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家路

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 3月に公開されていたのは知っていたけど、ズレて観てじっくり考えるには、今日が良かったと勝手に思っている。小田原にあるコロナシネマワールドはGWの混雑そのもので、東京より子供の数が多くて賑やかだ。きっとチビっ子たちはディズニーCGアニメなどが目当てなのかな?今年最初の実写邦画観賞になるこちらは、劇場外の喧騒が嘘みたいに静かだ。

 

 この作品を知ったのはallcinemaのおかげ。たまたまクリックして、企画協力で是枝裕和の名前を見つけて確信した。それは「Beautiful Islands ビューティフル・アイランズ〜気候変動 沈む島の記憶〜」を見逃した悔しさもあるけれど、彼の参加で本作が他の福島を題材にしたモノより、自分に合っているのでは?という気になったからだ。原発に関してCoccoのドキュメンタリーでも触れていたしね。

 

 またキャストも主役が松山ケンイチでその兄役が内野聖陽となっている。「僕達急行 A列車で行こう」で俳優松山ケンイチを認識したわけだけれど、やはり日本映画の牽引役になりそうだ。内野聖陽は「クヒオ大佐」の冒頭部分が印象的で、荻上直子作品の常連になりそうな光石研にしろ、石橋蓮司、田中裕子など、もっと宣伝されても良さそうなのにという気がする。

 

 もちろん福島の原発事故を気にかけている日本人は多いと信じる。でも大げさにしては、地元の人にとって“はた迷惑になる”こともみんなの念頭にある。“知ったところで何ができる”という詰問に抗うのは難しい。でも、それでも知っていなければならない気持ちが強い。それにニュースが伝えることは、もうハナっから相手にしなくなっちゃったし。ここに描かれているのは紛れもなく我が国なのだ。

 

 冒頭からやけに粗い画像なので、不審に思った。しかしこれは監督の戦略であって、予算の都合などではない(と勝手に解釈)。「4分間のピアニスト」「ナイト・トーキョー・デイ」も音を聴かせるために画を粗くしたが、本作は描かれている事実に人々が集中できるようにした結果では?ハイヴィジョンを使って描くと、緑が美しい田舎の風景は放射能という現実を忘れ去らせてしまう。放射能は無味無臭で、害が分かるまで時間を要する。そこにやってきた青年は社会インフラの絶たれた農家で、ロウソクを灯し、せっせと米を炊いて飯を食べる。

 

 エネルギーがなくとも人間は生きていけるのだ、と見せつけているようだ。ただし警戒区域に指定されている土地に人影はない。続いて仮設住宅が描かれる。次郎の家族はそこで暮らしていて、TVの向こうの真実を見せられるとやはりひるむ。もともと広い自然のある空間に生きてきた人々が、あの住宅で長く暮らすには無理がある。収入の面だって当然のように描かれて、「海炭市叙景」と同じくズッシリくる。

 

 本作で次郎がする選択をたぶん自分もする、と現在田舎に住んでいるだけに痛感。彼が東京でしていた仕事(コンビニの惣菜詰め)はやったことがあるし、都市部の低賃金労働に明日はない。ボケの始まった両親を、ユニットバスの住宅に住まわせるわけにはいかない。なお本作の収穫は山中崇という俳優。「希望の国」でも実に印象的な嫌な役回りの町役場職員。彼のセリフを通じて原発処理の実態も知ることになった。

 

 「遺体 明日への十日間」もこたえたが、解のない問いは考え続けなければならない。やはり原子力発電は人類の罪科として刻むことになった。こういう事実を知っていて、それでも推進する人々は確実にいるし、彼らは人々を扇動出来るポジションにいる。だから次郎の選択は勇気ある庶民のものなのだ。それを見逃す警察官だってもちろん。GWながら、立ち止まって考える機会を作ってくれた本作に感謝。

 

現在(5/4/2014)公開中
オススメ★★★★☆ 

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  希望の国

 

 映画監督園子温が“今、描かなければならない題材”と感じているのが伝わってくる問題作。「恋の罪」の視点は原発事故にも適応できるし、彼を支持する観客の動員も期待できる。もちろん直接描いたのでは観客に逃避の心理を生むので、時制をズラして福島第一原子力発電所の事故を捉える構造になっている。ただし「フィラデルフィア」がそうだったように、早い時期に刻んでおかなければ、後の映像資料にはならない。製作は「家路」と共にビターズ・エンドだ。

 

 TVのニュースで散発的に伝えられる事実は扇動の傾向が強くて、自分に無意味なバイアスをかけてしまう。映画は時間をかけて作られるので、あえて描かない方が良いものは省く。では本作で観客は何を見せられるのか、今回の原子力発電所の事故が起こした現象と、人々のとった行動ではないだろうか。あの巨大地震は恐ろしかった、続けて起こった原発事故に冷静さを保ちようがない。結果身動きがとれず、思考停止に陥っていた。

 

 風評被害などというものではなく、強烈なTVによる扇動は洗脳以外の何ものでもなくて新しい差別を、新しい精神の病を生む。村上淳と神楽坂恵演じる夫婦が直面する様々な問題はまさに自分たちがもしや・・・、と想像できるものだ。そして夏八木勲と大谷直子の老夫婦が取る選択に、同じ年齢に達した時に否定できるのか?と自分に問うことになる。皮肉なタイトルだが、あまり効いていない気がするのは、現場の映像によるものだ。あまりに生々しすぎて、客観的にはとても・・・。何年後かにまた見なくては。
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