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6才のボクが、大人になるまで。

6才のボクが、大人になるまで。  6才のボクが、大人になるまで。

 

  私めにとって、もうじき「ゴーン・ガール」が公開されるデヴィッド・フィンチャー「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」が素晴らしかったコーエン兄弟「サイドエフェクト」で劇場映画に足を洗った?スティーヴン・ソダーバーグ、今年「THE NEXT GENERATION/パトレイバー」を延々と観ている押井守は“腐れ縁”の監督。で、北野武是枝裕和荻上直子などは最優先。

 

 今まで観てはきたけれど、決定的な1本がなかったリチャード・リンクレイター。確かに「バーニー/みんなが愛した殺人者」もビフォアの3作(日の出日の入り真夜中)も新しい趣向で楽しませてくれたし、“人間ドラマは過不足ない”人だった。ただケヴィン・スミスの「世界で一番パパが好き」みたいにベタじゃなかったんだよね。しかし本作の出演者への思い入れは、リミッターを解除している。

 

 もともと映画製作は忍耐が求められる作業だし、時間がかかる。ポストプロダクションが控えているから、撮影はなるだけ正確に短期間で仕上げなければならない。子供の成長もしかりで、放っとくとどんどん大人になってしまうのはハリー・ポッターがそうだし、トワイライトシリーズが証明している。よって「ラストエンペラー」など子役が3人必要だったし、「わたしを離さないで」なんてソックリだった。

 

 そんな当たり前のことを逆手に取って、見事に成功していたリチャード。長期間じっくり題材に臨んだのは「トラブゾン狂騒曲」も良かったが、近い作品としてマイケル・ウィンターボトムの「いとしきエブリデイ」がある。マイケルの方は子供を時間軸を示す記号として使っているのに対して、リチャードは少年メイソンに成長とその間の合衆国を“見つめ続けた者”という役割を与えている。

 

 時代記号は21世紀の子供だけにゲーム機で、ゲームボーイやらXBOXやらが映し出される。当然現在が近づけば、IT機器、SNSなども自然に作中に登場する。また荒廃しているかの国を、少年の目線で浮き彫りにしているのが持ち味。批判的に描かないだけに観客に迫ってくる。アルコール中毒の継父が2人も出てくるし、母親は大学で資格を取って、自分の生き様を貫いたりして、パトリシア・アークェットが熱演。

 

 でも少年の成長を親目線で追ってるから、時に微笑ましかったり、すまないなぁという気持ちが起こったり、作品に入り込んでしまう。女性はまた別の角度になるでしょう。メイソン役のエラー・コルトレーン、この人がいなくては成立しなくて作品を背負っている。12年間どうなるかを予想していたのか、彼の中にリチャードが予想を覆す何かを見出したのか?

 

 ちびっ子の頃はスカーレット・ヨハンソンを思い出させるので、美形なんでしょう。成長すると「ジャンパー」のヘイデン・クリステンセンに似てくる。優等生ではないし、活発とは言えないけれど、部屋に引きこもっているタイプでもない。この平均的なアメリカの子供像は、多くの観客にアピールする。また見ている大人は、自分の息子が重なったりして、やはり目が離せない。

 

 イーサン・ホークもついに子供の卒業パーティを祝う側になり、自然に描かれているだけに、父と息子のやり取りの中に凝縮された情報が込められている。パトリシア(「ロストハイウェイ」をぜひ)は太っちゃって大丈夫?と心配になるけど、彼女に求められたのは観客が“嘘臭さ”を感じない姿だし、所作だし。また監督の娘、ローレライ・リンクレイターも素晴らしいくらいの自然さ。

 

 大学行くようになればもう立派な大人で、独り立ちしたメイソンの人生がこれから始まる。恐らく以後を描いても面白いだろうし、これで幕となってもエポックだろう。確かに子育てには苦労がつきものだが、全てひっくるめてその経験を持たずに生きてきた者にとっては得難い体験だった。リチャード・リンクレイターの作品で最も心にグッときたし、今後は彼の作品から目が離せなくなった。

 

現在(11/15/2014)公開中
オススメ★★★★☆

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関連作

  いとしきエブリデイ

 

 「ウェルカム・トゥ・サラエボ」で好きになった、マイケル・ウィンターボトム監督。「トリシュナ」がレンタル屋ストレートだったし、観たかったけどけっきょく見逃した試験的作品。監督が試したというか、やらかしたのは"映画の中の美談を破壊"だったかもしれない。冒頭は予告通り子供の可愛らしさ、それも自然で泣きそうになる。仕事して疲れて帰ってきた時に、子供がいるっていいんだなぁなんて。

 

 ところが刑務所の父親が実は本作のメインテーマで、収監されている男の家族の物語。この題材を劇映画にする場合、最後に感動の場面が用意されているのが定石(「イエローハンカチーフ」)。ところがマイケル・ウィンターボトムはちょっと違ったアプローチ。彼は以前から、その種の嘘臭さを払拭しようとしてきた。ドキュメンタリーの効果を利用して、生々しい現実が観客に示される。

 

 「6才のボクが、大人になるまで。」にグッときて、こちらを厳しく感じるのは子供の成長が時間軸として利用されている印象があったからか。でもマイケル・ナイマンの参加が救いで、彼の楽曲が「ひかりのまち」のような効果で重苦しさを払拭。“美談を破壊して、感動させる”効果に一役買っている。「エリックを探して」のケン・ローチだったらどんな感じになっていたか。
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