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わたしは生きていける

  わたしは生きていける

 

 “もう分かったから、必ず行くから”とパソコン画面に訴えたくなるほど、ここ1、2週間本作の広告が映し出されている。怖いよね、一端クリックしたら延々と追いかけられているみたいで。IT の威力は底なしで、参照傾向が把握され、クドいくらいの宣伝戦略。でも上手くいってるのかなぁネット広告。なんでかっていうと、公開初日なのにちょっと物足りない入りなんですよ、有楽町スバル座。

 

 有楽町駅前にあるこの劇場はほとんど天然記念物的に、かつての映画体験ができます。入場券ですから、終映になるまでいられます、何度でも観賞可能です。座席指定ありません、いろんな角度を試すこともできます。とはいっても「善き人」以来だから偉そうなことは言えないか。そういえばリュック・ベッソン「アトランティス」はここだったなぁ、という思い出がある懐かしい空間で、近未来戦争映画を拝む。

 

 「ヨルムンガンド/PERFECT ORDER」のラストでは、第三次世界大戦前夜と称されるほど世界はどん底状態。そんななかで“ヨーロッパはテロの温床”で、ココ・ヘクマティアルが「ビッグベンが折れちゃった」などと言っていた。本作ではまだそれほど深刻な事態にはならず、主人公デイジーは仏頂面で大英帝国に到着。演じるシアーシャ・ローナンは“世界情勢なんかあたし関係ないし〜”風で、いかにもYA小説の登場人物。

 

 「ザ・ホスト/美しき侵略者」とも違うし、「天使の処刑人 バイオレット&デイジー」の可愛らしさはないけど、シアーシャは二十歳にして演技派スターなのかな?キャリアがさ、ニール・ジョーダン(「ビザンチウム」)ともウェス・アンダーソン(「グランド・ブダペスト・ホテル」)とも仕事をしていて、今回はケヴィン・マクドナルドだもんね。強みは可愛らしさで、プロっぽいジェニファー・ローレンスとは好対照。

 

 ジェニファー「ハンガーゲーム」で極限状態を生き抜きますが、本作のシアーシャも“この世の地獄”を体験。いとこに会って夏のひと時を過ごしていると、突然戦闘が勃発。地響きみたいな音がしたと思ったら、空から灰が降ってくる。これは「みえない雲」に近く、彼らも21世紀を生きてるんだから、ひょっとすると“死の灰”かも?と予感した途端に電気が切れる。

 

 あくまで戦争を高いところから眺めるのではなく、我々の隣人が被る事態を想定して描かれているだけに目が離せない。通信が絶たれたら事態を把握するなんて無理だし、だんだん「ザ・ロード」の世界観に近くなっていく。英国が舞台の「トゥモロー・ワールド」もそうでしたけれど、イギリス人が予期している戦争のイメージって、強引な民衆弾圧と逃げ込む森なんでしょうか。

 

 せっかく恋人同士になったエディーと引き離され、末っ子のパイパーと農場で働かされるデイジー。もちろん戦火は全土に広がっているらしく、脱出を余儀なくされ、強制退去されたおばの家に逃げのびなければならない。「オーガストウォーズ」でも見せつけられましたけれど、戦争はいつも突然起こり、情け容赦なく人の命を奪う。合わせて直面するのは飢餓(「火垂るの墓」)。

 

 幼いパイパーを連れて森を進むうちに、だんだんデイジーの顔つきは無表情と芯の強さを合わせたものに変わっていく。YA小説も侮れませんよ、勇ましく鉄砲撃ってる様とか、戦車が大砲ぶっぱなすトコとかほとんど出てこない。もちろん手段を選ばないのが戦争だけに、早い段階で核爆弾が使われ、水も飲めなくしてしまう。そんな中でどうやって生き抜くのか?を監督は冷静に見つめております。

 

 単純にティーンエイジャーの成長物語にするのではなく、我々が被る戦争の実態を21世紀に即して描く手腕はケヴィン・マクドナルドならでは。「敵こそ我が友」撮ってるくらいだから、戦争に関してはかなりの情報量があるでしょう。また「LIFE IN A DAY」を手掛けているだけに、世界中の映像からヒントになるものを得られたんじゃ?劇映画の場合、「消されたヘッドライン」はちょっと消化不良だったからね。

 

 こういった危機的状況を招かないために、専守防衛は当然ながら、集団的自衛権はどうも嫌な予感が拭えない。天災は防げなくとも、人災である戦争を回避できなきゃ。でも無関心はホントに後々アダになって返ってきそう。楽観的な大人はこの際仕方ないから、子供だけでもいいから伝えたかったのが作り手の心意気でしょう。簡単に「戦争の現実を分かっていない」と言ってフタをすることもできるけどさ。

 

現在(8/30/2014)公開中
オススメ★★★★☆

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  運命を分けたザイル

 

 ケヴィン・マクドナルドの代表作として認識していて、貸し出し状況(レンタル屋だったからね)も良かった記憶がある。登山愛好家だけでは、なかなか得られない広い支持は何故か?恐らくTVのドキュメンタリー番組に似た作りだったことが、その一因かもしれない、と遅ればせながら見て感じる。ただし違うのは映画だけに、じっくりと腰を据えて取り組んでいるし、描かれるアンデス山脈は絶品。

 

 山岳アクションでは恐怖を倍加する装置として機能するので、景色は楽しめない。「クリフハンガー」「バーティカル・リミット」も見ていて“いい景色だなぁ”などとは思わない。でも演出を可能な限り排して、登山家を追っていけば人跡未踏の絶壁は雄々しく映る。もちろんソレに魅せられて命をかけるのが彼らなんだから。本人たちがインタビューに答えているということは、生還した証拠でその点は安心していられる。

 

 ただ高いところがとにかく苦手な私めには“登っちゃダメ”と肝に命じる作品。ま、酸素も薄いし、あんなところは麓にすら近づけないけど、登山の勉強にはなります。“登る時より、降りる時の方が遭難の危険がある”とか、道具の使い途とか。それだけでなくやはり自然の無情さと美しさを噛み締めるには登るしかなくて、そこに地上の理屈はなんら通用しない。
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