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デビルズ・ノット

  デビルズ・ノット

 

 「6才のボクが、大人になるまで。」でリチャード・リンクレイターがお気に入り登録になった後は、アトム・エゴヤンの発見が遅きに失したことを確認させてくれる本作。というのは最近は上映前に“関連作を漁る”習性が身についたので、allcinemaを眺めて記憶を頼りに“過去作品の再見”を繰り返していた。で、「スウィートヒアアフター」が妥当かな?と思ったけどレンタルないのだ。

 

 公開当初は話題になったけど、1997年の作品でも観賞不可のものが存在する。同じ1960年生まれのリチャード作品は殆ど可能なのに妙なものです。先端映像ドキュメンタリー「サイドバイサイド」に顔を出すリチャードと、ビデオ時代を完全網羅した「VHSテープを巻き戻せ!」で語っていたアトム。同時代を生きてきても・・・、ですから一つでも多くの作品を載せるこのサイトを継続してるんだけど。

 

 現時点で「クロエ」しかこの監督の作品を見てないので、実力は不明。でもこの題材に挑むのは時代に敏感な証拠。ピーター・ジャクソンもドキュメンタリーを手掛けている事件“ウエスト・メンフィス3”。知らないではなく、TVのニュースとは記憶にとどまらない作用があるのだろう。ただこの事件が示しているのは、冤罪という事のみに限定されるものではない。

 

 “年端もいかない子供を殺す”は許しがたい行為だし(「ラブリー・ボーン」)、だから米軍によるシリア空爆も同罪だと本気で思っている(イスラム国だけを殺せるワケない)。子供たちの可能性を奪う権利は大人の側にはない。ただ「ニンフォマニアック Vol.2」によると、幼児に執着を抱く変質者の多くは、実行には至らないんだそう。潜在的な人間が多いのは、グラビアアイドルのカタログを見れば一目瞭然ですけれど。

 

 で、勝手な解釈ですが、本作のテーマは“悪魔は個人ではなく、その他大勢にとり憑く”では?タイトルのノットは副詞のnotかと思ったら、名詞のknot。意味を調べると結び目、群れ、集団などとなっている。結び目は殺害された子供ちたを縛っていた靴ヒモを意味しますが、もう一つの方も込められている。適当に見つけてきた容疑者を、仕立て上げる人々こそ悪魔の集団にほかならない。

 

 本作には脚本でスコット・デリクソンが参加していますけれど、「NY心霊捜査官」と並行観賞してはいかがでしょう。対をなしているというか、悪魔がとり憑くのは個人と考えがちだけれど、そうとは限らない。「うる星やつら2」で亀を助けたのが浦島太郎ではなく、村人全員だったら?と提起される問いがふと思い起こされる。魔女狩りしてる方が、よっぽど悪魔の形相。

 

 立ち向かうのではなく、コツコツ調べて回る弁護士の下働きの男がコリン・ファース。ほとんどの映画で変身した印象がないけどヒゲ生やしただけで主人公ロン・ラックスになりきった。「レイルウェイ/運命の旅路」も良かったけど、英国王のイメージは定着しなかったね。「ウォーク・ザ・ライン」が良かったリース・ウィザースプーンも、控えめで「キューティーブロンド」は遠い昔。

 

 主要人物が張り切ると、大衆告発の別な映画になるから、映画は起承転結の結を残してスパッと終わってしまう。4分の3で成立してても不満を感じないのは、考えさせる要素とヒントをたっぷり残していることによる。だってさ、ミレイユ・イーノス(「サボタージュ」)とデイン・デハーン(「クロニクル」)が意味なく出てくるわけないもん。明らかに彼らが演じた人物が・・・。

 

 「それでもボクはやってない」など冤罪を描いたもの、裁判のいい加減さを描いたものは多々あれど、その他大勢を非難しないで、観客に考えさせる構造を選択した本作は成功している。日本には「終の信託」の周防正行がいるから大丈夫だけど、アトム・エゴヤンの「スウィートヒアアフター」のレンタルリリースしてくれないかな。映画は遅ればせながら事象を知る手掛かりになる。

 

現在(11/15/2014)公開中
オススメ★★★★☆

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  レイルウェイ 運命の旅路

 

 戦争の悲劇は風化させてはならない、ではなく忘れると飢餓に直面するよと「火垂るの墓」は教えてくれますが、ずーっと考え続けるのは、いい加減な生き物=人類だけに難しい。間隔をあけて、注意を促してくれる作品の登場は得難い宝です。「終戦のエンペラー」は昨年でしたけれど、ちゃんと観客は入っている。TVを見ると忘れることは、映画で再確認するのが一番。

 

 学生時代ゼミの先生が、英国鉄道史についての本をくれましたが、かの国発祥はサッカーだけではない。本作には戦争も描かれますが、鉄道の描写が辛い現実を軽減している。鉄道の撮れる監督は一流の証拠に、ジョナサン・テプリツキーもなかなか魅せてくれます。「ツーリスト」「君と歩く世界」「トゥ・ザ・ワンダー」など欧州の列車が我が国の山手線とは違って、旅情を感じさせてくれる。

 

 列車の旅が男女を結びつける、これには説得力があって「恋人までの距離」などがオススメ。コリン・ファース演じるエリックは鉄道愛好家らしく、細かいこと。ニコール・キッドマンも年齢に応じた美貌がたまらない。中年だけに、冒頭の部分は微笑ましい。ところが物語が動き出すと、襟を正すことになる。エリックには第二次世界大戦中タイで捕虜になった過去があり、悪夢から逃れられない。

 

 実話ですから、茶々を入れたりできないでしょう。戦争当事者が起こったことを語るのは、他人からは想像もできない苦痛。ですからこの人には“後の糧を残してくれた”ことに感謝です。日本には「戦場のメリークリスマス」以来見かけませんねぇ。「永遠の僕たち」のようなアプローチなら、我が国でも出来そうなんだけど。「ゼロ・ダークサーティ」に出てくる拷問はこの当時からあったのだ。

 

 真田広之はもう一方の当事者=永瀬で、“悲劇を風化させない”ために観光客に伝えている。「悲劇ではなく、犯罪だろう」と再会したエリックは永瀬に詰め寄る。更に「我々ではなく、私だろう」という詰問は日本人に向けられていると思い、考えさせられます。ちょっと「レクイエム」も近いんですけれど、“憎しみの連鎖”に対する“救われる出口”を見出さないと、前に進めない。

 

 このエリック氏には献身的な奥さんパトリシアがいたから、残りの人生を人として全うできた。しかしステラン・スカルスガルドが演じたフィンレイ氏の方が、遥かに多くの人を代弁している。戦争は人殺しだし、無法の状態を生み出すんだから犯罪が犯罪ではなくなる。我々がではなく、私はそれにどれだけ加担したか、加担することになるのか・・・。環境より答えはハッキリしていて、忘れない力が必要。
オススメ★★★★☆

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