んでいて、本作も合格ラインに達している。

 

 大ざっぱに、強引に関連づけると「ローレライ」「クリムゾン・タイド」の合体技。軍の特務機関が得たいの知れない装置を艦内に持ち込み、核弾頭を搭載しているだけに世界は核戦争に突入か?の緊迫感はまさに醍醐味。 

 

 一度冷酷なソビエト軍スナイパー(「スターリングラード」)を演じていて、エド・ハリスはピタリと役にはまっている。嬉しいのは副艦長のウィリアム・フィクトナーで、マヌケ悪役(「エリジウム」「ローン・レンジャー」)とは真逆、何でもコイなのです。

オススメ★★★☆☆

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