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インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

  インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

 

 観賞後に出口で、2回もぴあの満足度調査が待ち構えていた本日(「THE NEXT GENERATION/パトレイバー第二章」「美しい絵の崩壊」も)。いよいよお楽しみのコーエン兄弟監督作。新宿武蔵野館ならではの満足感が得られましたよ。確かにさ、シネコンは至れり尽せりだけど、覚えている限りの“映画館らしさ”を備えているのはココくらいになった。

 

 冒頭にオスカー・アイザック演じる主人公ルーウィン・デイヴィスは、場末って感じのライヴハウスで歌っている。彼にはフォークソングしかなくて、宿がない。泊めてもらった家のソファで目覚めるも、猫を逃しちゃって部屋には入れず、連れて行くしかない。でも前作から待たされた甲斐あって、今までとは違ったテイストが感じられる。コーエン兄弟の作品で動物を小道具にした作品ってあったかな?とふと思う。

 

 荻上直子は猫の描き方が素晴らしいけど、この兄弟も心得ている。もちろん動物感動作とは誰も思わないでしょう、でもちゃんと猫でなければならない物語の進行になっている。またカラーではあっても、独特の柔らかな光線の中で映えるのがキャリー・マリガンだ。彼女が演じるのは、ルーウィンと腐れ縁関係にあるジーンなんだけど、口汚さがちゃんと彼女のアクセントになっている。

 

 キャリーは「17歳の肖像」の時、大器になる女優と予感させましたけど、「わたしを離さないで」などを経て、「SHAME-シェイム-」より格段に上手い歌を披露。出演作を量産中の歌手業もしているジャスティン・ティンバーレイクは、映画で歌を披露したことないけど、間抜けなケネディ批判ソングを聞かせてくれて笑ってしまった。そしてホントは歌が激ウマのギャレット・ヘドランド(「オン・ザ・ロード」)は、渋い声すら封じて寡黙。

 

 既に時代は移っていて、本作に出演している面々が若者を演じるのは至極当然。ただし、脇役も無駄がなくジョン・グッドマンコーエン兄弟作の常連なれど(「ビッグ・リボウスキ」の彼は絶品)、F・マーレイ・エイブラハムが何とも言えない味わいを残しました。「アマデウス」でサリエリを演じた彼が、ルーウィンの歌を聴いて「金の匂いがしないな」なんてセリフは映画好きがニヤリとしてしまう瞬間。 

 

 コーエン兄弟は結構辛辣なギャグを作品の中に持ち込んできたけど、今回はかなり控えめだった。もちろん前からのファンをがっかりさせない程度にまぶしているけど、ルーウィンに注がれる目線には温かさが感じられる(北野武「アキレスと亀」に近いかな)。音楽映画の主人公はたいてい破滅的な末路が待っているもの、それを柔らかな光線の中、猫を配して可愛らしいくらいの笑いで包む。

 

 レンタル屋の店長をしていたから、ミュージシャン志望の若い人はいっぱい見たし、インディレーベルからCD を出した人もいた。サイン付きで3枚ほど持ってる。実は高校生の時、同級生とベンチャーズを弾いていて、後年彼から“CD を出したから、買ってね”という手紙をもらった。渋谷のHMV で探したら、棚に並んでいたりして。でも、もちろん私が所有している彼らのCDが金になるとは思えない。

   

 かように成功する人は一握りながら、scholaのアフリカ音楽編で塚田健一先生は「音楽家というのは街に音の空間を作り出し、歌わなければ生きていけない人なのだ」と仰っていた。そして21世紀は事情が異なってくるのではないか?案外コーエン兄弟は見越したんじゃ?とも思える昨今。星の数ほどある楽曲の中から、自分に合ったもの探せるし、手に入るし。映画と同じで、労を惜しまなければ得られる宝物って、モノではなく体験かもしれない。私めにとっては、新宿武蔵野館で観た本作が何よりです。

 

現在(5/31/2014)公開中
オススメ★★★★☆

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  オン・ザ・ロード

 

 いちおうアメリカ文学を学んだから、ビート・ジェネレーションと呼ばれる作家たちが存在したことは知っている。村上春樹氏の影響もあったので、ウィリアム・バロウズとかジャック・ケルアックが属しているんだなという認識。でも恥ずかしながら「裸のランチ」すら見ていない。ま、バロウズに関しては「ドラッグストア・カウボーイ」に出演しているぜ、などと知ったふうな口をきいていた。

 

 で、バロウズがモデルになった人物を、ヴィゴ・モーテンセンが演じる豪華共演の本作は文句なしの傑作。ヴィゴは「裸のランチ」の監督作に連続出演しているし(「ヒストリー・オブ・バイオレンス」「イースタン・プロミス」「危険なメソッド」)、何かの縁だと勝手に思い込むこともできる。脇役の豪華さはエイミー・アダムスもそうだし、アリス・ブラガにも驚かされた(前日に「エリジウム」を見てたもんで)。

 

 ケルアックの「路上」はヒッピーのバイブルなのだそうで、主演も申し分のない布陣だ。「コントロール」でその魅力を見せつけたサム・ライリーは、観察者=作家を演じるので狂言回しのハズなんだけど印象深い。10代のメリールウに扮したクリステン・スチュワート「ロストガール」の延長線上に位置するキャラクターで、女優業の方も順調みたいだ。この娘はただのスターでは終わらない、と確信させる芝居で唸った(脱いだからじゃないよ)。

 

 そして物語の主人公は紛れもなくギャレット・ヘドランドでしょう。彼はニール・キャサディをモデルにしたディーンに扮してるんだけど、その無軌道さが結果として「路上」をこの世に誕生させる。彼が出ていることで「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」も楽しみになってきた。歌も上手いしヒーローにもなるしライアン・ゴズリングといい勝負になりそうな色気がある。

 

 インディ系ながら、個性的な俳優たちが出演を熱望したことは間違いない。原作の力もさることながら、この監督なら映像化にふさわしいと判断しそう。なにせ「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレスですからね。彼の情景描写は撮影監督エリック・ゴーティエが支えていて、内容的に近い「イントゥ・ザ・ワイルド」などと甲乙つけがたい。

 

 「それぞれの空に」などが好きなロード・ムービー愛好者には大推薦しちゃうし、酒好きの物書きが主人公のお話(「酔いどれ詩人になるまえに」「ラムダイヤリーズ」)が好物な人にもオススメ。かなり酔っ払って見てても、惚れ込んだ。放浪の人ケルアックが冷静に見つめた合衆国の描写は、重要な資料としても機能する。綿畑の低賃金労働が、第二次世界大戦後になって存在していることなど(「それでも夜は明ける」と変わらないんだね)。

 

 並行して時代背景が近い「ザ・マスター」と一緒にご覧になるのも一興でしょう。若者が主人公なのに、オッサンでも共感してしまうのは時代背景なのか、彼らが大人びているからか(「ソーシャルネットワーク」とは明らかに違う)。無軌道で反抗的ではあっても、不貞腐れていないからなのかな?彼らの前の年代(「モダーンズ」「ミッドナイト・イン・パリ」)と見比べるのも面白い。アメリカ文学勉強している人なら文句なしに×5のオススメ品。
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