ブルージャスミン
「プリズナーズ」が13:10に終わって、本作開始時間も同時刻。余韻を次の劇場に引きずって、ボケっとスクリーンを眺めている。そりゃあそうです、ウディ・アレン作品の観賞姿勢はなにより、ボサっと観ていながら時折「ないない」と突っ込みながら楽しむに限る。「ローマでアモーレ」なんかもそんな感じで座っていられた。上映時間もスッキリ、中味はアッサリは昨今大切です。
ストーリー・ラインを読んでいると、ちょっと年上の「ヤング≒アダルト」のようだ。そう言えばシャーリーズ・セロンはウディ・アレン作品「スコルピオンの恋まじない」に出てたね。で、前々作辺りからこの人の魅力が分かりかけてきて、ケイト・ブランシェットが主演でしょ、ニヤニヤします。「ローマでアモーレ」でもエレン・ペイジはお任せされているみたいに映ったし、ケイトが何をしてくれるのか?
もう全編ダメ女の転落する様を、ゲラゲラ笑いながら眺めつつ、案外自分にも当てはまるかも?の部分もある。冒頭に飛行機で隣り合わせた婦人に、延々と自分のコトしか話さないジャスミン。彼女のはた迷惑さは人事じゃないです、自分もやってるかもしれないと冷や汗。でも彼女には誰もいない所でブツブツと喋るビョーキもあって、そこは違うから距離が保てる。妄想癖のウォルター・ミティよりジャスミンは重症。
あの完璧な口元が歪んだりして、心配になるくらいやりまくっている。元亭主が経済吸血鬼で、もう延々と泥棒とか、人でなしだったよなぁなどと呼ばれるアレック・ホールドウィン扮するハル。あの「レッドオクトーバーを追え!」の人も前作に引き続き、「ロック・オブ・エイジス」などを経て随分と変わってきましたな。笑いを交えているけど、ウディ・アレンは株屋に容赦がないですな。
今更ですけれど、ウディ・アレン作品では出演者がのびのびしているし、実力を見せつける。落ちていく女ジャスミンが、頼りにする妹ジンジャーを演じるサリー・ホーキンスは美味しい部分をいただき。元亭主に「フォード・フェアレーンの冒険」からずいぶん老けたアンドリュー・ダイス・クレイには驚かされた。そして「WINWIN」の彼が好きなもんで、ボビー・カナヴェイルです、さすがと思ったのは。
ピーター・サースガードなどは止めの部分でごくまっとうに登場、「17歳の肖像」のいやらしさが全くない。「素敵な相棒 〜フランクじいさんとロボットヘルパー〜」では、声のみの出演だけにこの人もよかった。ただ全員が完璧なくらいに脇で、センターの位置にいるケイトは監督から「ケイト、やっちゃっていいよ」とお任せされたに違いない。
スタイルは相変わらずのウディ・アレン、デジタル撮影には手をつけずフィルム撮影でしょう、独特の色合いです。「LIFE!」のベン・スティラーが「やっぱフィルムだよ」と主張しているのとは次元が違う。巨匠は次にジョン・タトゥーロ監督作(「ジゴロ・イン・ニューヨーク」)に出演するから楽しみなんだよね。やっとこの人の魅力に気づき始めたから、どんどん撮っていってほしい、長生きしてくださいね。
現在(5/17/2014)公開中
オススメ★★★★☆
関連作
合衆国の愛国者ロン・ハワードによる本格的な西部劇。トム・クルーズが主演した「遥かなる大地へ」は銃撃戦とかがないから、あまりウェスタンという印象がない。タブーに触れているワケではないけれど、タブー視したがる人たちの好餌とも言える作品で唸ってしまいました。クリント・イーストウッドの「ペイルライダー」に近いと西部劇をまるで知らない者はすぐ関連づけたりして。
好き勝手に生きてきた男が、久しぶりに娘と再会して、インディアンにさらわれた孫娘を救い出そうというのが物語。「ジャンゴ 繋がれざる者」も「トゥルー・グリット」も、追跡劇はあのジャンルの定番ですね。もちろん本作はロンの裏稼業ではありませんから、正攻法で描かれて自然も美しく、馬の疾走もシャープに捉えられている。「ハンテッド」もだけど、トミー・リー・ジョーンズって森に溶け込む。
もちろん主役のケイト・ブランシェットは、ホントに守備範囲の広い女優。女王陛下とかエルフの王妃にも変身しますが、19世紀のニューメキシコで、治療師として生きるたくましい女性にも無理がない。単純にインディアンの蛮行に焦点は当てられておらず、むしろ混沌とした時期の合衆国をロンは描きたかったのでは。ただアメリカ人には敬遠されそうだね。
オススメ★★★★☆